ソフトバンク傘下+Styleに聞く、国内スマート家電市場の現在地

電球、扇風機、コーヒーメーカー、ベルト、耳かき、約18万円の折りたたみスマートフォン。

これらすべてを取り扱っているのが、ソフトバンク傘下のIoTメーカー「+Style(プラススタイル)」だ。

自社ブランドのスマートホーム機器も展開しているが、なぜここまで幅広い商品群を扱うのか。その意図を社長の近藤正充氏に聞いた。

「量販店で売っているものを扱ってもしょうがない」

motorola razr 5G

折りたたみ型スマートフォン「motorola razr 5G」(写真はソフトバンク版)。

撮影:小林優多郎

まず、スマートフォンを追いかけてきた筆者にとって非常に印象的だったのは、3月19日にプラススタイルが発表した「motorola razr 5G」の限定カラーの取り扱いだ。

motorola razr 5Gは、2020年9月にモトローラが発表した5G対応の折りたたみスマホで、日本ではSIMフリー版とソフトバンク版が2021年3月26日に発売。その珍しい機構もあり、直販価格17万9800円(税込)となかなかの金額だ。

motorola razr 5Gを持つ近藤氏

motorola razr 5Gの限定色「Blush Gold(ブラッシュゴールド)」版を持つ近藤正充氏。

出典:プラススタイル

プラススタイルは以前からSIMフリースマホを取り扱っていたが、直近ではメーカーの直販サイトなどで売られているモデルも多かった。

だが、razr 5Gについては、メーカーや親会社のソフトバンクにはない“限定色”の販売を決めた。

Android端末としては高価な価格設定から、あまり量の出ない製品なのに加え、他社にはないゴールドモデルの独占販売を決めた経緯を、近藤氏は「量販店で売っているようなものを扱ってもしょうがない」と話す。

「ほかで売っているものであれば、ほかで買ってもらえればいい。独占ということで非常に手応えは感じている。

それに、古い(編集注:フィーチャーフォン時代の)razrを知っている人であれば、(欲しい色は)ブラックじゃないだろう、と」

プラススタイルは2016年に当時では珍しい「クラウドファースト」をうたった米Nextbitのスマートフォン「Robin」(税別3万9980円)も扱っている。プラススタイルによると、このRobinの売り上げは、プラススタイルの中でも歴代1位だという。

スマート家電の引き合いは一般層に

ホームセンター

「DCMホーマック厚別東店」に展開されたスマート家電コーナー。

出典:プラススタイル

Robinもrazr 5Gもどちらか言えば、“尖った”ものが好きなイノベーター層向けの製品だ。そのような人以外、いわゆる一般層に向けた製品が同社のオリジナルブランドのスマート家電群だ。

近藤氏は日本のスマート家電市場を「広がりは諸外国と比べてまだ小さい」としつつも、コロナ禍での家中需要もあり、伸び率は堅調だと語る。

「(日本市場が小さいのには)理由がいくつかある。日本人は(アメリカ人などと比べて)なかなかDIYが得意じゃないとか、家を工事しないとかだ。

ただ、2020年前半くらいからIoT機器が最初から搭載された賃貸物件が登場するなど注目度は上がっている。また、(プラススタイルの)電球なら既存のものを取り替えるだけで、照明をスマート化できる」

また、同社では主に自社サイトやアマゾン、楽天などのネット通販が主な販路となっているが、実店舗での体験にも力を入れているという。

一部のソフトバンクショップの他にも、北海道などで展開するホームセンター「DCMホーマック」と組んで、DIY製品などと並べてスマート家電の特設コーナーを設置しており、近藤氏は「ご好評いただいている」と話した。

攻める2021年、他社との連携を強化

近藤氏

他社との連携について語る近藤氏。

撮影:小林優多郎

プラススタイルは2021年、「これまで以上に攻める年」であると近藤氏は語る。既にリリースされているものもあるが、製品数を増やすだけではなく、他者とのアライアンスも重要視していくという。

「スマートホームジャンルでは“面”をとる。値段も安くして、IoT製品らしからぬ価格で、アドバンテージをとっていく。他社との連携にも力を入れる」

他社との連携の具体例としては、既に実施済みのpopInのシーリングライトとプロジェクターが一体となった「popIn Aladdin」を挙げた。

popIn Aladdinは音声での操作について、別売の独自音声リモコン経由で独自のコマンドにのみ対応しており、GoogleアシスタントやAmazon Alexaといった外部のアシスタントからは操作できない。

スマートマルチリモコン

スマートマルチリモコン(写真左)とpopInのプリセットを入れた画面(右)。

撮影:小林優多郎

しかし、プラススタイルはpopInと連携し、Aladdinの赤外線リモコンのデータを直接受け取り、プラススタイルの「スマートマルチリモコン」に組み込んだ。結果、スマートマルチリモコン経由で、グーグルやアマゾンの音声アシスタントの利用が可能になっている。

筆者は、過去にスマートマルチリモコンを含め、家内をスマート電球やシーリングライトをプラススタイルの製品で揃えている。1つのアプリで管理ができ、アプリ内でかんたんに“自動化”の設定ができるからだ。

2021年の新製品として、オリジナルブランドの新型のスマートセンサーやこれからの時期に人気が出る「スマート扇風機」(5月13日発売、直販価格1万4980円)も登場しており、着々と取り扱いジャンルを広げている。

スマート電球

筆者の自宅でも活躍しているプラススタイルのスマート電球。

撮影:小林優多郎

近藤氏は今後の具体的な業績目標については語らなかったが、「3年後ぐらいには、両親から(スマートホームについて)聞かれるようになるのが目標」と話す。

「(フィーチャーフォンからスマホへ移る過程で)スマホってどうなの?と(両親から)聞かれたときに、スマホがそこまで広がってきたのだと感じた。市場に広がるっていうのがこういうことだという実感が当時あり、スマート家電もそこまでいけるようがんばりたい」

(文・小林優多郎

編集部より:初出時、+Styleについて「ソフトバンク子会社」としておりましたが、正しくはグループ傘下の企業です。お詫びして訂正致します 2021年6月11日 11:36

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