企業価値1700億「オールバーズ」丸の内へ…SDGsブームの今後は?

オールバーズ

サンフランシスコ発のD2Cシューズブランド「オールバーズ」は6月3日、日本の2号店を丸の内にオープンした。

撮影:西山里緒

サステナブルな素材と製法で作られた靴ブランド「Allbirds(オールバーズ)」が6月3日、日本2号店となる220平方メートルの店舗を丸の内にオープンした。

2016年にサンフランシスコで誕生し、ミレニアル世代に絶大な支持を得てきた同社が今、伝統企業がひしめくオフィス街・丸の内で仕掛ける理由とは?

“サステナブル系”本丸が丸の内に

オールバーズ

広々とした店内には、フィッティングルームもある。

初夏の緑がまぶしい丸の内仲通り。横を見れば明治安田生命保険ビルや東京海上日動ビルが立ち並び、ティファニーやロイヤル・コペンハーゲンといった高級ブランドショップが軒を連ねる一角に、新店舗はある。

「お客様から(日本第1号店の)原宿は行きづらい、買い物は丸の内・銀座・有楽町が多いという声が大きかった」

欧米では、20代から30代のミレニアル世代からの支持を得て、ビジネスを拡大したオールバーズ。本国アメリカでは、俳優のエマ・ワトソンやジェシカ・アルバなど、億万長者のセレブたちがこぞって「わずか95ドル(日本円では1万2500円)のシューズ」を買い求めたことで話題を集めた。

オールバーズを代表する商品「ウールランナー」

オールバーズを代表する商品「ウールランナー」。

撮影: 西山里緒

現在日本では、ニュージーランド産のメリノウールを使用した初期モデル「ウールランナー(1万2500円)」など、複数種類を展開。それぞれの型(ランニング、スリッポン、ハイカットなど)に、異なる自然素材(ユーカリ繊維、サトウキビなど)を使ったラインアップがそれぞれ販売されていることが特徴だ。

日本の客層の中心は「欧米での躍進」を知っていた、感度の高い40代から50代だった。「丸の内に2号店をつくる」ことには、そうした初期のメイン顧客の声が背景にあったと、Allbirds Japanマネージング・ディレクターの竹鼻圭一さん語る。

日本でバズらせた「マコなり社長」

日本におけるオールバーズ躍進の立役者となった「マコなり社長」。

動画:マコなり社長

先述の通り、オールバーズの上陸当初の熱気を下支えしたのは、欧米でのブランドの躍進を知っていた40代〜50代の層がメインだった。その一方でこの1年、そのボリュームゾーンが20代〜30代にじわじわと下がり始めている、と竹鼻さんは言う。

SNSで流行る「バズ」のきっかけを作った一人が、登録者数93万人を抱える起業家YouTuber「マコなり社長」だ。

2020年11月、マコなり社長はYouTube上の企画として、「世界一の靴」と絶賛しながら、“完全自腹”でオールバーズ1000足を視聴者にプレゼント。この企画は大反響を呼び、動画の再生回数は26万回を超えた。

「(取り上げられて)マコなり社長のフォロワーがバーッと来て。そういう方は意識も高く、新しいもの好き。ミニマリストの方も多く(オールバーズに)反応してくれたのではないか」(竹鼻さん)

SDGs「世代格差」浮き彫りに

SDGs認知度

「SDGsという言葉を知っているか」という質問は2020年の前回と比較して倍増。一方で世代間の差も。

出典:電通「第4回SDGsに関する生活者調査」

もう一つ、丸の内に出店した理由として「サステナビリティ」を牽引するブランドとしての“戦略”もあるという。

「よりサステナビリティを加速させていくために、これからはビジネスや政治のディシジョン・メイカー(意思決定層)に届けていかなくてはならない」(マーケティング・ディレクター 蓑輪光浩さん)

電通が2021年1月に10~70代の男女1400人を対象に実施した「SDGsに関する生活者調査」では、SDGsという言葉の認知率は54.2%で、2020年1月の調査からほぼ倍増した。

しかし年齢別にみると、10代の認知率は7割超えだが、60代〜70代では5割を割り込むなど、世代間の認知度の差も浮き彫りになっている。

若者世代にはすでに馴染み深い「SDGs」を、次は上の世代にも広げていく。「丸の内」という場所のチョイスにはそんな思惑も見え隠れする。

企業価値は1700億円に

オールバーズ

2020年には、アパレルにも進出した。

インスタグラムなどのSNSで宣伝し、小売店などに卸さず自社ECのみで販売する ── オールバーズは「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」という革新的な販売経路で人気を拡大してきた。

2020年はリアル店舗に大きな打撃があり「D2C」に新たに脚光が当たった。ファッションメディア「グロッシー」によるとオールバーズの売り上げの4分の3以上がオンラインからのもので、これはナイキの5割を大きく上回る。

一方で、「限られたラインアップを、オンラインのみで販売」という戦略からスタートしたオールバーズは今、次の成長の岐路に立たされている。

リアル店舗は全世界ですでに24店に拡大。2020年にはアパレルやアクセサリーの展開も始まった。2021年5月には大手スポーツメーカー、アディダスとの100足限定のコラボシューズの抽選企画も発表した。皮肉にも、競合大手との差別化が難しくなってきているようにも思える。

ランニングフットウェアFUTURECRAFT.FOOTPRINT (フューチャークラフトフットプリント)

アディダスとオールバーズは協業して、カーボンフットプリント(温室効果ガス)排出を削減したシューズを開発した。

画像:アディダス

D2Cブランドを牽引する存在としてのオールバーズの今後の戦略について尋ねると、竹鼻さんはこう答えた。

「大きな意味では“卸(での販売)”は考えていません。“適正なものを、適正な価格で、適正な量で”という思想で売るには、D2Cが最も適した形だと考えています。コラボに関しては、ものづくりや環境に対する考え方が合えば、そういうチャンスもあるかもしれない」

同社は未上場であり、売上高を公開していない。テッククランチによると、同社は2020年初めにシリーズDの2700万ドル(約28億4400万円)資金を調達した後、2020年内にほぼ同じとみられる16億ドル(約1685億円)の評価額でシリーズEの1億ドル(約105億円)の資金調達を終えたという。

熱狂から、安定的な成長へ。一大ブームを巻き起こしたブランドの行く末が注目される。

編集部より:初出時、マーケティング・ディレクターの蓑輪光浩さんのお名前を箕輪光浩さんと表記しておりました。訂正いたします。 2021年6月4日 18:45

(文・写真、西山里緒

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