年20%で顧客増のスノーピークはなぜファンを生み出せるのか。「5年で投資額100億円」が物語るビジョン経営

コロナ禍でも15期連続増収増益を続ける株式会社スノーピーク(以下、スノーピーク)。その強さの秘密を解く鍵は、「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンにありそうだということが前回の分析で分かりました。

キャンプ市場自体が拡大中とはいえ、スノーピークのポイント会員数は毎年20%以上と、キャンプ市場の伸びを上回るスピードで増えているわけですから、その秘訣がどこにあるのかが気になります。

そこで本稿では、スノーピークが熱狂的なファンを生み出すことに成功した要因を探っていくことにしましょう。

苦境から生まれた「スノーピークウェイ」

今でこそ過去最高業績を叩き出すほど絶好調なスノーピークですが、ここに至るまでの道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。

現会長の山井太氏が、父・幸雄氏が経営するスノーピークに入社した1986年当時は、売上高は5億円ほどでした。しかしその後、オートキャンプブームが到来。1993年には売上高は5倍の25億円強にまで増えました。

ただし追い風もそう長くは続きません。オートキャンプのブームが去ると、売上は6期連続で下がり、1999年には14.5億円ほどになってしまいました(図表1)。

図表1

(出所)スノーピーク有価証券報告書、山井太『スノーピーク 「好きなことだけ!」を仕事にする経営』(日経BP、2014年)、山井太『スノーピーク「楽しいまま!」成長を続ける経営』(日経BP、2019年)を参考に筆者作成。

業績が低迷し、「スノーピークに存在意義はまだあるのか」と太氏(当時は社長)が苦悩するなか、ある社員がこんなことを口にしたそうです。

「自分たちの存在意義はよくわからないが、それでもユーザーの顔を見ると仕事を頑張れる」

この言葉をきっかけにして、1998年、顧客と社員とが一緒にキャンプを楽しむイベント「スノーピークウェイ(※1)」が生まれました。イベントを通じてスノーピークの魅力や目指す方向を直接ユーザーに伝えようというものです。

スノーピークウェイの最大のハイライトは「焚火トーク」です。焚火を囲みながら顧客と社員がアウトドアの楽しみ方について語り合うだけでなく、製品についてさまざまなレビューをしてもらうのです。

スノーピークはこうしたユーザーの声を丁寧に拾い上げ、経営にも反映させてきました。例えば、第1回のスノーピークウェイでは「スノーピークの商品は高い」「品揃えの良い店がない」といった声が顧客の間から聞かれました。

そこで、当時社長だった太氏は大胆な意思決定をします。商品を少しでも買いやすくするため、長年付き合いのあった問屋との取引をやめて流通コストを下げたのです。また、品揃えの良さを担保するために、直接取引による専門店のネットワークを全国につくっていきました。

顧客の声を聴き、そのユーザー視点を実際に経営にも反映させる。こうした努力の積み重ねが数字となって表れ、スノーピークの売上は2000年以降、図表2の通り急激に拡大していきました。

図表2

(出所)スノーピーク「2020年12月期 決算説明資料および中期経営計画について」(2021年2月17日)より。

スノーピークウェイの焚火トークにはおそらく、「顧客の声を聴いて製品改良につなげる」という以外にもうひとつ、極めて重要な効果があります

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