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財務諸表はまずどこを見るべき? ファイナンスの専門家に聞いてみた【音声付・入山章栄】

サムネ

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても、平易に読み通せます。

今回は、Business Insider Japanでファイナンスの連載を執筆中の村上茂久さんをゲストにお迎えし、対談形式でお届けします。かたや経営学の専門家、かたやファイナンスの専門家と立場の違うお2人。企業分析の際にはそれぞれ決算書のどんなところに注目しているのでしょうか?

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:11分35秒)※クリックすると音声が流れます


ファイナンスの専門家と経営学の専門家


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

先生、今回はゲストをお招きしました。Business Insider Japanで「会計とファイナンスで読むニュース」という連載を執筆いただいている村上茂久さんです。村上さんはファイナンスの専門家です。

私は村上さんの連載の編集担当もさせていただいているのですが、村上さんは企業分析をされる際、ファイナンスや会計の視点だけでなくビジネスモデルにも言及されることがよくあるんです。入山先生のご著書を参照されることも多いので、お立場の違うお2人に同じトピックについてお話しいただいたら、多面的な考察ができて面白いのではと思いまして。


入山章栄(以下、入山):アメリカのバブソンカレッジというビジネススクールでは、1つの企業の事例を2人の別の分野の専門家が違う角度から考察するという授業をしています。僕はこれは素晴らしいと思っていて。

例えば「ある企業のM&A」というテーマについて、戦略が専門の教授と、ファイナンスが専門の教授が、同時に教えたりする。世界的に見ても、これをやっているところは少ないですね。

そういう意味では、村上さんのファイナンスの視点と僕の経営学の視点で議論できる機会は貴重だと思います。僕も今日は村上さんからいっぱい勉強させていただくつもりです。

村上茂久(以下、村上):ありがとうございます。私は入山先生の『世界標準の経営理論』が書籍になる前、『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』で連載していた頃から愛読していました。いまも妻と一緒に主宰する輪読会で、この本を取り上げているところです。

大手企業の経営者でも、会計やファイナンスの知識がない?


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

今回は、入山先生が村上さんにお聞きしてみたいことがあるのだとか。


入山:はい。実を言うと、僕はもともと会計やファイナンスのバックグラウンドがまったくありませんでした。そして、何年も前に初めてある会社の社外取締役を頼まれました。そこはかなりいわゆる外資系的な取締役会ができているところでして、その取締役会に参加してみると、会計とファイナンスの知識がないと議論にまったく貢献できないことを身につまされたのです。

それで反省して、会計とファイナンスを勉強しました。今もまだまだまったく知識も場数も足りませんが、それでもちょっとだけファイナンスとか会計の視点で企業を見られるようになってきたかもしれません。でもまだまだですね。

そうこうするうち分かってきたのが、一方で日本の古い会社ほど、意外と役員レベルでも会計やファイナンスのリテラシーが弱いということなんですよ。僕ごときが会計やファイナンスについてちょっと発言しても、みなさん「なるほど」と感心してくれることすらあります。

村上さんは今の日本の経営者やビジネスパーソンのファイナンスリテラシーについて、どう思われますか?

村上:そうですね。上場企業の場合、決算時には有価証券報告書のほかに、多くの場合は「決算説明資料」というものを作成します。

有価証券報告書はフォーマットが決まっているので記載事項は基本的にすべて一緒ですが、決算説明資料は自分たちが株式市場に伝えたいことを自由度高く書けるので、KPI(重要業績評価指標)のように有価証券報告書には記載されないことも書かれていたりするんです。ですから決算説明資料を読むと、その企業のファイナンスリテラシーがよく見えますね。

入山:なるほど! 有価証券報告書や決算短信などを見ても分からないことでも、決算説明資料ならプレゼン資料ですし、見せ方を工夫すれば「ここを強調したい」というポイントが伝わりますよね。

決算書のどこを見るべきか?

入山:僕は決算書のどこを見るべきかは「会社によって違う」と思っていて、柔軟に見るように心がけています。その点、村上さんは最初から決め打ちで「ここを見る」という項目はあるんですか?

村上:私が一番大切にしているのは、売上でも利益でもなくて、企業が将来キャッシュをいかに生み出せるかを集中して見ますね。例えば分かりやすい例で言うと、メルカリです。

メルカリは上場してから2020年6月期までずっと赤字で(詳細は村上さんの連載を参照)、しかも赤字幅が拡大している状況だった。普通に考えれば、「メルカリ全然ダメじゃん」というふうに見えてしまいますよね。

しかし、メルカリの顧客単価と広告宣伝費を計算し、LTV(顧客生涯価値)を割り出すと、将来生み出すキャッシュフローが増えていると分かる。そういう意味では、売上や利益だけでなく、いわゆるキャッシュフロー計算書(C/S)や、企業が将来生み出すであろう将来キャッシュフローなどを見ますね。

では「将来キャッシュフロー」はどこを見ればいいかというと、有価証券報告書には直接書かれていません。なので、EBITDAやフリーキャッシュフローといった指標を自ら計算したり、場合によっては企業が公表する決算説明資料に載っていたりするので、それを見たりします。

例えば私の連載でも過去に扱った資生堂は、決算説明資料ではEBITDAやフリーキャッシュフローなどが重視されていて、将来の目標もそこに置いているんですね。

資生堂はいま、約1兆円の売上があります。しかし3年後の売上目標も、そう大きくは変わっていない。つまり売上拡大志向ではないんです。その代わり、EBITDAとかフリーキャッシュフローを伸ばすことを目標にしている。こういう企業は、キャッシュフローを生み出すことにかなり価値を置いているんだな、と分かります。

財務3表で最も重視すべきは「キャッシュフロー計算書」

入山:なぜ村上さんはキャッシュフローに注目するんですか?

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