オーロラ発生のメカニズムを証明…電子のサーフィンをシミュレート

2018年10月7日、フィンランド・ラップランドのロヴァニエミ近郊の空に浮かぶオーロラ。

2018年10月7日、フィンランド・ラップランドのロヴァニエミ近郊の空に浮かぶオーロラ。

Alexander Kuznetsov/Reuters

  • 研究者らは、オーロラ・ボレアリス(北極光)が空に形成される仕組みを初めて証明した。
  • 太陽から発せられた電子は電磁波からエネルギーを得て、ヒッチハイクをするように地球に向かってくる。
  • 電子は最終的に原子や分子と衝突し、鮮やかな光のショー、つまりオーロラを発生させる。

オーロラがどのようにして空に光のスペクトルを放つのか、長い間証明されていなかった。

だが、ずっと以前から有力とされていた1つの仮説がある。まず、太陽の爆発現象によって荷電粒子が放出され、太陽風が発生する。その粒子が、地球の磁場によって制御された領域である磁気圏と相互に作用する。磁気圏では強力な電磁波が地球の表層に向かって流れており、電子はこの波に乗って移動し、地球上層の大気にたどり着くと、原子や分子と衝突し、オーロラを発生させ、光のショーを繰り広げる、という仮説だ。

これを証明するのに研究者らは何十年にもわたって苦心してきた。というのもこの現象が発生する宇宙空間はあまりにも広大で、研究室の中では再現できず、宇宙船からは電子と電磁波をそれぞれの別々の高度でしか測定できないからだ。

だが研究者は、ついに真空チャンバーの中でオーロラの発生条件をシミュレートすることに成功し、その結果に基づく新たな論文で、これまでの仮説が正しかったことを報告した。アルベーン波という電磁波にエネルギーを与えられた電子が、その波に乗って地球の方向へと加速するのだ。その速さは最終的に時速7200万キロメートルにまで達する。

「このような波が、オーロラを生み出す電子にエネルギーを与えるという仮説は、40年以上前からあったが、今回、初めてはっきりと立証された」とアイオワ大学の物理学教授で、論文の共著者であるクレッグ・クレッチング(Craig Kletzing)は声明で述べている。

オーロラが空を照らす様子を示したモデル。

オーロラがどうように空を照らすかを示したモデル。

Austin Montelius/University of Iowa

巨大な真空チェンバーで「電子のサーフィン」を再現

ロシアの物理学者レフ・ランダウ(Lev Landau)は、1946年に「電子は、電磁波をサーフィンするようにして速度を得る」という理論を初めて提唱した。このプロセスは現在、「ランダウ減衰」として知られている。クレッチングは、約20年前にこの理論を検証しようとしたが、そのためには地球の磁気圏を再現する必要があった。

そこで彼はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にある大型プラズマ装置を用いることにした。それはアルベーン波を発生させるのに十分なプラズマ(星間物質の大部分を占める電離ガス)を作り出せる長さ約20メートルの真空チャンバーだ。

「この実験は数年かかると考えられていたが」とアイオワ大学のグレゴリー・ハウズ(Gregory Howes)准教授はInsiderに語っている。「実際には実験室でのシミュレーションは、当初の予想よりもはるかに難しいことが分かった」

アルベーン波をチャンバー内で発生させた後、研究者らは、波とほぼ同じ速度で動く電子の小さなグループを見極める必要があった。これは、電子が波に乗って速度を増すことを示す指標となる。だが、そのような電子は1000個中に1個以下しかなく、見つけるのは至難の業だった。

「この現象が実際に起っていることが実験室で証明されたことは一度もなかった」とハウズは言う。

「そのため、この理論的概念が実現することを、実際のプラズマで示すことが大きな挑戦だった」

最終的に、電子がサーフィンをするように加速して鮮やかなオーロラが発生させることが、シミュレーションによって示され、数学的モデルでも確認された。

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