- チリにあるアルマ望遠鏡が、124億光年離れた渦巻構造を持つ銀河を捉えた。
- この銀河は、観測史上最古とされていた渦巻銀河よりも、さらに10億年も古いことが明らかとなった。
- 今回の発見は、天の川銀河のような渦巻銀河がビッグバンの後にどのように形成されたかを知る手がかりとなる。
これまで観測された中で最も古い、124億年前に形成された渦巻構造を持つ銀河の姿が捉えられた。
正式名称を「BRI 1335-0417」というこの銀河は、チリにあるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA:アルマ望遠鏡)で撮影された。このことは、ビッグバンから14億年後には渦巻構造のある銀河が形成されていたことを示している。この画像は、査読論文を掲載する学術誌「Science」に5月20日付けで掲載されたBRI 1335-0417に関する研究の一環として撮影された。
欧州宇宙機関(ESA)の広報責任者で、遠方銀河の研究者であるカイ・ノエスケ(Kai Noeske)博士は、「銀河が今のような形になり始めたと我々が考えていた時期が、およそ10億年、遡ることになった」とInsiderに語った。
渦巻銀河は、成熟した銀河だ。
宇宙の構造が形成される初期段階では、暗黒物質が高温のガスを集め、それが小さな塊となって星を形成する。それらが合体していびつな形をしたいくつもの銀河となり、その銀河がさらに集まって、次第に回転を始め、円盤のような形になってゆくと、ノエスケ博士は述べている。
以下のコンピュータシミュレーションは、その様子を表している。
渦巻銀河は、円盤がかき乱されることによって形成されるとノエスケ博士は言う。
「渦巻銀河は美しいというのはもちろんだが、その腕(渦状腕)の中でガスが圧縮されているという点が非常に興味深い。これが、新たな星の形成の触媒となっている。宇宙のどこでも恒星や惑星ができるというわけではない。銀河がなければ、我々人間は存在していない。これは我々の物語の一部なのだ」
これまで、銀河の形成はビッグバンから約33億年後にピークを迎え、その際に多くの星が生まれたと考えられてきた。
「BRI 1335-0417が、銀河形成の活発な時期よりもずっと前に、地球の近くにある銀河と同じような構造(バルジ、円盤、渦巻きなどのコンパクトな構造)をすでに持っていたことがわかったのは驚きだった」と、総合研究大学院大学の大学院生で、論文の筆頭筆者である津久井崇史は、Insiderにメールで語っている。
BRI 1335-0417以前に観測された中で最も古い渦巻銀河は、2019年にALMA望遠鏡によって発見された。これはビッグバンから25億年後に形成されたもので、BRI 1335-0417はそれよりも約10億年早く形成されていたことになる。
「今回の研究結果は、銀河がいつ、どのように形成され、天の川銀河などの成熟した銀河へどのように進化するのかについての認識を新たにするものだ」と津久井は述べている。
この銀河は、渦巻構造を持つ銀河としては観測史上最も古いが、観測された最古の銀河ではない。最も古い銀河は2020年12月に発見された「GNz11」だ。ビッグバンから4億年後、今から134億年前に形成された。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)