木星を周回するジュノーのイメージ図。
NASA/JPL-Caltech
2016年7月から木星の探査を続けているNASAの木星探査機「ジュノー(Juno)」が目覚ましい成果をあげている。
今年1月には、当初7月31日に木星に落下する予定だったジュノーのミッション期間が、最長で2025年9月まで延長されることも発表された。
今後は木星だけではなく、木星の輪(土星の輪のようにはっきり見えるものではないが、木星にもうっすらと輪がある)や、木星にとっての「月」である衛星のガニメデ、エウロパ、イオなどの観測も実施する予定だ。
6月8日(日本時間)、ジュノーはさっそくガニメデから約1000kmの距離まで近づき、その鮮明な姿を捉えた。探査機がガニメデに接近するのは、2000年の木星探査機「ガリレオ」による接近以来、実に21年ぶりだ。
ジュノーのサイエンスチーム・主任研究者のスコット・ボルトン氏は、
「この巨大な衛星ガニメデに、ここまで接近したのは史上初だ。データの詳細な解析はこれからだが、今はただこの圧倒的な天体の神秘を味わっていたい」
とコメントしている。
送られてきたばかりのガニメデの写真をはじめ、ジュノーが捉えた木星の圧巻の姿を見ていこう。
ジュノーが捉えた「ガニメデ」。太陽系最大の衛星で、表面は氷で覆われ、その下には海が広がっていると考えられている。
ジュノーのフライバイ時にJunoCamで撮影した画像。クレーター、断層、表面の光の反射率の違いがよくわかる。木星の衛星であるガニメデとエウロパへの探査計画が進行中で、2020年代前半にNASA、ESAからそれぞれ探査機が打ち上げられる予定だ。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
木星は「巨大ガス惑星」で、地球のように固体の地表面をもたず、水素・ヘリウム・アンモニアなどを成分とする大気をまとっている。「大赤斑」とよばれる赤い大きな渦は、直径が地球1.3個分にもなる巨大な高気圧だ。
以前、木星の特徴である赤い渦「大赤斑」の幅は、地球2〜3個分もあった。近年、縮小している。
NASA/SwRI/MSSS/Filippo Galati
ジュノーは木星大気の3次元構造を調べている。大赤斑は「厚み」が300kmもあることがわかった。
JunoCamの画像と風速のデータから作られたシミュレーション映像。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstadt/Justin Cowart
木星の渦は日々ダイナミックに変化している。木星は10時間で自転しているが、この高速の自転が乱気流やジェット気流を生み出す。
大赤斑の右下にある渦「Clyde's Spot」の前後比較。渦の寿命は短く、すぐに消えてしまうと考えられていたが、この渦は同じ地点に居座り、しかも大きく発達したことがわかった。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gill
ジュノーは木星の北極・南極の上を通過する軌道で周回している。史上初めて捉えられた木星の北極には、多数の渦があることがわかり、「木星といえば縞模様」という今までのイメージを打ち砕いた。
木星の北半球。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gill
木星の極域にある渦を作り出す強い風は、木星表面下3000kmほどでも吹き続けており、これによって大気がかき混ぜられているようだ。同じ巨大ガス惑星である土星の北極や南極には、こういった渦は見られない。
JunoCamの画像を彩色加工したもの。木星の北極や南極には多数の渦が集合している。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Emma Wälimäk
北極・南極のオーロラを調べることも、ジュノーの探査目的のひとつだ。夜明けに発生するリング状のオーロラからは、何千ギガワットもの非常に強い紫外線が出ていることがわかり、研究者たちも驚いている。
紫外線のオーロラ(紫外線を可視化している)。地上の望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡、探査機ボイジャーなどでもオーロラの一部は観測されていたが、木星の近くに寄って全体像を捉えたのはジュノーが初めて。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/UVS/STScI/MODIS/WIC/IMAGE/ULiège
ローマ神話で「ジュピター」は「雷神」だ。木星の雲の中では放電現象が起こっている。ジュノーは雲頂で発生した雷を初めて捉えた。
雷の想像図とジュノーの実際の観測画像(左下)。このような雲の上層部で起こる雷は「shallow lightning」とよばれ、注目されている。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstädt/Heidi N. Becker/Koji Kuramura,(左下) NASA/JPL-Caltech/SwRI
6月8日には、木星の四大衛星(ガリレオ衛星)のひとつであるガニメデの近くを飛行し、さっそく画像を送ってきた。
ジュノーのStellar Reference Unit navigation cameraで撮影した、ガニメデの太陽と反対側の面。JunoCamの画像などと合わせてガニメデの謎に迫ることができる。
NASA/JPL-Caltech/SwRI
(文・小熊みどり)