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「医療面以外の健康格差」が顕著に。米デジタルヘルスケア企業の戦略を分析:eMarketerレポート

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(写真はイメージです)

Shutterstock.com/smolaw

  • この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)」のプレビュー版。

新型コロナウイルスのパンデミックが発生したとき、すでにアメリカの医療業界は「慢性疾患の増加」「医師の疲弊」「人材不足」など多くの問題を抱えていた。追い討ちをかけるように起きたコロナ危機では、社会のなかでも最もリスクに対して脆弱な人々が大きな打劇を受けた。

健康格差の拡大に伴い、保険者や医療提供者は、考慮すべき「健康状態を左右する因子」の範囲を拡大。所得や健康的な食事などの「健康の社会的決定要因(SDOH:Social determinants of health)」を含めるようになっている。

SDOHの問題に、テクノロジーやデジタルトランスフォーメーションはどう関わってくるのだろうか? 以下では、ヘルスケア分野のプレイヤーに対するIT企業のサポートや、これらの取り組みへのパンデミックの影響について解説する。

「健康の社会的決定要因(SDOH)」とは何か

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コロナ禍で低所得者世帯が直面した、健康不良に繋がる問題。「経済的不安定」「食べ物の不足」「雇用」「医療へのアクセス」など。

Business Insider Intelligence

SDOHとは、交通手段や栄養価の高い食品へのアクセスなど、健康に直接・間接的に影響を与える医療以外の経済・環境条件のことを指す。SDOHに関する分析によると、これらの条件によって健康格差が生まれ、特定集団ごとの健康状態が大きく変わってくるという。

健康状態を決定づける要因の割合は、医療機関によるケアが約10~20%、SDOHが80~90%とされる。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「健康の社会的決定要因」として以下のような例を挙げている。

  • 仕事・収入
  • 交通
  • 手頃な価格で住める住宅
  • 教育(幼児教育と高等教育の両方)
  • 健康的な食事
  • 地域の医療環境(緊急医療サービス・診療所など)
  • 医療保険
  • 地域の公園や運動場
  • 社会的な統合
  • 差別

SDOHの業界トレンドとコロナの影響

上記のような「医療面以外から生じる健康格差」はパンデミックによって広がり、健康状態が悪化する人が増えた。こうしたなか、ヘルスケア関連企業はSDOH関連の最新統計に目を向け、そこから学ぶことを迫られている。

パンデミックの期間中、アメリカのほぼすべての州で「補助的栄養支援プログラム(SNAP:政府による低所得者向けの食費補助)」の利用者が増加した。コロナ危機で特に深刻な打劇を受けているのが、高齢者、ヒスパニック系、アジア系、先住民、アフリカ系など特定の集団だ。

こうした不均衡の是正にビジネスチャンスを見出しているのがデジタルヘルスベンダーだ。これらの企業は、関係者が協力して問題解決に取り組めるよう、必要なツールを提供。医療関連の組織はこれらを活用しながら地域と連携し、患者への支援サービスの提供や、健康リスクの評価を行っている。

また、「予防可能な慢性疾患の増加」「(医療や薬剤の効果を料金に反映する)バリューベース・ヘルスケアへの移行」「デジタルヘルスに対する消費者の関心の高まり」を背景に、保険者や医療機関はSDOHにフォーカスしたソフトウェア開発企業と協業するようになっている。

SDOHテクノロジーの事例

先端的なコンピューター技術を有するIT企業やデジタルヘルス企業は、ヘルスケア分野の既存プレイヤーがSDOHデータを理解し活用できるようサポートしている。デジタルプラットフォームやSDOHスクリーニングツールを使うことで、医療関係者は患者とやり取りをしたり、さまざまなデータをひとつの場所に集約できる。またアルゴリズムを活用して、患者個々人に合った対処法を提案できるようになる。

インサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「健康の社会的決定要因(SDOH)」では、2つのスタートアップによるサービスを紹介している。

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シティブロック・ヘルスの提供するCommonsプログラムでは、個々の患者の状況や、医療関係者とのコンタクト履歴などをタイムラインで追えるようになっている。

Cityblock Health

  • シティブロック・ヘルス (Cityblock Health):電子カルテ(EHR)と統合した同社のシステムは、患者の健康を損ねている可能性がある社会的障壁にフラグを立てて、病院に行かなければならない状況を回避させる。シティブロック・ヘルスの収益と会員数は、昨年に比べて2倍以上に増加した。
  • ユナイト・アス(Unite Us):同社が開発するソフトウェアは、患者の健康に悪影響を及ぼしている社会的要因を洗い出し、改善に向かうためのリソースを紹介する。同社がルイジアナ州で展開する「ユナイト・ルイジアナ(Unite Louisiana)」には、CVSヘルス(CVS Health:ドラッグストア運営をはじめとする総合ヘルスケア企業)、オックスナー・ヘルス(Ochsner Health:医療機関)、ヒューマナ(Humana:保険会社)などが新たにパートナーとして加わっている。

SDOH戦略に参加している企業

近年はIT企業もヘルスケア分野に参入しており、ウェアラブルデバイスや医療機関への送迎など、さまざまなサービスを展開している。グーグル、アマゾン、アップル、ウーバー(Uber)、リフト(Lyft)といったアメリカの大手IT企業は、健康増進を目指す保険者と患者をテクノロジーでサポートしている。

例えば、グーグルが2019年11月に公開した機械学習を使った「Healthcare Natural Language API」は、SDOHデータのなかから情報を抽出し医師が治療に使いやすくする。Fitbitが傘下に入ったことで、グーグルが手がけるSDOH関連プロジェクトの幅はさらに広がりそうだ。

ウーバーとリフトは、交通手段の不足の解消に一役買っている。確実な交通手段がないために予約した日に病院に行けなかったり時間に間に合わない患者は多く、これが原因でアメリカの医療システムには年間で推定1500億ドル(約16兆4500億円)ものコストが生じている。

ウーバーとリフトは医療機関と提携し、患者の予約時間に合わせた配車サービスを提供している。こうしたパートナーシップは、患者と保険者の双方にメリットをもたらしている。

リフト:「メディケア・アドバンテージ(Medicare Advantage:高齢者、障害者、慢性疾患を持つ人が加入できる公的医療保険)」と「メディケイド(Medicaid:低所得者向けの公的医療保険)」に加入する患者への医療提供を特定の州で行っているケアモア・ヘルスシステム(CareMore Health System)は、患者の送迎のためにリフトと提携したところ、年間で100万ドル以上のコストを削減できた。

ウーバー:ボストン・メディカルセンター(Boston Medical Center)も、ウーバーの「非救急の病院送迎(NEMT)」サービスを活用することで50万ドルの交通費を節約できたと報告している。

SDOHがヘルスケアの未来に与える影響

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保険者や医療機関が加入者や患者のSDOHを改善するために行っていること。「支援サービスの提供」「地域の支援団体との連携」「健康リスクの洗い出し」などが挙げられている。

Business Insider Intelligence

SDOHデータ活用の機運が高まったことで、医療機関や保険者は健康増進に役立つ情報やサービスを患者に提供するようになっている。こうした仕組みを確立する上で、重要な役割を果たしているのがIT企業だ。

この5年間で、医療分野の既存組織はSDOH関連のデジタルプログラムの導入を進めており、今後もこの傾向は続くと思われる。2020年にはアメリカの保険者の93%、そして病院の95%が、患者とのコミュニケーションの際にSDOH情報を集めていた。

「健康でいられるよう患者を支援し、必要なリソースに繋げること」の重要性を、既存の医療関係者が認識するようになった背景にはさまざまな要因がある。その根底には医療業界全体で「症状が出てから治療する」よりも「予防医療」にシフトしていこうという流れが生まれていることと、デジタルヘルス技術の受容が進んでいることがある。

インサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「健康の社会的決定要因」では、医療業界でSDOH関連の取り組みが増えている要因について解説。関連サービスを提供しているヘルステックのスタートアップを紹介し、ヘルスケア分野に参入しているIT企業の動向に触れる。また、SDOHプロジェクトの成功を阻む障壁についても論じる。

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[原文:Social Determinants of Health: Technology, examples and healthcare trends in 2021

(翻訳・野澤朋代)

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