- ボリビアにはかつて、チャカルタヤ・スキーリゾートがあった。世界で最も高い場所にあるスキーリゾートだった。
- 2009年には、1万8000年前から存在していたと考えられる氷河が消滅し、付近はゴーストタウンと化した。
- 2015年にこの地を訪れた旅行者のAleah Taboclaonさんは、この旅行が気候変動の危機に目を向けるきっかけになったと、Insiderに語った。
ボリビアは長年にわたって「世界一高所のスキーリゾート」がある場所というタイトルを保持していた。
Atlas Obscuraによると、チャカルタヤ・スキーリゾートは1930年代にオープンした。
その最盛期には、ボリビアにいくつものタイトルをもたらした。Atlas Obscuraによると、チャカルタヤ・スキーリゾートはボリビア唯一のスキーリゾートで、世界一高所のスキーリゾートとレストランでもあった。
チャカルタヤ氷河の上につくられたこのリゾートは、海抜1万7519フィート(約5300メートル)に位置していた。これは世界最高峰エベレストのベースキャンプよりも高いと、Atlas Obscuraは伝えている。
ギネス世界記録によると、このリゾートのレストランも世界一高所のレストランだった。
ボリビアや世界中の旅行者たちがチャカルタヤ・スキーリゾートで休暇を過ごしていた。
2006年3月11日。
REUTERS/David Mercado
Atlas Obscuraによると、チャカルタヤ・スキーリゾートはここから1時間半ほどの距離にある主要都市ラパスの中流階級や上流階級の住民を引き付けていたという。
2000年代に入るまではスキーヤーが楽しめる雪が十分あったため、ほぼ通年で営業していた。
しかし、2009年までに氷河は消え、観光客も姿を消した。
「気候変動」「今すぐ行動を!」「コペンハーゲンを忘れるな」などと書かれたサインを掲げるデモ参加者たち(2009年)。
Juan Karita/AP Photo
1990年代、科学者たちはチャカルタヤ氷河を研究し始めた。BBCによると、科学者たちは2005年、氷河が2015年まであと10年は存在し続けるだろうと予想した。
ところが、この予想は残念ながら甘かった。2009年、推定1万8000年前から存在していたチャカルタヤ氷河は消失したとBBCが報じた。
山を訪れるスキーヤーも姿を消し、スキーリゾートのリフトは閉鎖された。
こうしてチャカルタヤ・スキーリゾートはゴーストタウンと化した。気候変動がもたらす影響を示している。
David Mercado/Reuters/The Solitary Wanderer
チャカルタヤはゴーストタウンと化した。
Atlas Obscuraによると、スキーリゾートの大部分は放棄されているが、今でもアドルフォ・メンドーサさんとサミュエル・メンドーサさん兄弟がその世話をしているという。Atlas Obscuraによると、2人は時折この地を訪れる人たちが温かい食事にありつけるようシェルターの営業を続けているため、チャカルタヤ・スキーリゾートは"世界一高所のレストラン"というタイトルを今も保持している。
今でも、わずかばかりの冒険好きな観光客がこの地を訪れているという。
真冬には雪が見つかることもあるが、1年の大半は茶色で乾いている。
旅行ブロガーのAleah Taboclaonさんがチャカルタヤ・スキーリゾートを訪れたのは2015年のことだ。今でも山を登った時に感じた悲しみを覚えているという。
Aleah Taboclaonさんは2015年、2カ月半をボリビアで過ごした。その間にラパスからチャカルタヤ・スキーリゾートを訪れたという。
「The Solitary Wanderer」というブログをやっているTaboclaonさんは、約15ドル(約1700円)で車で1時間半のスキーリゾートまで連れて行ってくれるツアーグループに参加したと、投稿している。
このツアーは、ラパス郊外にある「月の谷(Valle de la Luna)」と呼ばれるエリアの観光と組み合わされていることが多いとTaboclaonさんはInsiderに語った。
その高さから、チャカルタヤ山はボリビア国内でも有数の美しい景観が楽しめる場所だという。
Taboclaonさんはツアーガイドから、氷河が溶けたことでスキーリゾートが没落した話を聞いたと話した。
「わたしたちの世界で多くのことが変化しています。スキーリゾートの栄光は全て失われ、もう二度と戻ってこないでしょう」
現地に到着すると、観光は山のふもとからスタートする。ここには今でも放棄されたスキーリゾートが建っている。
ツアーバスは、かつてのスキーリゾートがある、山のふもとでツアー参加者たちを降ろしたとTaboclaonさんはInsiderに語った。
リゾートの中に入ることもできたと言い、トイレだけが残されていたとTaboclaonさんは当時を振り返った。
「見捨てられた雰囲気」があったという。
Taboclaonさんがゴーストタウンと化したこの地を訪れたのは9月で、ラパスは暖かかったものの、標高の高いチャカルタヤは寒かったという。所々に雪もあったが、スキーができるような状況ではなかったと話した。
ボリビア有数の景色を楽しむために、観光客は山のふもとからいろいろな方向へ登ることができる。
Taboclaonさんは高地の影響を強く受けたため、比較的距離の短いところを登ったが、それでも数百フィートは登ったという。
山頂まで登った観光客もいて、そこからはラパスやエル・アルトの街並みやワイナ・ポトシ山の景色を楽しむことができるとTaboclaonさんは語った。
山頂へ向かう途中、観光客は科学者たちが残していった気象設備を目にすることもある。
山を登っていた時、Taboclaonさんは科学者たちが残していったいくつかの設備を目にしたという。
強い風が吹くと、不気味なヒューヒューという音が鳴るものもあったとTaboclaonさんは当時を振り返った。
High Altitude Pathology Instituteによると、スキーリゾートの最盛期には山の気象を監視するために使われていたガラス製のピラミッドも残されているという。
Taboclaonさんは、このツアーが楽しくて冒険心のあるものになるだろうと予想していたが、スキーリゾートの悲しい過去を知って、物悲しい気分になったという。
Taboclaonさんは楽しい1日になるだろうと予想していたという。ところが、スキーリゾートの過去を知って、内省的かつ感傷的な気分になった。そして、この地を訪れたことで、気候変動による危機が自分にとってものすごく現実的なものに感じられたという。
「多くのボリビア人が、世界一高所にあるこのスキーリゾートを誇りに思っていたんです。どうすることもできないという無力感は、本当に悲しいものでした」
残っているのは建物の骨組みだけで、チャカルタヤ・スキーリゾートは気候変動による危機の現実について、世界に警鐘を鳴らしている。
チャカルタヤ・スキーリゾートの建物に描かれたスキーヤーの絵。
Georg Ismar/picture alliance/Getty Images
考えていたような楽しいツアーではなかったものの、Taboclaonさんは素晴らしい経験になったと話している。
ボリビアを訪れたら、ぜひこの地に足を運んでほしいとTaboclaonさんは薦めている。
「わたしたちのこの世界のことをじっくり考えたことがなかった人が、直接それを目にするのに良い場所です」
(翻訳、編集:山口佳美)