「最終面接は日本で」と言われ断念…。コロナに翻弄される日本人留学生の就活

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コロナ禍で、特に日本人留学生は例年とは違う就活を強いられている(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

コロナ禍で例年とは違う就活を迫られているのは、日本国内の大学に通う大学生だけではない。

海外の大学に通う日本人留学生は、コロナの影響で出入国が制限される厳しい状況に置かれながら、就活に臨んでいる。

日本人留学生の就活は、これまで留学先の現地で合同企業説明会などに参加するのが一般的だった。

しかし、オンライン就活の普及により、海外にいてもオンラインで日本の大学生と同じように就活ができる環境が整った。

一方で、留学先からオンライン就活をした学生からは、「最終面接は日本にきてくださいと言われ、あきらめざるを得なかった」という声も。

コロナ禍における留学生の就活の今を取材した。

アメリカから「オンライン就活」可能に

「オンライン就活になって、アメリカにいながら日本の学生と同じように就活ができるようになりました。問題は時差だけですね」

現在、ニューヨーク州内の大学で環境学を学ぶYさん(23歳、男性)はそう話す。

Yさんは2021年8月に卒業予定。2022年4月から日本の企業への就活を目指し、現在、就職活動の真っただ中だ。

「アメリカの留学生の就活は、これまでは日本人留学生を対象にした就活イベント・ボストンキャリアフォーラムに出席するのがセオリーでした。全米から留学生が飛行機やバスでボストンに集まり、数日間、企業を見たり面接を受けたりします。それがオンライン化されて移動の負担が減っただけでなく、オンラインで多くの企業を受けられるようになりました

ただ、日本とニューヨークの時差は13時間。現地時間の夜10時からの面接は普通で、時には深夜2時、3時からの面接もある。深夜の面接を終えてから就寝し、昼から夜にかけてオンライン講義や勉強の時間に充てている。

「面接のとき日本は日中なのですが、こちらが『こんばんは』とあいさつすると驚かれます。そこから会話が始まるのがお決まりの流れですね」

留学先でもオンライン授業

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アメリカの大学でマスクを着け休憩する学生(写真はイメージです)。

REUTERS/Kevin Lamarque

Yさんの大学の外国人留学生は、中国、ベトナムなどアジアの学生が多かったが、コロナ後にほとんどが母国に帰国。母国からオンラインで授業を受けているという。

Yさんはアメリカ残っているが、現地にいながらも、講義はほとんどオンラインで受けている。

「キャンパスには事務手続きの書類を提出する時だけ。たまに気分転換に大学のレストランに行く程度。アメリカ人の学生もほとんどはオンラインで授業に参加しています」

家から出ないことも少なくないが、Yさんは「さみしくはない」という。

「大学が主催するイベントなどもあるので現地の生活を楽しんでいます。あとはオンラインゲームが趣味なので」

Yさんは日本の大手メーカーや、商社などを中心に企業に志望しており就活は佳境を迎えている。

「就活で睡眠時間が短くなってしまっていいますが、面接はうまくいっているのでこのまま乗り切りたいです」

なぜ? 台湾に留学中なのに「最終面接は日本で」

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台湾の大学に留学中の日本人留学生は「就活の情報がなく苦労した」と振り返る(写真はイメージです)。

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コロナによる出入国の制限で、苦境に立たされる日本人留学生もいる。

Hさん(23歳、女性)は高校卒業後の2016年9月、台湾の大学に入学した。コロナの影響などで一時帰国したものの、2020年9月に台湾に渡りオンライン就活を本格化させた。

「エントリーシートは70社以上出して、オンライン面接は100回以上受けました。日本人留学生が少ない大学だったので就活の情報がなく、とにかく説明会に出まくっていました

就活に苦戦したというHさんだが、最終面接まで進んだデベロッパーから、信じられない言葉をかけられた。

『最終面接は日本に来てください』と言われました。日本に行けば隔離期間もあり、また台湾に帰る時も隔離されます。海外にいると知っているはずなのに、なんで最後までオンラインにしてくれないのだろうと思いました。その企業とは縁がなかったとあきらめるしかありませんでした

Hさんはその後、日本の大手メーカーから内々定を得て、無事に就活を終えた。

日本に帰国しオンライン授業「就活の予定が立たない」

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閑散とした成田空港国際線到着田エリア。2020年11月撮影。

REUTERS/Issei Kato

2023年4月の入社を目指している留学生も、就活に不安を抱えている。

イギリスの大学に2018年9月に入学したMさん(22歳、女性)は、2020年3月に日本に帰国してからは、日本からオンラインで大学の授業を受けている。

2020年3月に『帰国してください』と急に大学からメールが届いたんです。イギリスの大学はイースターの前の休みの最中で、『寮にこもってテスト勉強をしよう』と食料を大量に買ったばかりでした。

2月、イギリスでもコロナの感染が広がっていたものの、大学は続ける姿勢だったので、正直裏切られた気持ちもあります」

日本の大学3年生は夏から、就活の前哨(ぜんしょう)戦としてインターンに参加する学生も多い。Mさんも日本の学生と一緒に就職活動をしたいという思いもあるが、「イギリスに戻れる可能性もあり、それを考えると日本での就活の予定が立たない」と話す。

日本企業のインターンに合格しても、イギリスに戻れた場合、参加できない可能性も出てくる。先のことを考えてると就活がしづらい状況です。

日本でオンライン授業を受ける生活が1年半になるので、イギリスにいた頃の感覚がなくなってきました。できることなら、イギリスに戻れるなら戻りたい」

企業側は、日本人留学生の採用強化も

一方で、日本人留学生に対する、企業側の採用意欲は高いという。エン・ジャパンの新卒学生向けスカウトサービス「iroots(アイルーツ)」で、日本人留学生と企業のマッチング事業を担当する石下卓憲氏は、次のように説明する。

日本人留学生が日本企業での就職を目指す場合、地理的・時差的な条件で、日本の大学生に比べ苦労することが多かった。それが、コロナによって現地で学べない留学生も増え、環境面でも就活面でも厳しい状況に置かれている。irootsを利用している日本人留学生のうち、約8割が日本に帰国し、オンラインで講義を受けているのが現状です。

一方で、特に海外を相手にする大手企業では、留学生の採用を強化している企業も増えている」

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