コロナ禍の結婚式では、フェイスシールドを配布する式場もあった。
提供:エスクリ
日本ブライダル文化振興協会と結婚情報サービス・ゼクシィは6月16日、新型コロナウイルスがブライダル業界に与えた影響について発表した。
2020年4月~2021年3月の1年間で、約9500億円の損失があり、約27万組のカップルが結婚式を延期したと見込んでいる。
また2021年4月に始まった3度目の緊急事態宣言以降も、約400億円の売り上げの減少があったと試算しており、これまでにコロナによってブライダル業界が失った売り上げは約1兆円とした。
回復傾向も厳しい現状続く
売り上げは回復傾向にあるが、緊急事態宣言後に低下する傾向がある。
提供:日本ブライダル文化振興協会
日本ブライダル文化振興協会では、会員企業に挙式の状況などを調べるアンケート調査を実施。2021年5月の最新調査については、110社にヒアリング調査した。
コロナの影響を時系列でみると、1度目の緊急事態宣言が出された2020年4月は、2019年4月と比較した売り上げは6.6%に激減。2020年5月も前年同月比1.9%と、ほとんど結婚式が開催されなかった。
その後、売り上げが徐々に上向き、2020年11月には前年比53%まで回復。しかし2021年1月に2度目の緊急事態宣言、2021年4月に3度目の緊急事態宣言が発令されると、再び大幅な売り上げの減少が見られた。
通年で見ると、日本ブライダル文化振興協会が試算した2020年度(2020年4月~2021年3月)の売り上げは、2019年度に比べて7割近く減少。2019年のブライダル市場規模は1.4兆円と推計すると(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査より)、約9500億円の減収があったとしている。
3度目の緊急事態、3割が延期
緊急事態宣言やまん延防止など重点措置の対象外では、9割以上が挙式していた。
提供:日本ブライダル文化振興協会
結婚式需要の回復が進まない原因の一つが、緊急事態宣言だ。
2021年4月25日には、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に出された緊急事態宣言が発令。その後、愛知県、福岡県、北海道、岡山県、広島県、沖縄県が対象に含まれた。東京都では、結婚式場ではアルコールとカラオケの提供は中止し、「1・5時間」や「会場の50%」での実施が要請された。
日本ブライダル文化振興協会では、緊急事態宣言中の挙式実態を調査。5月末時点で緊急事態宣言の対象地域で、結婚式を予定通りに実施したのは7割を下回った。
・68.5%が「挙式を実施」
・29.0%が「延期」
・2.5%が「キャンセル」
一方で、緊急事態宣言やまん延防止措置の対象外のエリアでは、91.4%が「挙式を実施」、7.3%が「延期」で、1.3%が「キャンセル」となり、ほとんど影響がない。緊急事態宣言の対象エリアかどうかで明暗が分かれた。
日本ブライダル文化振興協会の佐々木貴夫事務局長は、「3回目の緊急事態宣言では、結婚式場も休業要請の対象になる可能性もあり、その面では業界の要請が理解された。1年以上式を延期していたケースもあり、なんとか営業できる形を模索してきた」と話す。
新郎新婦、参加者にPCR検査も
結婚式の実施について、招待者について心配する人が多かった。
提供:ゼクシィ
ゼクシィが利用者に「現在気になっていること」について複数回答でインターネットアンケート調査(2021年4月に実施し、351人が回答)したところ、75%が「招待ゲストが安心して参列できるとどうか」と回答。71%が「招待ゲストやご自身の安全面」、52%が「どんな感染対策を行えばよいか」と続いた。
コロナ対策に不安を感じる人が多い中で、感染対策を講じた新しい演出や挙式も注目されている。
ゼクシィ編集長の平山彩子氏。
記者会見を編集部キャプチャ
ゼクシィによると、オンライン挙式だけでなく、庭園を貸し切って野外で挙式できるプランを知企業が用意したり、飛沫防止のアクリル板にゲストがメッセージを書き込むなどの新しい演出も生まれている。中には、新郎新婦や列席者にPCR検査を提供する式場もあるという。
ゼクシィ編集長の平山彩子氏は今後の結婚式需要について、
「どのタイミングで需要が回復するのかは言えない状況。ただワクチンの接種が進むことで、ゲスト招待のハードルが下がり、結婚式の意欲が戻ってくると考えている。今年の秋の繁忙期は、結婚式の実施数は増えると見込んでいる」
(文・横山耕太郎)
編集部より:初出時、「結婚情報サービス・ゼクシー」としておりましたが、正しくは「ゼクシィ」でした。訂正致します。 2021年6月16日 19:35