オックスフォードに開業予定の充電スーパーハブ。
ファースネッド提供
イーロン・マスク率いるテスラは、一度に26台もの電気自動車(EV)を充電できる大規模な充電ハブをヨーロッパに構築するプロジェクトに参画している。
テスラなど4企業は、英オックスフォードにいわゆる「エネルギー・スーパーハブ」を2021年末にも開業する予定だ。オランダの太陽光・風力発電企業Fastned(ファースネッド)と組み、10メガワット(MW)の再生可能エネルギーを発電するという。
この投資により、イギリスのテスラの充電ネットワークはさらに拡充することになる。ザップマップ(ZapMap)によると、テスラはイギリス国内の急速充電ネットワークの約15.7%を占める。
これまでテスラは、イギリス国内695カ所に自社の「スーパーチャージャー」を設置。イギリスではEVの普及が急速に進んでおり、2020年は新車販売台数の6.6%がEVだった。
オックスフォードに設置される充電ハブは、14カ所の急速充電スポットから構成される予定。これに加え、テスラのスーパーチャージャーも12台設置される見込みだ。同プロジェクトを主導するのはピボットパワー(Pivot Power)。エネルギー大手EDFの再生エネルギー部門の一部で、イギリスでスーパーハブ構築事業を展開する。今後イギリス国内に充電ステーションを40カ所設置する計画だ。
当初、このハブでは最大300kWで10台まで同時充電可能となる見込み。20分で300マイル(約274km)分の充電ができることになる。
ファースネッドのミキエル・ラングザール(Michiel Langezaal)CEOは、急速充電が普及すれば安心してEVを利用できるようになると言う。
「今後何百もの充電拠点が必要です。そこで当社では、地主やピボットパワーのようなパートナーとの協力を、イギリス全土で進めていきます。指数的に増えるEVを充電するには、大規模ステーションしかありません」
アムステルダムに本社を置くファースネッドは、これまで114カ所の充電ステーションをオランダ、ドイツ、イギリスを中心とするヨーロッパ域内に設置してきた。
ファースネッドは、オックスフォードのハブでは屋根の上にソーラーパネルを搭載し、充電用の電力を供給する予定だ。また、風力発電で得た電気を送電し、充電ステーションの能力を目標の10MWに近づけていくことにしている。
この充電ハブプロジェクトには、テスラのスーパーチャージャーが使われる見込み。
ファースネッド提供
テスラのイーロン・マスクCEOは、最近イギリスに関心を示している。テレグラフ紙によると、マスクは5月に2日間イギリスを訪問しており、テスラが同国に次の巨大電池生産拠点を構えるのではないかとの憶測を呼んでいる。
イギリス投資局(Office for Investment)も、バッテリーやコンポーネントを生産するテスラの巨大拠点を誘致するのにふさわしい場所を、急ぎ募集していると報道されている。
Insiderが取材を申し込んだところ、投資局は「現在進行中のプロジェクト」についてはコメントしないとのことだった。
テスラにも、イギリスでギガファクトリーを作る計画についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。
テスラは現在、全世界で4つのギガファクトリーを運用している(カリフォルニア州フリーモント、ネバダ州、ニューヨーク州、上海)。さらに2021年7月にもベルリンに最新のギガファクトリーが開業予定だが、こちらは組合と揉めている上に、認可の問題、さらには水の供給停止まで発生し、建設作業に遅れが生じている。
またマスクは5月21日、ロシアに新工場を建設する用意があると発言。テスラは近いうちにロシアでのプレゼンスを確立すると述べた。
(翻訳・カイザー真紀子、編集・常盤亜由子)