ASUSの新型Chromebookは5万円を切る値段で登場した。果たしてその実力とは。
撮影:小林優多郎
GIGAスクール構想の促進によって、日本市場でも大きく存在を示してきたChromebook(クロームブック)。その新製品のひとつが、ASUSが5月20日に発売した「ASUS Chromebook Flip CM3(CM3200)」だ。
直販価格4万9800円という価格は、Chromebookというジャンルでは“中価格帯”と言えるが、その実力はどれほどのものか。2人の編集記者のクロスレビュー形式でファーストインプレッションをお届けする。
ASUS Chromebook Flip CM3(CM3200)の主なスペック
- ディスプレイ:タッチ対応12インチ HD+(1366×912ドット)解像度
- チップセット:MediaTek MT8183
- メモリー:4GB
- ストレージ:64GB eMMC
- サイズ/重量:幅269.2×奥行き215.8×高さ16.8mm/約1.14kg
小林:大きめな画面のChromebookは親世代にオススメしたい
ウェブベースや動作するAndroidアプリがあれば、Web会議だってお手のもの。
撮影:小林優多郎
ASUSは同じくChromeOSを採用した「ASUS Chromebook Detachable CM3(CM3000)」を3月17日に発売しており、自分はすでにそちらをレビュー済みだ。
両機種を比べると、チップセットとメモリーは同じ(4月9日には64GBストレージ版もリリースされている)で、価格は同じストレージ容量であればDetachable CM3の方がやや安い。
とはいえ、形状と重量、画面サイズが違うので、何を優先したいかで「どちらが魅力的か」は大きく変わってくるだろう。
ヒンジを最大限回転させて「タブレットモード」に。片手で持つとかなり重く感じた。
撮影:小林優多郎
Flip CM3はこの価格帯とは思えないしっかりと質感で、打鍵感も悪くない。Detachable CM3はキーボードカバーなので、比べてしまうとやや見劣りするところがある。
一方で、Detachable CM3の魅力は“軽さ”だ。キーボードカバーを合わせても実測値917gという軽さは、片手でもラクに持ち運べる。Flip CM3は、金属製もあってかかなりずしっとくる(公称値約1.14kg)。
金属製の天板にはメーカーロゴとChromebookのロゴが配置されている。
撮影:小林優多郎
では、どんな人にFlip CM3をオススメするかと考えてみたが、まず最初に思いついたのが、自分の両親のような「PCは使うが、細かいことはわからない」人だ。
Chormebookの最大の特徴は、やはりChromeOSを搭載している点に尽きる。
Chromebookは複数回触ってきたが、どのモデルも本体起動もアプリ起動も高速(数秒で起動)で、タッチが使える(据え置き型のChromeboxは除く)。そして、何より(会社や学校で指定されていない限りは)何もしなくても常に最新のOSやセキュリティーパッチが適用される。
起動速度と最新の状態に保たれる点は、例えばサポートは必要だが遠隔地に住む親などに使ってもらうには最適なポイントだろう。
ASUS Chromebook Flip CM3の左側面。USB Type-C端子(充電端子兼用)だけではなくUSB Standard-Aやイヤホンジャックも備えているのもポイントが高い。
撮影:小林優多郎
自分の親世代(だいたい60代)であれば、PCもスマートフォンもある程度使っているので、本体起動やアプリの立ち上げ方など必要最低限のレクチャーだけで「あとは、今まで使っていたネットを見るやつ(ブラウザー)と一緒だから」で済む。
そのような長所に加えて、Flip CM3はDetachable CM3より画面も大きく、本体の剛性もしっかりとしているので、きっと満足してもらえる……といった算段だ。
コロナ禍で親世代もネットショッピングや、なんらかのWeb会議ツールの利用などで新しいPCは入り用だ。Flip CM3はそんな機会のいい選択肢になるだろう。
伊藤:サブノートに最適な「安さ」と「そこそこ使える性能」
ASUS Chromebook Flip CM3のキーボードレイアウト。
撮影:小林優多郎
ノートPCとしてみると「かなり安い」レベルの4万9800円という価格設定だが、質感は割と頑張っていると感じる。
低価格PCを作り慣れたASUSならではなのか、外装は金属素材で、手触りも良い。この価格帯としては気になる「キーボードの押しやすさ」も、十分に道具としてアリなレベルになっている。
液晶ディスプレイ…機構に良さはあるも表示品質は?
ヒンジを回転させて「テントスタイル」で動画を視聴している様子。
撮影:小林優多郎
良い点と悪い点がある。
良い方から言うと、縦横比が3対2の画面比率がいまどき珍しく、目をひく。スペック的には12インチ1366×912ドットと、決して高解像度ではないが、縦方向912ドットはやはり変わっている。機能的にも、この価格でタブレットのように使えるフリップ機構(上写真のような状態にできるヒンジ機構)があるのはポイントの1つ。
気になる点は、液晶そのものの表示品質。解像度がHDクラスということもあり、率直なところ、価格なりの印象は強い。
とはいえ、GoogleドキュメントやGoogleスライドで書類をつくるのには、表示上の大きな不自由はないし(※速度面については指摘しておく部分がある)、YouTubeを見るのも問題はない(ちなみに音質的には、YouTubeマシンとしてはちゃんと使える水準だった)。
スピード…アプリよりも、文字入力で気になるケースがある
Chromebook Flip CM3では、全てではないがAndroidアプリが利用可能。
撮影:小林優多郎
これは、Chromebookの特殊な部分。CPUを酷使するようなアプリはAndroidアプリなので、Androidアプリを使うかどうかで体験の良し悪しがかなり変わりそうだ。
グーグルのアプリを使っている限りは、アプリやブラウザーの動作自体に「遅さ」はそこまで感じなかった。
文字入力の遅さはやや気になった。
撮影:小林優多郎
ただ、どうしても気になったのが、「IMEのレスポンス」。自分が文字入力がかなり早い方というせいもあるが、タイプしてから画面上に文字が出るまでに、0コンマ数秒の微妙な遅れを感じた。
コンピューターを使い始めたばかりの人など文字入力が遅い人なら、気にならない部分かもしれない。ただ、文字入力は毎日必ず触れる部分なので、自分の速度感とあうのかどうかは、意外と大事だと感じたところだ。
総評…
複数のウィンドウ表示もでき、十分使える。
撮影:小林優多郎
価格や仕様をみてわかるとおり、仕事をバリバリ処理するマシンではない。とはいえ、まったくナシでもない。とにかく安くて、それなりに使えるからだ。
イメージとしては、長期滞在する遠隔地(たとえば2拠点居住でコンピューターを何か置いておきたい、とか実家に念の為置いておくなど)や、急場でマシンを調達したいときなんかは、「安さ」と「そこそこ使える性能」に意味がある。
もちろん、Google Workspace(旧G Suite)と親和性が高いので、仕事環境にグーグルが入り込んでる人ほど、違和感なく使えるはず。
また、「PCに不慣れな人に、とりあえず何か買ってくれと言われた」ようなケースもいいかもしれない。
一方、気になるのは、子どもの通う学校がChromebookを使っている、授業にGoogle Classroomのシステムを採用しているという家庭の親の場合。
個人的には、こういうケースでは「PCに子どもが慣れるかどうかわからない」「壊しそう」というような、本当の初心者の場合のみに限定したほうがいいかもと思った。
本来、子どもにこそ良いPCを使ってもらうべきで、「速さ」とか「広い画面の快適性」などで体験に上限を与えるべきじゃないからだ。
注:この記事では、Business Insider Japan編集部がお勧めの製品を紹介しています。リンクを経由してアマゾンで製品を購入すると、編集部とアマゾンとのアフィリエイト契約により、編集部が一定割合の利益を得ます。