高収入のミレニアル世代でも、どうにかやり繰りして生活しているのが実情だ。
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- 新たな調査レポートによると、アメリカで10万ドル以上を稼ぐミレニアル世代でも、60%がぎりぎりの生活をしていると答えている。
- 「HENRYs」と呼ばれるこれらのミレニアル世代は、快適で贅沢なライフスタイルを好む。
- しかし、今日の経済状況では、10万ドルはそれほど高収入というわけではない。
高収入のミレニアル世代でも、お金がまったく足りないと感じている。
金融情報サイトPYMNTSと融資会社のレンディング・クラブ(LendingClub)は、2万8000人以上のアメリカ人を対象とした調査と経済データを分析したレポートを発表した。それによると「ぎりぎりの生活をしている」と回答したのは、年収10万ドル(約1100万円)以上のミレニアル世代(1980年から2005年頃生まれ)では60%だった。調査対象者全体では54%、年収10万ドル以上全体では40%弱が同様の回答をした。
つまり、ミレニアル世代だけが「ぎりぎりの生活」だと感じているわけではないが、年収10万ドル以上の高所得者層の中では、ミレニアル世代の方がよりそう感じているということだ。レポートによると、ぎりぎりの生活になってしまうのは、収入よりも支出のあり方の方が大きく関連している。
その理由は、ライフスタイルにもある。ミレニアル世代の多くは、「HENRYs」(High Earner, Not Rich yetの頭文字で「高収入だがまだ裕福ではない」という意味)と呼ばれている。2003年に登場したこの言葉は、年収10万ドル以上の30代が、支出と貯蓄のバランスを取るのに苦労しているという特徴を表すようになった。
HENRYsは、「ライフスタイル・クリープ」に陥りやすい。つまり、可処分所得の増加に合わせて生活水準も上げてしまうのだ。彼らは、快適で贅沢なライフスタイルを好む傾向があり、そのため、いつも「ぎりぎりの生活」になってしまう。
10万ドルにかつての価値はない
年収10万ドル以上のミレニアル世代でもお金が足りないと感じているのは、経済状況も大きな要因となっている。
レポートでは「『給料ぎりぎりの生活』には、『どうにかやりくりしている』、『貧困』といった意味合いが含まれている。今日のアメリカにおける『給料ぎりぎりの生活』の現実はもっと複雑であり、現在の経済環境はそれをさらに複雑なものにしている」と述べている。
その例として、大卒の35歳で年収10万ドル以上の収入がありながら、住宅ローンや学生ローン、子どもの教育費を抱え、大きな買い物や予期せぬ緊急事態のための貯蓄がほとんどできないという状況を示した。
この世代は、住宅取得が極めて困難な状況(アフォーダビリティ危機)に直面している。また、生活費の急激な増加に収入の増加が追いつかず、パンデミックの影響で失業や賃金カットも相次いている。
さらに、学費は1970年代に比べて2倍以上に増加しており、ミレニアル世代の多くが学生時代のローンに苦しんでいる。
HENRYsに金融アドバイスを行うスタッシュ・ウェルス(Stash Wealth)の創設者であるプリヤ・マラニ(Priya Malani)は、顧客の40%が平均8万ドル(約880万円)の学生ローンを抱えていると、以前Insiderに語っていた。
このような支出の増加の影響で、中間層(中流階級)が縮小している。ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)は、世帯収入の中央値の3分の2から2倍の収入を得ている世帯を、アメリカの中間層と定義しており、2018年の最新データによると、その年収は約4万8500ドル(約530万円)から14万5500ドル(約1600万円)となる。
つまり、年収10万ドル以上にもはや以前のような価値はないということだ。今日のアメリカの経済状況では、年収10万ドルが中間層と考えられている。
[原文:60% of millennials earning over $100,000 say they're living paycheck to paycheck]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)