ベラルーシ当局に拘束されたロマン・プロタセビッチ氏。2017年4月10日撮影。
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- EUは、ベラルーシ政府がジャーナリストを逮捕するために航空機を迂回させたことを受けて、制裁を加えようとしている。
- ロマン・プロタセビッチ氏が乗っていたライアンエアー機は、セキュリティ上の脅威を理由にミンスクに強制着陸させられた。
- EUは、EU加盟国の航空会社にベラルーシの領空を飛行しないように指示し、ベラルーシの航空会社によるEUの領空と空港への立ち入りを禁止した。
欧州連合(EU)は、5月23日にベラルーシ政府がライアンエアー機を緊急着陸させてジャーナリストを逮捕したことを受けて、ベラルーシへの制裁に動き出した。
EUは、EU内のすべての航空会社に対し、ベラルーシの領空を飛行しないように指示し、ベラルーシの航空会社がEUの空域に入ることや、EU内の空港に着陸することを禁止した。これらは24日、ブリュッセルで開催されたEU首脳会議で発表された。
ジャーナリストのロマン・プロタセビッチ(Roman Protasevich)氏は、彼が乗っていたリトアニア行きの航空機が虚偽の治安上の脅威のためにベラルーシの首都ミンスクに着陸させられた後、拘留された。同国の国営メディアによると、プロタセビッチ氏は、航空機を着陸させるよう「命令」を下したベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(Alexander Lukashenko)の声高な批判者だ。
プロタセビッチ氏の逮捕は国際社会に怒りを引き起こした。EUの指導者たちは強制着陸を非難し、プロタセビッチ氏と彼のパートナーで同じく拘束されたソフィア・サペガ(Sofia Sapega)さんの「即時放出」を求めた。そのほかの世界の指導者たちも「彼らの移動の自由が保証されること」を求めた。
欧州委員会の委員長、ウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)は、「ベラルーシ政府の非道で違法な行動は、重大な結果をもたらすだろう」と述べた。
フォン・デア・ライエン氏は、ツイッターで声明を発表し、「ライアンエアー機のハイジャックに関与した者は制裁を受けなければならない」と述べた。
「ジャーナリストのロマン・プロタセビッチ氏は、直ちに釈放されなければならない」
ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ(Mateusz Morawiecki)首相も、この事件を「前例のない国家テロ行為」と呼んだ。
「民間機のハイジャックは、前例のない国家テロ行為である。罰せられないはずがない」とモラヴィエツキは声明を出し、ベラルーシへの制裁を求めるとしている。
また、ニューヨーク・タイムズによると、開催中の北大西洋条約機構(NATO)ブリュッセル・サミットでルクセンブルクのグザビエ・ベッテル(グザヴィエ・ベッテル)首相は今回の事件を「狂気の沙汰」と表現したという。
「まるで出来の悪い映画のようだ。政権の状態を示している」
EU関係者によると、ベラルーシの領空を回避する動きに異論を唱える人はほとんどいなかったという。EUでは論争の的になるような問題については、簡単には意見がまとまらない傾向にあるため、これは珍しいことだとニューヨーク・タイムズは伝えている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)