吉野家グループのヨシノヤアメリカは最高経営責任者(CEO)の交替を発表した。
Screenshot of Yohinoya America website
牛丼チェーン大手・吉野家のアメリカ部門、ヨシノヤアメリカは6月3日(現地時間)、最高経営責任者(CEO)の交替を発表した。
2013年から7年半にわたって同社を率いてきたダル・ヴァッセギに替わり、ジョン・ギリアムが就任した。
ギリアム新CEOはスターバックス、スムージー・ジュース専門店「ジャンバ」(2020年夏に日本初上陸)、メキシカンフードチェーン「モーズ・サウスウェスト・グリル」で要職を歴任。
とりわけ直近に在籍したモーズでは、オペレーションとリテールテクノロジー(=小売り支援デジタルソリューション)担当のバイスプレジデントとして辣腕をふるった。
2021年4月に着任済みで、調理・提供プロセスの効率化と顧客体験の向上を目指し、キッチンレイアウト変更のためのテストに着手したという。
ヨシノヤアメリカ最高経営責任者(CEO)に就任したジョン・ギリアム。
PRNewsfoto/Yoshinoya America
米専門誌レストラン・ビジネスによると、ヨシノヤアメリカの2020年通期売上高は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、前年比15.5%の減少。ギリアム新CEOは、行動制限の完全解除に向かう移行期の経営再建を担うことになる。
吉野家は2022年2月期(2021年3月〜2022年2月)のグループ経営方針で、アメリカを「成長性の高い戦略的エリア」と位置づけ、「デジタルマーケティングの活用」をテーマに優先投資していく考えを明らかにしている。
それを踏まえると、ギリアム新CEOには特に、リテールテクノロジーに関する知見を期待しているとみられる。
吉野家の2022年2月期「グループ経営方針」より。海外事業の再成長戦略に関する記載。
出所:吉野家ホールディングス 2021年2月期 決算説明会資料
紆余曲折のアメリカ事業とその将来性
なお、吉野家ウェブサイトによれば、同社のアメリカ進出は1975年。コロラド州デンバーに第1号店舗を出し、牛丼を英語で「ビーフ・ボウル」と称して提供開始した。
1977年には「アメリカ200店構想」を打ち出したが、1980年に日本の本体が会社更生法の適用を申請したことを受け、翌81年にはアメリカでも連邦破産法の適用を申請。規模縮小のうえ、ロサンゼルスで再起をはかるという苦難が続いた。
その後、第2の主力商品として発売した「テリヤキ・チキンボウル」がダイエットブームを背景にブレイク。
1995年には米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの本拠地(ドジャー・スタジアム)に出店するなど成長を加速。2010年にはヨシノヤアメリカ100店舗を達成した。
2021年以降のアメリカを含む海外事業について、吉野家は「“新しい生活様式”に対応したサービスの提供・店舗モデルを展開することでさらなる成長を目指す」としている。
また、吉野家が外部に委託して作成しているショートレポート(5月6日付)は、同社の成長ドライバーが「売上高構成比11.5%を占める海外事業」であると指摘したうえで、
「アメリカ、中国、アセアン(ASEAN)で吉野家947店とはなまるうどん18店(2021年2月期実績)を展開、直営店舗にも注力し、2025年には国内吉野家の店舗数を超える」
との見通しを示している。
(文:川村力)