ファイザー・ビオンテック製のワクチン。
REUTERS/Carlos Osorio/File Photo
AGCは6月8日、バイオ医薬品の受託製造(CDMO)を手がける子会社AGC Biologicsが、新型コロナウイルスに対するワクチン「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine」(日本名:コミナティ)の原材料となる「プラスミドDNA」の製造を受託したことを発表した。
コミナティは、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンで、いわゆる「mRNAワクチン」だ。
日本では、2021年2月に国内初のワクチンとして特例承認され、6月7日段階で1600万回以上の接種が完了している。2021年中には、ファイザー・ビオンテック製のワクチンが合計1億9400万回分供給される見込みとなっている。
世界でもその存在感は際立っている。
ファイザー広報によると、6月3日時点で、すでに6億4000万回以上のワクチンを世界中に出荷しており、2021年末までに合計25億回以上のワクチンを製造できる見通しだという。
ワクチンの「要」を製造
ワクチンの要となる「mRNA」とは、DNAに似た「遺伝物質」の一種。
AGCが製造を受託したプラスミドDNAは、ワクチンの要となる「mRNA」を製造するのに必要な物質だ。
mRNAワクチンは大まかに言えば、mRNAを脂質などの膜に包んだ状態で細胞に届けることで、細胞内で新型コロナウイルスのタンパク質の一部をつくり出す。これにより、私たちの体は新型コロナウイルスに対する免疫を獲得することができる。
AGCの広報はBusiness Insider Japanの取材に対して、
「製造量については秘密保持契約のために公開していませんが、日本でも打つようなワクチンでもあるため、貢献していきたい」
と語った。
AGCは、新型コロナウイルスのワクチン開発において、臨床試験用ではあるものの米ノヴァヴァックスが製造するワクチンのアジュバント(免疫を活性化する物質)や、日本のアンジェスが開発しているDNAワクチンの中間体の製造(タカラバイオから受託)にも関わってきた。
ガラスメーカーとしてのイメージが強いAGCだが、近年、医薬メーカーが開発した医薬品の製造を、製造プロセスの開発から請け負う「CDMO」事業に力を入れており、特にバイオ医薬品に関連した分野で存在感を放っている。
(文・三ツ村崇志)