マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツ。2018年4月21日撮影。
REUTERS/Yuri Gripas
- ビル・ゲイツが、毎年恒例の夏の推薦図書を発表した。
- 今年は、人間と自然との関係を考察する5冊の本を推薦している。
- リストには、バラク・オバマの回顧録を含む4冊のノンフィクションと、1冊の小説が選ばれた。
ビル・ゲイツ(Bill Gates)は、毎年恒例の夏の推薦図書を発表した。
2021年、ゲイツは読書リストのテーマとして「人類と自然の関係」を挙げている。
「ウイルスによって皆の生活が一変してしまったからかもしれない。あるいは、今年は気候災害を回避するために、我々が何をすべきか話し合うことに多くの時間を費やしてきたたからかもしれない」とゲイツは彼のブログに書いている。
5冊のうち4冊はノンフィクションだが、ゲイツは推薦するすべての本が 「人々が周囲の世界と衝突した時に何が起こるか」を取り上げていると述べている。
『約束の地 大統領回顧録(A Promised Land)』バラク・オバマ(Barack Obama)
Jamie McCarthy/Getty Images
2020年11月に出版された『約束の地 大統領回顧録(A Promised Land)』は、元アメリカ大統領、バラク・オバマ(Barack Obama)のキャリアの初期から、2011年のウーサマ・ビン・ラーディン(Osama Bin Laden)殺害に至るまでの回顧録である。
ゲイツはビデオの中で、「偉大なリーダーシップについての多くの洞察を含んだ力強い本だと思う」と話している。
ゲイツは、読書リストを取り上げたブログ記事の中で、オバマ元大統領が、「ホワイトハウスでの経験についても、最終的に采配を振るう人間がいかに孤立しているかということも含め、正直に語っている」と付け加えている。
「オバマ元大統領のような文章が書ける政治家が増えればいいのだが。『約束の地』は、まるで小説のように読むことができる。なぜなら、彼は個々の出来事をひとつの大きな物語に結びつけることがとても上手だからだ」とゲイツはこの本のレビューで書いている。
『An Elegant Defense: The extraordinary new science of the immune system: A Tale in Four Lives』 マット・リヒテル(Matt Richtel)
著者のマット・リヒテルは、不注意運転のリスクと原因を明らかにした記事で、2010年にピューリッツァー賞を受賞した。
Harper Collins
ゲイツは『An Elegant Defense: The extraordinary new science of the immune system: A Tale in Four Lives(エレガントな防御:免疫システムの驚異的な新化学:4つの人生の物語)』が2019年3月に出版された本であるにもかかわらず、コロナウイルスのパンデミックがなぜ、どのように広がったのかについて答えを探している人にとっては良い本だと考えている。
著者のマット・リヒテル(Matt Richtel)は、健康問題を抱える人々の4つのケーススタディについて書き、免疫システムがどのように機能するかを説明している。
ゲイツはレビューの中で、「我々の免疫システムの驚くべき複雑さと、その働きに内在する繊細で不安定なトレードオフについて、より深く理解することができるようになるだろう」と述べている。
『Lights Out: Pride, Delusion, and the Fall of General Electric』トーマス・グリタ、テッド・マン(Thomas Gryta and Ted Mann)
著者のトーマス・グリタはウオール・ストリート・ジャーナルの記者だ。
Houghton Mifflin Harcourt
『Lights Out: Pride, Delusion, and the Fall of General Electric(ライツ・アウト: プライド、妄想、そしてゼネラル・エレクトリックの没落)』では、ゲイツが 「神話的」と表現するゼネラル・エレクトリック社(General Electric)の栄枯盛衰を描いている。ゲイツは、ゼネラル・エレクトリック社が崩壊した当時、誰よりもショックを受けたと言う。
「元CEOである私にとって、知っている人や好きな人を含むリーダーたちの厳しい批判を読むことは、少し辛いところもあった。しかし、私はこの本を読んで多くのことを得た。トーマス・グリタ(Thomas Gryta)とテッド・マン(Ted Mann)は、私が求めていた文化、意思決定、会計についての詳細な洞察を与えてくれた。そしてそれは最終的にGEを追いつめたのだ」 とゲイツはレビューの中で述べている。
『Under a White Sky: The Nature of the Future』エリザベス・コルバート( Elizabeth Kolbert)
Crown
ゲイツによると、彼のリストにある本の中で、『Under a White Sky: The Nature of the Future(白い空の下で:未来の本質)』は人類と自然との関係を最も端的に扱っているという。
この本では、人類が知らず知らずのうちに環境を変えてしまった例が数多く取り上げられているが、ゲイツは特に、遺伝子の伝達方法を変えることができるという「遺伝子ドライブ」と、地球の温度を下げるための方法である「地球工学」という2つのテーマについて、エリザベス・コルバート(Elizabeth Kolbert)の見解を得るためにこの本を読んだという。
「エリザベスの作品には期待していた。彼女は遺伝子ドライブと地球工学を説得力のある明快な方法で説明している」とゲイツは述べている。
コルバートの前作『6度目の大絶滅(The Sixth Extinction)』は、2015年にピューリッツァー賞を受賞している。
『The Overstory』リチャード・パワーズ(Richard Powers)
Richard Powers
『The Overstory』はゲイツの今回のリーディングリストで唯一の小説だ。彼はこの作品を 「ここ数年で読んだ中で、最もユニークな小説」と表現している。
この本は、9人の登場人物の絡み合うストーリーを通し、我々と木の関係を探っている。
「この本は、すべてがリボンで結ばれるわけではない。登場人物の中には互いに顔を合わせる者もいれば、まったく別のストーリーを持つ者もいる。結局のところ、彼らの行動は道徳的に正しいと見るべきなのか、それともただ単なる狂気と見るべきなのかは、はっきりしない」とゲイツはレビューで述べている。
そして、「私はその不明瞭さを気にしなかったが、気になる人はいるかもしれない。もしあなたが答えを与えるような作品ではなく、思考を刺激するような作品を求めているのであれば、この作品を気に入るだろう。非常によく書かれていて、予想外の展開を見せてくれる小説だ」と付け加えた。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)
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