アメリカのジャネット・イエレン財務長官。
Andrew Harnik/AP
- 新しい調査によると、時価総額上位50社が2020年に支払った税金は、実効税率の中央値で17.4%だった。
- これは、1990年の実効税率35.5%の半分以下となっている。
- 現在、世界の巨大企業上位50社は、世界のGDPの30%近くを占めている。
世界の大企業は、その他の企業ほどパンデミックの影響を受けていない。
ブルームバーグ(Bloomberg)が発表した新しい調査結果によると、世界の大企業50社の価値は、2020年だけで4.5兆ドル(約500兆円)も増加しており、これは歴史的な低税率のおかげでもある。
時価総額上位50社が2020年に支払う実効税率の中央値はわずか17.4%で、1990年の半分以下となっている。それに加えて、利益率は同じ期間に6.9%から18.2%へと急上昇している。
世界の大企業は過去数十年と比較すると、納税額が減少して利益が拡大し、その結果、世界経済においてかつてないほどの地位を築いているということだ。
実際、2020年には、時価総額上位50社が世界の国内総生産(GDP)の30%近くを占めている。ちなみに2010年は10%強、1990年には5%以下だった。
アメリカのジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官は4月、「法人税率は30年間、下がり続けている」と述べ、「多国籍企業への課税において、より公平な競争条件を整える」ことを求めた。
アメリカ財務省は、大規模な多国籍企業が、低税率の国や地域に利益を移して脱税するのを防ぐために、世界の最低税率を15%にすることを推進している。
イエレン長官は、「15%という数字は最低限のもので、引き続き議論を続け、そのレートを引き上げて行くべきだ」とも述べた。
その上で、バイデン米大統領は、ドナルド・トランプ前大統領の2017年の税制法案で35%から切り下げられたアメリカの法人税率を28%に引き上げるという提案を行った。
「私が提案しているのは、28%という中庸の数字だ。28%は、それでもまだ第二次世界大戦から2017年までの間のどの時代よりも低い税率だ」とバイデン大統領は語った。そして「15年間で1兆ドル以上の税収を生み出すことになるだろう」と付け加えた。
大企業の実効税率が歴史的にみて最低レベルにあるにもかかわらず、増税はアメリカのビジネスに悪影響を与えるという意見が多い。
米大手企業のCEOによるロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル(The Business Roundtable)」が4月に発表した調査によると、98%のCEOがバイデン大統領の法人税増税がアメリカ企業の 「競争力」を損なうと考えている。CEOたちは、全米製造業協会(The National Association of Manufacturers)が発表した、バイデン氏の新税制法案によって今後2年間で100万人近くの雇用が失われる可能性があるという調査結果などを引用している。
CEOたちが増税に抵抗する一方で、モーニング・コンサルト(Morning Consult)とポリティコ(Politico) による新しい世論調査では、ほとんどのアメリカ人が増税に賛成していることがわかった。世論調査では、65%の有権者が、バイデン大統領がインフラ投資のために企業に課した増税を支持すると答えている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)