2021年5月12日、ガザ地区から発射されたロケットを迎撃するアイアンドーム。
REUTERS/Amir Cohen
- イスラエルの「アイアンドーム」は、戦闘中に何千ものロケットやドローンを撃ち落とした。
- この防空システムは、自軍の無人機も誤って撃墜した。
- イスラエル国防軍は地元メディアに誤射事件として調査中だと語った。
イスラエル国防軍(IDF)は地元メディアに対して、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」が、最近のガザ地区での戦闘中に、自軍のドローンを誤って撃墜したと述べた。
IDFの報道官は地元紙ハアレツ(Haaretz)に対し、「ガザ地区での戦闘で、イスラエル国防軍のドローン『スカイラーク』がアイアンドームに撃ち落とされた」と述べ、この事件は調査中であると付け加えた。
「スカイラーク」は、イスラエルの国際的な軍事関連企業であるエルビット・システムズ(Elbit Systems)が製造した小型無人機で、IDFの砲兵隊「スカイライダー」が監視・偵察などの任務に使用している。
ハアレツ紙は、IDFが今回の誤射を「憂慮」していると報じている。その理由は、長い期間の戦闘で自軍に危害を加えずにすむかどうかが疑問視されるからだという。
IDFとガザ地区のパレスチナ人武装勢力との間で11日間にわたって激しい戦闘が繰り広げられた際、イスラエルの「アイアンドーム」は数千発のロケット弾に加えて、敵のドローンにも直面した。後者の迎撃は同システムにとって初めてのことだったという。
2021年5月12日、ガザ地区から発射されたロケットを迎撃するアイアンドーム。
Amir Cohen/Reuters
イスラエルの「アイアンドーム」は、ロケット弾や迫撃砲を迎撃するために設計された短距離防空システムだ。このシステムは2011年から使用されており、イスラエルの都市に対するロケット攻撃による犠牲者を減らすために配備されている。
システムは、イスラエルの軍事企業であるラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ(Rafael Advanced Defense Systems)と航空機メーカーのイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(Israel Aerospace Industries)がアメリカの支援を受けて設計・開発したものだ。このシステムは、アローやパトリオットといった迎撃ミサイルなどを含む、より大規模な防衛システムの一部だ。
イスラエル国防省は3月、アイアンドームのアップグレードが完了したことを発表した。これにより、イスラエルが将来の紛争で戦う可能性のある、より多様な空の脅威に対する防御が可能になったという。
このアップグレードの過程で、ロケット弾、ミサイル、無人機などのさまざまな脅威に対するテストが行われたとAP通信が報じている。しかし、アイアンドームはドローンとの戦闘は行っていなかったという。
ロケット弾を迎撃するアイアンドーム。2021年5月19日。
REUTERS/Amir Cohen
最近の戦闘は、5月10日にハマスがロケット弾をイスラエルの都市に向けて発射したことに始まり、その後、局地的な衝突が続いていた。紛争の間、IDFはアイアンドームの効果を何度も高く評価していた。
このシステムは、飛来するロケット弾の90%を迎撃し、イスラエル軍の損失を大幅に削減したと言われている。イスラエルでは防空システムをかいくぐったロケット弾により、子ども2人を含む13人が死亡した。ただし、イスラエルが空爆で報復したことによるパレスチナ人の死者はもっと多い。
イスラエルが自軍の無人機を誤射したことも報じているタイムズ・オブ・イスラエル紙によると、イスラエル軍は紛争期間中、ガザ地区へ約1500回の空爆を行ったという。ガザ保健省によると、子ども数十人を含む少なくとも243人のパレスチナ人が死亡し、約2000人が負傷した。死者の中には戦闘員と民間人の両方が含まれている。
過去数年間で最悪の戦闘となったこの惨劇は、5月21日に停戦合意が成立した。
[原文:The Israeli military says Iron Dome shot down one of its own drones during intense fighting]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)