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- 働き方の多様化は最終的に訴訟を導きかねないと、スタンフォード大学の経済学者、ニコラス・ブルームがブルームバーグに語った。
- 未婚男性はオフィスへの出社にフルタイムで復帰できるが、子供を持つ母親は在宅勤務の日があるかもしれない。
- これは昇格率の差を生み、企業にとって訴訟リスクになる可能性があると、彼は述べた。
未来の働き方は、企業と従業員にとって訴訟問題などの新しい課題をもたらしかねないと、ある経済学者が指摘した。
スタンフォード大学の経済学者で、リモートワークの専門家であるニコラス・ブルーム(Nicholas Bloom)は、1年間に及ぶアメリカ企業と従業員を対象とした調査の結果を、ブルームバーグのインタビューで紹介した。
ブルームによると、多くの労働者が、週に数日出社して残りは自宅で働くといったハイブリッドな働き方を考えているという。そして、在宅勤務はすでに人々の居住する場所(都市か、郊外か)や生産性に影響を与えていると彼は述べた。
一方でブルームは、この新しい勤務形態は長期的に悪影響をもたらしかねないと述べた。
「パンデミック後に在宅勤務を選択する人には、ある法則性が見られる。12歳未満の子どもを持つ人の中で週5日在宅勤務することを選ぶのは、女性の方が男性より約50%多い」と彼はブルームバーグに述べた。出社日数を従業員に決めさせた場合、若い未婚男性は毎日出社可能だが、子どもを持つ母親は週の何日かは在宅勤務を選ぶと考えられる。これは、昇進に関して「大きな犠牲を払う」ことになるだろうと彼は述べた。
「6年から7年後には昇進率に大きな男女差が生じて、多様性は危機に直面する。企業は訴訟のリスクを背負うことになるだろう」
多様化する働き方について、別の人物も同様の懸念を示している。オンライン不動産データベースを運営するジロー(Zillow)のリッチ・バートン(Rich Barton)CEOは2021年初め、ジローは多様化する働き方に対応する予定だが、オフィスに頻繁に出社する人をよい従業員とみなすシステムができることを懸念しているとを述べた。
もっと小さなことで言うと、出社するたびに従業員にデスクを割り当てる「ホットデスク」システムは、従業員にもIT部門にも頭痛の種になるだろう。従業員は毎回設定を調整する必要があり、IT部門の担当者はそのたびにネットワークやデバイスへの接続を手伝う必要がある。
それでも、働き方の多様化は、特にシリコンバレーでは「未来の働き方」として奨励されている。グーグル(Google)のサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEO、セールスフォース(Salesforce)やマイクロソフト(Microsoft)の幹部は、多様な働き方に対応すると発表している。
7月からアマゾンのCEOに就任するアンディ・ジャシー(Andy Jassy)は、多くの人が多様な働き方をするようになると予測しており、未来の職場は出社する日を自分で決めてデスクを予約する「ホットオフィス」になるだろうと、2020年12月にCNBCに語っていた。
金融業界やコンサルティング業界でも働き方の多様化が進んでいるようだ。HSBCは先日、幹部のオフィスを撤廃してホットデスク制を導入し、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)は、テキサス州オースティンにあるオフィスでコンサルタントが出社日にデスクを予約できるようにすると発表した。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)