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- この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「Clubhouseと音声SNS 2021(Clubhouse and Social Audio 2021)」のプレビュー版。
音声SNSが活況を呈している。次々と企業が参入していることや、メディアで頻繁に取り上げられていることからも、その人気ぶりがうかがえる。
だが、果たして音声SNSはマーケティングにはどの程度有効なのだろうか。ソーシャルメディアを駆使するマーケターならば、流行りに乗る前にデメリットについてもよく考える必要がある。考慮しておきたい点をいくつか挙げよう。
コロナ後も人気は持続する?
クラブハウスの月間インストール数と増加率の推移。
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クラブハウス(Clubhouse)は急成長を遂げたものの、調査会社アップアニー(App Annie)の調べでは2021年3月9日までの全世界でのダウンロード数はわずか1220万。2月頃の勢いが続く保証はなく、調査会社センサータワー(Sensor Tower)によると、既に3月には失速の兆しが出ていた。これまでもVineのように急拡大後にあっさり下火になったアプリは多い。
まず検討すべき大きな点が規模感の問題だ。今のところ音声SNSの利用者数は、ソーシャルネットワーキングやポッドキャストに比べると、ごくわずかに過ぎない。インサイダー・インテリジェンスの予測では、アメリカにおける2021年の「ソーシャルネットワーキング・サービスの月間利用者数」は2億1210万人、「ポッドキャストの月間視聴者数」は1億1780万人となっている。
もう一つの課題は、使われる頻度と時間だ。平均的なユーザーが、音声SNSに多くの時間を割くだろうか? 特に、パンデミック終息後も人気が続くかどうかは不透明だ。ルームへの参加は、隙間時間に投稿を眺めるのに比べ、ずっと多くの時間と集中力が要る。
手間の割に小さいリターン
音声SNSは「対話・雑談」「ソーシャルメディア」「デジタルオーディオ」「バーチャルイベント」の4領域が交差する位置づけにある。
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2021年現在、マーケターは音声SNSへの参入に大きなリターンを期待すべきではない。そもそも環境として派手なキャンペーンを打つには適しておらず、上述したように規模が小さいため効果にもむらがあるだろう。
ルームを立ち上げるのはスマホの簡単な操作でできるが、マーケティング戦略を成功させるのは一筋縄ではいかない。例えば次のような点が改良されれば、マーケターにとってクラブハウスはもっと使いやすくなるだろう。
- ユーザーがルームを発見しやすくする
- 参加者同士のコミュニケーション
- イベント後のユーザーへのリーチ
現時点では、音声SNSでのマーケティングの成果を測定・追跡する方法はほとんどない。クラブハウスでは、モデレーターが参加者リストを見ることができるが、データをビジネスに使える形で取得する「スクレイピング」はできない(クラブハウスがそうした行為を容認するようになるかどうかは疑わしい)。
アプリ側が提供するネイティブの測定指標がないため、いち早く参入した企業は独自の方法で試行錯誤をしている。酒造メーカー、ペルノ・リカール(Pernod Ricard)のブランドディレクターであるメーガン・ストラウド(Megan Stroud)氏は次のように語っている。
「代理店スタッフにスマホでセッションを録音してもらっていました。それ以外に聞き返せる手段がなかったので」。
新しいメディアで効果の測定が難しいのは、仕方がない面もある。今のところは、できる範囲でデータを集めるしかないだろう。例えば、ルームの参加者を数えたり、イベント後に増えたフォロワー数を集計するなどの、ごく基本的なことだ。
問題発生でブランドの信頼を損ねる危険性も
お喋りができる場を気軽に立ち上げられるのが音声SNSの魅力だ。
Business Insider Intelligence
ライブトークでは、モデレーターによる進行があったとしても、誰がいつ何を言い出すかは分からない。予測不能なところが面白いとはいえ、独特の難しさがある。デジタルエージェンシーGrowでエンゲージメントディレクターを務めるカレン・ストートン(Karen Staughton)氏は「突発的に大きな問題が発生する可能性が高く、ブランドにとっては神経を使う場」だと述べている。
「スポンサーになるなど、ブランドが関わっているルームで問題が起きた場合、とっさに的確な反応ができなければ批判の的となってしまいます」
もう一つの課題は、ユーザーが安心して参加できる場づくりだ。ルーム内で他者を攻撃するなど、ネガティブな行動を取る人は実際にいる。こうしたことが起きればブランドにとって大きなマイナスになる。
メディアエージェンシーMindshareでソーシャルプラクティス・リードを担当するジェシカ・ドゥーリー(Jessica Dooley)氏は次のように語る。「音声の場合、有害コンテンツをリアルタイムで発見しなければならないので、通常よりも手間がかかります」。「ソーシャル」と「リスニング」の要素をうまく掛け合わせる方法論がまだ確立しないなか、問題行動の発見と対処はほかのユーザーに頼らざるを得ない状況だ。
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[原文:Social audio marketing challenges for 2021]
(翻訳・野澤朋代)