WWDC21の基調講演に登壇したApple CEOのTim Cook氏。
出典:アップル
アップルは6月7日(現地時間)、開発者向けイベント「WWDC21」の基調講演を開催。同社製品の次期OSの新機能や開発者向け情報を発表した。
その中の1つ、iPhoneに搭載される「iOS 15」については新機能が多数発表。一部機能に制限はあるものの、現行のiOS 14に引き続き「iPhone 6s」(2015年9月発売)以降の機種がアップデート対象予定となっている。
なお、iOS 15は開発者向けには発表直後からプレビュー版を公開。その後、7月にはパブリックベータ版、今秋には正式版が提供される見通し。
今回はそんなiOS 15の新機能の中で日本語環境でも使える注目の5つの機能を紹介しよう。
1. Zoom対抗か、「FaceTime」がAndroid/Windowsからの参加も可能に
写真の右の端末がAndroidであることに注目。FaceTimeのスケジュールリンクをAndroidやWindowsユーザーに共有して参加してもらえるようになる。
出典:アップル
今回発表になったいずれの機能も、アップルのハードウェアやソフトウェア、サービスを組み合わせた“アップルらしい”ものだが、新機能「FaceTime Link」は別格だ。
FaceTime Linkは、アップルのビデオ通話機能「FaceTime」を事前にスケジューリングし、相手に招待できると言うもの。
既存のFaceTimeとの違いは、事前予約ができると言う点もそうだが、招待の方法にApple IDや電話番号で指定するだけではなく、専用のURLを発行することで、AndroidやWindowsユーザーも、ビデオ通話に参加できるようになった点が大きい。
「Zoom」や「Google Meet」などといったビデオ会議ツールは、コロナ禍でに必要不可欠になった。利便性として、これらや今の世界の流れを強く意識したアップデートといえる。
FaceTime Linkはカレンダーアプリとも統合されており、カレンダーから通話予定を作成、URLを発行できる。
出典:アップル
なお、アップル端末以外のユーザーがFaceTimeに参加する際の制限も、公式サイトの注釈では明らかにされている。特に追加アプリなどは必要なく、H.264のビデオエンコーディングに対応したChromeもしくはMicrosoft Edgeブラウザーが対応する。
FaceTimeは、ビデオ会議やウェビナーの機会が多いIT系の業界関係者の中では音質や画質に定評がある。FaceTime Linkを用いたとしても、同じ品質が提供されるかは注目したい。
2. Siriが待望の“オフライン動作”に対応
機内モードのSiriにタイマーのセットをお願いしているところ。
出典:アップル
アップルによると毎月6億台以上のiPhoneやiPad、Macで使われている音声アシスタントの「Siri」。
A12 Bionicチップセットを搭載したiPhone XS/XS Max/XR(2018年9月発売)以降の機種であれば、半導体に内蔵したNeural Engineのみを使って、端末上だけでの音声認識、言語処理が可能になる。
飛行機内などオフライン環境でもタイマーやアラーム、アプリの起動、音楽コントロールなどの指示ができることになる。また従来どおりネットにつながったオンライン環境であれば、より高速でフル機能の音声アシスタントを使える。
3. もうAirPods Proをなくさない。「AirTag」風の紛失防止
AirPods Proも「探す」アプリおよびネットワーク上で探索可能になる。
出典:アップル
iOS 15の「探す(Find My)」アプリでは、AirPods ProおよびAirPods Pro Max向けの機能強化が図られている。
具体的には、世界で10億台以上あると言われるiPhone、iPad、Macといったアップル製デバイスのネットワークを利用し、大まかな場所を特定できる。
また、基調講演では音を出すことで位置を特定するほか、画面上で離れた場所か、すぐ近くにあるのか…といった画面表示で探せる機能も公開された。
写真左がAirPods Proをビジュアルで探しているところ、右がAirTagを探しているところ。
出典:アップルおよび編集部によるスクリーンショット
画面表示で近くのAirPods Proを探す機能は、4月に発売した忘れ物タグの「AirTag」で実装された、iPhoneからのAirTagまでの方向や距離を表示する機能と似ている。AirPods Pro/Pro Maxのどちらにもその機能の由来となるApple U1チップは搭載していない。
公開された映像を見比べると、AirPods Proがある方向や具体的な距離までは表示していないため、あくまでも“AirTag風の探す機能”と見た方が良さそうだ。
4. シチュエーションごとに対象を変えられる「集中モード」が追加
シチュエーションごとにアプリの通知や着信を制御できる機能が搭載される。
出典:アップル
iOS 15では、「集中モード(Focus)」という、デジタル機器からユーザーの集中力を守る機能(詳しくはDigital Wellbeingという概念を参照)が追加された。
既に既存のiOSでも「おやすみモード(Do Not Disturb)」があり、オンになっている間は通知を完全に切ったり、よく使う連絡先以外からの着信を無視したりはできた。
集中モードでは、ホーム画面も専用のものをカスタマイズできる。
出典:アップル
新たな「集中モード」も「おやすみモード」も根本に流れる考え方は同じだが、「仕事に集中したい時はメールやSlackの通知と同僚や上司からの着信だけ許可」「趣味に没頭したいときは、Twitterの通知や友だちからの着信だけ許可」など、シチュエーションごとにプリセットを持てる。
たくさんのアプリや連絡先が保存されていると、こういう類の設定は正直わずらわしく感じるものだが、iPhoneはデバイス上でユーザーの動作を分析し、シチュエーションごとに許可をすべき最適なアプリや連絡先を提案する。
ほかのアップル製品でも、集中モードは自動で適用される。
出典:アップル
なお、集中モードはiOS 15と同時発表されたiPadOS 15や新バージョンのmacOS Montereyでも搭載される。さらに、同一のApple IDに紐づけている場合は、いずれかの端末で集中モードを操作すると、すべての端末が連動してモードが切り替わる。
5. Apple IDの復旧が簡単にできる「復旧用の連絡先」
Apple IDを忘れがちな家族や親戚の再設定がラクに。
出典:アップル
最後に、iOS 15というより、Apple IDの機能にはなるが、家族もiPhoneやiPadを使っている場合に便利な機能が追加される。
現在、Apple IDのパスワードを忘れて、アカウントがロックされてしまった時は、他のデバイスでの認証や復旧キーの入力などやや煩雑な手続きが必要だった。
しかし、iOS 15を契機に、「復旧用の連絡先(Recovery Contact)」として家族や友だちなど信頼できる連絡先をあらかじめ指定しておき、トラブルが発生した際はその人たちに電話をかけ、再ログインに必要なキーを教えてもらえるようになる。
サポートが必要な家族がいる場合などに非常に便利な機能だと言える。
iOS15の対応端末一覧。
出典:アップル
なお、iOS15はiPhone 6sや第1世代のiPhone SEといった古い端末でもアップデートに対応することをアップルは明かしている。
(文・小林優多郎)