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- 映画『ワイルド・スピード』最新作は、中国での公開初週の興行収入が1億3500万ドルに上った。
- これは、パンデミック中に国内作品の上映が多かった中国でのハリウッド映画への期待を示している。
- 中国の映画市場は、アメリカを抜いて世界一の規模になっている。
『ワイルド・スピード』シリーズは、長年にわたり世界的なヒットになっている。そしてその最新作が、パンデミックから回復してきた中国で好調なスタートを切った。
最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク(原題:Fast and Furious 9)』は、公開後初の週末(5月22日、23日)の世界興行収入が1億6200万ドルに達し、そのうち1億3500万ドルが中国での収入だった。これは、2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム(Avengers: Endgame)』が中国で公開初週に1億ドルを上回って以来のことだ。『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は公開が1年以上延期され、アメリカでは6月25日に封切りとなる。
シリーズの前2作『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)と『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017年)は、合計の世界興行収入が10億ドル、中国では3億9000万ドルだった。
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の好調なスタートは、近年ハリウッド映画の世界興行収入で大きく依存しているがパンデミック中は国内作品が主流だった中国で、ハリウッドの大作映画が依然として好成績を収めることができるという安心感をもたらしている。
中国市場はパンデミックによってアメリカを上回るようになってきており、さらに大きな影響力を持つ可能性がある。
中国がアメリカの興行収入を上回った
中国の映画業界は、パンデミックで多数の映画館が何カ月も閉鎖した後、驚くべき回復を見せ、ハリウッド映画の『ソウルフル・ワールド(Soul)』や『ワンダーウーマン 1984(Wonder Woman 1984)』は振るわなかったが、中国映画は大成功を収めた。
調査会社のコムスコア(Comscore)によると、2020年の興行収入における国内映画の割合は、2018年の60%から85%に増加した。2020年4月1日から2021年3月29日までの期間では、興行収入トップ10すべてが国内作品だ。
BoxOfficeGuru.comの編集者、ギテッシュ・パンディア(Gitesh Pandya)は2021年4月、ハリウッドは多くの大作を延期しているが、優れた映画は現在もヒットする可能性があると指摘した。「ハリウッドには、中国が重要な市場であり続けてほしいという願望が確かにある」と、 パンディアは当時、Insiderに語っている。その後、『ゴジラvsコング(Godzilla vs. Kong)』(興行収入1億8300万ドル)と、今回の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』がそのような懸念を払拭した。
アメリカ市場が復活する兆候はいくらか見られる(『ゴジラvsコング』のアメリカ国内の興行収入は1億ドルに迫っている)が、中国がアメリカを上回る世界最大の映画市場であることに違いはない。
調査会社のAmpere Analysisはパンデミック前に、中国の映画市場が2022年までにアメリカを超えると予測していた。そして今、同社は、アメリカ市場が緩やかに回復しつつあるが、中国がこのままトップの座を維持すると予想している。
同社のリサーチディレクター、リチャード・クーパー(Richard Cooper)は、中国の映画市場は成長を続け、アメリカ映画の中国での売り上げも伸びるが、アメリカの映画市場は縮小すると述べた。
「これまで安定していたアメリカの映画市場は、パンデミック後に規模が縮小するだろう。これは主に、映画の資金調達が減少すると予想されていることと、アメリカの一部の映画館が恒久的に閉鎖されるという事実によるものだ」
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)