過去14カ月において、市場を牽引する銘柄は、アメリカ国内を売上のベースとする「国内志向型企業」から、海外展開に積極的な「グローバル志向型企業」に移った後、いったん国内志向型企業に戻った。しかしゴールドマン・サックスは、間もなくバトンは再びグローバル志向型企業に手渡されると指摘する。
2020年のコロナショック直後から当面の間、市場はグローバル志向型銘柄が優勢と見ていた。しかし2021年2月以降、その見方は逆転した。アメリカ経済の強靭さと速やかなワクチン接種の普及が国内志向型銘柄の強力な押し上げ材料となり、経済再開をテーマとする取引が活発化したためだ。
しかし、ゴールドマン・サックスのアメリカ株チーフストラテジスト、デイビッド・コスティン((David Kostin)は、その期待は既に株価に織り込み済みだという。コスティンはクライアント向けレポートにこう記す。
「今後数カ月において、世界経済の回復ペースがアメリカ経済の回復ペースを上回り、国内売上比率の高い銘柄は、海外売上比率の高い銘柄の後塵を拝することになるだろう。(中略)
構造的なドル安と、アメリカの成長を相対的に上回る世界経済の成長加速によって、国内志向型アメリカ企業より、グローバル志向型アメリカ企業の方が恩恵を受けるためだ」
こうした予測を背景に、コスティンは海外売上比率の高い企業について強気な見方をしている。コスティン率いるゴールドマン・サックスのアメリカ株チームは、このトレンドの追い風を受けるであろう海外売上比率の高い企業を厳選した。
S&P500銘柄の平均海外売上比率は、総売上の25%程度だが、コスティンらが選んだ銘柄の海外売上比率は、実に50%以上だ。したがって、これらの銘柄は、コスティンが予測するトレンドの恩恵を最も大きく受けると期待される。
それでは、選ばれた11銘柄を、海外売上比率が低い銘柄から高い銘柄へとランキング形式で紹介していこう。
第11位:ウィリス・タワーズ・ワトソン・パブリック(Willis Towers Watson Public)
業種:金融
時価総額:339億ドル(約3兆6900億円)
海外売上比率:50%
第10位:ネットフリックス(Netflix)
業種:通信サービス
時価総額:2209億ドル(約24兆700億円)
海外売上比率:57%
第9位:キャタピラー(Caterpillar)
業種:資本財
時価総額:1300億ドル(約14兆円)
海外売上比率:61%
第8位: アプティブ(Aptiv)
業種:一般消費財
時価総額:380億ドル(約4兆1400億円)
海外売上比率:66%
第7位:PVH
業種:一般消費財
時価総額:78億ドル(約8500億円)
海外売上比率:66%
第6位:オーチス・ワールドワイド(Otis Worldwide)
業種:資本財
時価総額:333億ドル(約3兆6200億円)
海外売上比率:73%
第5位:エスティ ローダー(Estee Lauder)
業種:生活必需品
時価総額:1076億ドル(約11兆7200億円)
海外売上比率:76%
第4位:シュランベルジェ(Schlumberger)
業種:エネルギー
時価総額:447億ドル(約4兆8200億円)
海外売上比率:81%
第3位:テラダイン(Teradyne)
業種:情報技術
時価総額:208億ドル(約2兆2600億円)
海外売上比率:90%
第2位:NXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)
業種:情報技術
業種:551億ドル(約6兆円)
海外売上比率:91%
第1位:モノリシック・パワー・システムズ(Monolithic Power Systems)
業種:情報技術
時価総額:149億ドル(約1兆6200億円)
海外売上比率:98%
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)