WHOは5月31日、世界でさまざまな変異を遂げている新型コロナウイルスの変異ウイルスの呼称について、ギリシア文字(ギリシャ語のアルファベット)を用いる方針を発表した。
科学者の間で使われている「B.1.1.7 」などいった名称は非専門家にとっては分かりにくい。
WHOは、今回、一般向けに分かりやすく実用的な名称を新たに決めることで、一般社会の中で変異ウイルスについての理解が進むことをサポートしたいとしている。
日本では変異ウイルスについて、イギリス株・ブラジル株・インド株のように、その変異が最初に確認された国や地域の名称で呼んでいる。しかしWHOでは、感染症やウイルスの名称に地域や人の名前などをつけることは差別や偏見を生む可能性があるとして禁止している。日本でも、使用は避けるべきだろう。
WHOは、今回の新名称を決める上でも、差別・偏見を助長しないという点を考慮しているという。
以下にあらためて、WHOが指摘する「懸念すべき変異ウイルス」の名称と特徴を表としてまとめた。
なおWHOは、以下の3点の条件のうち、1点以上の特徴を含むものを「懸念すべき変異ウイルス」として注視している。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学における伝染性の増加または有害な変化があるもの
- 病原性の増加または臨床症状の変化があるもの
- 公衆衛生および社会的措置、または利用可能な診断、ワクチン、治療法の有効性の低下が起こるもの 。
懸念すべき変異ウイルスの新名称と性質をまとめた。性質に関する情報は、第36回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年5月26日)資料4、およびWHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update(5月25日公開)を元にしている。
Business Insider Japan 編集部
WHOが5月25日発表したCOVID-19 Weekly Epidemiological Updateでは、アルファ株が世界149カ国、ベータ株が102カ国、ガンマ株は59カ国で確認されている。日本ではアルファ株・ベータ株・ガンマ株の全てが確認されている。
また、デルタ株はB.1.617系統が3つに分かれたうちの1つ。B.1.617系統はタイプによって世界54カ国で確認されているものもある。日本ではB.1.617系統のうち、デルタ株とカッパ株(後述)が確認されている。
以下、世界および都内における変異ウイルスの検出状況を見ていこう。
「アルファ」は149カ国で検出
アルファを検出している国の一覧。
出典:WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update
「ベータ」は102カ国で検出
ベータを検出している国の一覧。
出典:WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update
「ガンマ」は59カ国で検出
ガンマを検出している国の一覧。
出典:WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update
B.1.617系統は3タイプに分かれて世界に分布
B.1.617系統を検出している国の一覧。デルタは真ん中の図。
出典:WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update
都内ではアルファ、ベータ、ガンマの変異ウイルスが大半を占める
都内の変異ウイルスのスクリーニング状況。N501Yとされているものが、アルファ、ベータ、ガンマに相当する。インドで猛威を奮っているデルタは、L452Rとされているもの。
出典:東京都福祉保健局
今回のWHOの発表ではアルファからデルタまでの4つ以外にも、今後注目しておくべき変異ウイルスとして6つの変異ウイルスにギリシャ語のアルファベットの新名称が与えられている。
B.1.617.1はカッパ株と名付けられた。
(文・三ツ村崇志)