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起業家育成を目指す「神山まるごと高専」が異例の“クラファンで寄付募集”する理由

神山高専・新設校舎

「神山まるごと高専」新設校舎の最新CGイメージ。木の質感をいかした平家づくりの設計を構想している。

写真提供:神山まるごと高専設立準備財団

企業のサテライトオフィスが集まる徳島県山間部の町、神山町での2023年4月の開校を目指す私立高等専門学校「神山まるごと高専」の設立プロジェクトが、応援購入サイトMakuakeでのクラウドファンディング形式の寄付募集を6月1日からスタートした。

高専設立

高専の設立にあたっては、神山中学校の校舎改装して学生寮とする予定。学びの中心は川の対岸にある新設校舎になるという。

写真提供:神山まるごと高専設立準備財団(文字は編集部加工)

学校の設立資金の募集にクラウドファンディングのような手法を使うこと自体が異例だが、「リターン」(対価)が“一期生の先輩”になることだというのもユニークだ。

同校の発起人で理事長を務めるSansan創業者の寺田親弘さん、クリエイティブディレクター山川咲さん、マクアケ取締役の坊垣佳奈さん、「先輩募集」の狙いを聞く。

総額目標は20億円、個人でも5億円寄付

マクアケ坊垣さん、Sansan寺田さん

クラウドファンディング型の応援購入でプロジェクトを支援するマクアケ取締役の坊垣佳奈さん(左)、理事長を務めるSansan社長の寺田親弘さん。取材は東京・表参道のSansan本社で実施(感染対策の上、撮影時のみマスクを外して撮影しています)。

撮影:編集部

設立準備財団のメンバーとして、若手起業家やIT企業幹部経験者が名を連ねる「神山まるごと高専」。

寺田さんはSansanを東証一部上場まで育てた起業家、山川さんもクレイジーウエディングを展開するCRAZYの共同創業者(現在は退任)、校長はZOZOテクノロジーズ元CTOの大蔵峰樹さん、さらに、カリキュラムディレクターはParty代表で京都芸大教授の伊藤直樹氏さんが参画した。カリキュラムについては、先日、「工業系大学」「美術大学」「MBA(経営学修士)」を組み合わせた構想も明らかになった。

神山高専の設立プロジェクトページ

Makuake上での神山高専の設立プロジェクトページ。この場所での「応援購入」目標金額は3000万円。財団によると、設立の目標金額20億円の一部として活用する予定だという(タップするとプロジェクトページに遷移します)。

撮影:編集部

設立資金は、主にに寄付を中心に集める。寺田さん自身も個人資産5億円あまりを拠出するが、企業版ふるさと納税などを通じて賛同企業を募っている。現在12億円超を集めたが、目標の「15〜20億円」(寺田さん)にはまだ遠い。

Makuakeでのキャンペーンは、寄付集めの一環ではあるが、「単なる資金集めだけではない」と寺田さんは言う。多くの人にプロジェクトを知ってもらい、参加してもらうことを目指している。

「社会にどう認知してもらうか取り組んできた中で、実は共感してくれる人がたくさんいることがわかりました。でも、学校を作るって本当に難しいし、誰もができることじゃない。だから(もしかしたら)一生に一度のこの機会を、私たちだけのものにするのはもったいないという気持ちがすごくありました」(山川さん)

多くの人に関わってもらう方法を模索する中で、行き着きいたのがクラウドファンディング。「自分も何かやりたい」という声にコミットするため、プロジェクトに関わる方法を公式に用意したかったというのも理由のひとつだという。

「ビジネスの世界とは違って、みなさん利害を度外視して応援してくれる。そういう応援を目に見える形にして関与してもらう上で、(Makuakeがうたう)“応援購入”という考え方はすばらしい仕組みだと思います」(寺田氏)

“リターン”が「先輩になる権利」になった高専特有の理由

senpai

Makuakeでの応援購入は大きく分けて2種類。「一緒に作る先輩コース」では、高専そのものに何らかの参加ができる。純粋に応援コースは、リターンはあるものの、寄付色の強いコースになっている。

Makuakeプロジェクトページより

ユニークなのは、2通り用意された“応援購入”の方法だ。

資金面でサポートする「サポーター」のほか、1000人限定の「先輩」を募集する。プロジェクトのリターン(対価)設計には、Makuakeを運営するマクアケの取締役の坊垣さんが直接かかわり、山川さんらと検討を進めてきた。

高専は5年制のため、本来であれば、入学すると先輩には20歳の成人がいる。年の離れた先輩と共同生活を送るのは、ほかの教育機関にはない大きな特徴で、大学のような特別なムードがある、と高専出身の関係者は言う。

山川さん

神山まるごと高専プロジェクトでクリエイティブディレクターを務める山川咲さん。取材当日はオンラインでの参加。

それが、新設の「神山まるごと高専」の新入生の場合、5年間もの間、先輩がいない。「(だから)先輩という立ち位置で見守ってくださり、関わってくださる人たちを増やしていくために、Makuakeを活用いただくイメージ」(坊垣さん)なのだという。

坊垣さん自身、Makuakeで多くのキャンペーンを見てきた経験から「自分事化して、関わっているイメージが沸く設計でないと(目標金額を達成するのは)難しい」と感じていた。そんななかで自らも神山町へ足を運び、このアイデアなら、とプロジェクト化を決めた。

「高専出身者や徳島出身者、大学生などいろんな種類の先輩を全国に作りたい。カリキュラム面は私たちでいろいろなものを考えていますが、生活面やカルチャー面、人間関係も含めたプログラムはまだこれから。今回のタイミングで多くの人に知ってもらって、本当に興味がある人たちと一緒に学校づくりができれば」(山川さん)

具体的には「先輩」として、開校から3年間校舎に立ち寄れる先輩証の発行や、オンラインコミュニティへ参加できる権利、開校式などイベントの企画や参加、模擬授業の見学やフィードバックといったメニューが用意されている。

新設校舎の室内イメージ

新設校舎の室内イメージ。ゲーム会社のアカツキや、さくらインターネットなどの寄付賛同を公表済みの企業以外にも、複数の企業からの寄付交渉を取りまとめつつあるが、20億円は高い目標だ。この画像のような施設の建設や校舎の改装などにも、寄付金はあてられる。

写真提供:神山まるごと高専設立準備財団

いわゆるリターンというより、「時間も寄付して参加していただき、関わっていただくという設計」(寺田さん)。先輩として在校生の相談に乗るというメニューもある。

マクアケとしても、今回のプロジェクトは社会貢献の一環としてとらえている。応援購入総額におけるMakuakeの手数料20%(決済代行手数料込み)から3%分の寄付を決めている。

坊垣さんは今回のキャンペーンについて、継続的な活動報告やコミュニケーションの場を提供するだけでなく、Makuakeとして中長期的に関わっていきたいと話す。自身としても、「神山まるごと高専」の挑戦に、強く共感しているという。

「Makuakeの実行者には、起業家や中小企業の後継者など、新しいものを作り出したり、産業を守りながらアップデートしている人が全国にいます。そうした人が、たとえば先生になって教えたり、一緒にものづくりをするなど連携していくことで、世の中に大きなインパクトを与えられる可能性があると思っています」(坊垣さん)

(文・太田百合子、聞き手・伊藤有


太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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