霞が関は長時間の残業が問題視されている。
撮影:今村拓馬
長時間の残業が問題される国家公務員の働き方をどう変えていくのか?
超党派の衆院議員が参加する「衆議院改革実現会議」の総会が2021年6月7日、衆議院議員会館で開かれた。「官僚の残業」がテーマとなった。
民間企業が2020年6~7月に、国家公務員を対象にしたアンケート(480人が回答)では、約4割の国家公務員が100時間以上の残業をしていると回答した。
また回答者の約9割が「国会議員が官僚の働き方を考慮していない」と回答しており、国会対応によって、国家公務員の長時間労働が生じている現状が浮き彫りになった。
衆議院改革実現会議で事務局長を務める山下貴司・元法相は、「国家公務員の志望が激減している。優秀な人材が霞が関を目指さなくなっており、国会として食い止めるよう取り組むべきだ」と話した。
※衆議院改革実現会議……小泉進次郎・環境相が主導し、2019年に超党派の国会議員約100人で結成。質問主意書などのペーパーレス化などを提言してきた。
「日本の残業の震源地は永田町」
衆議院改革実現会議で提言する小室氏。
撮影:横山耕太郎
総会では、国家公務員の働き方に関するアンケートを実施したコンサル企業・ワークライフバランス社長の小室淑恵氏が、官僚が長時間労働を強いられている大きな原因の一つが、国会対応だと説明した。
「これまで民間企業の働き方に関するコンサル業務をしてきたが、成果が出にくい企業は行政とのやり取りが多い企業だった。
深夜のメールや短納期の発注、大量のハンコや書類の要求など、国会議員に官僚が要求されたことを、今度は官僚が企業にしてしまう。日本の生産性の低下、残業の震源地は霞が関であり永田町だ」(小室氏)
本来、国会での質疑は、2日前までに国会議員が通告するのがルール。しかし、実際には質問通告が前日になることが多く、そのためどの部署への質問があるか分からず、結果的に関係のない職員も深夜まで待機を余儀なくされている。
ワーク・ライフバランスが実施したアンケートには以下のような声が寄せられた。
・政策を考える時間を最も阻害したのが、議員対応(厚生労働省の40歳代)
・通告を一度した後、何度も差し替え、時には前日午後10時や、休日など、非常識な時間に行うことも多い(内閣官房)
・午後10時を超えても通告を出さず、全省庁が待機させられた(文部科学省)
質問通告の時間、公表を提言
出典:ワーク・ライフバランス
質問通告の時間については、政党でばらつきがある。
同社のアンケート調査(2021年3月実施)では、官僚に対し質問通告が遅い政党についても質問。所属する国会議員の質問通告が遅い政党は「立憲民主党」が70票で最も多く、「共産党」が61票、「自由民主党」が5票と続いた。
小室氏は官僚の残業を減らすための提言として、質問通告の方法を、FAXなど紙でのやり取りから専用サイトに入力する方法に変更し、通告の時間や質問内容を公開するべきだとした。
「国家公務員の残業で、国民の税金が使われている。官僚の残業代だけで102億円、帰宅が終電後になるためタクシー代として22億円の税金が使われているのが実態。コロナ禍で給付金など税金への問題意識が高まっているなか、国会ではおかしなことが起きていると知ってほしい」(小室氏)
官僚の働き方「選挙の争点に」
衆議院改革実現会議で発言する山下・元法相。
撮影:横山耕太郎
総会後、記者への質問に応じた山下氏は、「参加した議員皆が身につまされる内容だった。各党で持ち帰ってもらい今後も協議を続けたい」と話した。
ただ具体的な今後のスケジュールについては、「今国会中にまた(衆議院改革実現会議の)総会を開くのは難しい。次の国会前には衆議院総選挙がある。選挙後に実質的な話ができると思う」とした。
一方で小室氏は、「(官僚の働き方問題を)選挙の争点にして、変化しなければいけないという状況にしていきたい」と話した。
(文・横山耕太郎)