戦闘機F/A-18F(右)に空中給油する無人給油機MQ-25。
Courtesy photo/Boeing
- アメリカ海軍は6月7日、ドローンによる戦闘機への空中給油に成功したと発表した。
- 6月4日、ボーイングMQ-25がF/A-18スーパーホーネットに空中給油を行った。
- 海軍が戦い方を変えつつある中、給油ドローンは艦上戦闘機の戦闘範囲の拡大に貢献するだろう。
アメリカ海軍は6月7日、無人空中給油機による艦上戦闘機への空中給油に成功したことを発表した。
アメリカ海軍によると、6月5日、イリノイ州マスコウタにあるミッドアメリカ空港近くでボーイングMQ-25スティングレイのテスト機がF/A-18スーパーホーネットへの空中給油を行い、無人給油機による空中給油任務が遂行可能であることを実証した。
適切な速度と高度で飛行しながらF/A-18はMQ-25試験機の20フィート(約6m)後方につけた。そしてMQ-25は、空中給油システム(ARS)から給油ホースとドローグ(給油装置)を戦闘機まで伸ばし、燃料を補給した。
今回の「無人航空機と攻撃兵器プログラム」の指揮を執ったブライアン・コーリー(Brian Corey)少将は「MQ-25は今後の海軍航空機の航続距離と耐久性を大きく向上させるだろう」と声明で述べた。
MQ-25は、世界初の空母搭載ドローンだ。これは空母に諜報、監視、偵察能力を追加するだけでなく、艦載航空機の行動範囲を大きく広げることが期待されている。アメリカの競合国の能力が強化されていることを考えると重要なことだ。
中国がアメリカ海軍の脅威となり得る対艦ミサイルを増強していることで、アメリカ海軍は空母の使い方を慎重に検討せざるを得ない。
最大1万5000ポンド(約6.8t)の燃料を積載可能なMQ-25のような無人空中給油機によって、海軍は空母を危険なエリアに侵入させる、敵と距離をとりながら有人戦闘機を飛行させて戦うことができる。
無人輸送機プログラムのマネージャーを務めるチャド・リード(Chad Reed)大佐は「今回の空中給油テストは、海軍にとって重要でエキサイティングな瞬間であり、MQ-25の能力を艦隊で活用するための明確なステップを示している」と述べた。
さらにMQ-25は、F/A-18だけでなく、EA-18Gグラウラー電子戦機やステルス戦闘機のF-35CライトニングⅡにも対応するようになる。
F/A-18スーパーホーネットに空中給油するMQ-25スティングレイ。
Courtesy photo/Boeing
アメリカ海軍は2018年8月、MQ-25空中給油機についてボーイングと8億500万ドル(約881億円)の契約を結び、1年後の2019年9月に初フライトを実施した。
MQ-25は2020年12月、主要ミッションに必要な空中給油装置を搭載して、初めてのフライトを行った。今回のテストは、機体や給油技術のテストとシミュレーションを行った、試験1号機(T1)での25回におよぶテスト飛行に続くものだ。
ボーイングによると、試験飛行は継続され、2021年後半には試験機をバージニア州ノーフォークに送り、空母でのデッキハンドリング試験を行うという。
ボーイング防衛・宇宙・セキュリティ部門のリアン・キャレット(Leanne Caret)社長兼CEOは「この歴史的な成功は、MQ-25による空中燃料補給をできるだけ早く実現しようと取り組んでいる、ボーイングと海軍の共同チームの功績だ」と声明で述べた。
海軍はMQ-25を空母航空団に組み込み、2024年までに初期運用能力を達成する予定だ。またニミッツ級やフォード級のすべての空母をMQ-25に対応させる計画だ。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)