- 約640光年離れた赤色超巨星、ベテルギウスが、2020年に減光していることが分かり、世界の注目を集めた。
- 光が弱まっているということは、もうすぐ超新星爆発が起きるのではないかと考えられたのだ。
- しかし、新たな研究によると、そのようなことはなく、単に塵の雲に覆われていただけだったということが判明した。
最近、特に話題となっていた宇宙の謎の1つが解決された。それは宇宙の塵が原因となっていたのだ。
2020年初め、赤色超巨星のベテルギウスの明るさが弱くなっていることが観測され、世界中で話題となった。これは、この星が死にかけており、いずれは崩壊して巨大な超新星爆発を起こす兆候であると考えられた。そうだとすると、ベテルギウスは17世紀以来、天の川銀河で観測される最初の超新星爆発となり、昼間でも肉眼でも確認できる光が、何カ月にもわたって空を輝かせるという可能性があった。
しかし結局、この星は爆発しないことが分かった。2021年6月16日付けでNature誌に掲載された論文によると、星が暗くなっているように見えたのは、塵のベールが星を覆っていたからだという。
今回の論文の筆頭著者である宇宙物理学者のミゲル・モンタルジェス(Miguel Montargès)は、「我々は今回、数週間単位でリアルタイムに変化する星の姿を目にした」とプレスリリースで述べている。
「いわゆるスターダスト(宇宙塵)の形成を直接目撃したのだ」
2019年12月、ベテルギウスを覆う塵の雲が、超大型望遠鏡で撮影された。画像中心部は明るすぎるので遮られている。
ESO/P. Kervella/M. Montargès et al., Acknowledgement: Eric Pantin
ベテルギウスで何が起こっているのかを解明するために、モンタルジェスをはじめとする研究者チームは、星の表面を詳細に見ることができる地球上の望遠鏡を使って減光を観測した。観測は2020年4月にベテルギウスが元の明るさに戻るまで続けられた。
その結果、この星は大きなガスの泡を噴出しているだけだと結論づけられた。噴出からしばらく経つと、星の表面が局所的に冷え、それとともにガスの一部も冷えて凝縮し、塵になったのだ。塵の雲は何カ月も漂い、地球から見るとベテルギウスの光が遮られ、どんどん暗くなっていった。
ベテルギウスは超新星に移行しているというわけではないが、その減光を観測することで、宇宙の進化の過程を解明するにあたって欠かせない情報を得ることができた。
論文の共同執筆者であるエミリー・キャノン(Emily Cannon)は、「今回目撃したような、老年期を迎えた低温の星から放出された塵は、地球型惑星や生命の構成要素になる可能性がある」とリリースで述べた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)