2018年、アメリカの下院司法委員会で証言するグーグルのサンダー・ピチャイCEO
Alex Wong/Getty Images
- グーグルのCEOは、「リスク回避」的なリーダーシップに不満を持つ幹部からの批判に直面している。
- ニューヨーク・タイムズは、過去1年間に30人以上、グーグルのバイスプレジデントが辞めたと報じた。
- 一方でサンダー・ピチャイCEOの意思決定や、「虚栄心の強いプロジェクト」を中止したことを擁護する声もあるという。
グーグルの最高経営責任者(CEO)であるサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)に幹部社員の一部が反発しており、経営上の問題に直面していると報じられている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、2021年6月21日、現役および元幹部たちが、リスク回避の姿勢を強める同社の姿勢を批判し、1年間で30人以上のバイスプレジデントが辞めたと報じている。
同紙は、15人の現役および元幹部の話を取り上げ、彼らはグーグルがあまりにも官僚的になりすぎており、ピチャイが安全策を取りすぎているのではないかと考えた、と伝えている。
16年間同社に勤務した元エンジニアリングディレクターのデビッド・ベイカー(David Baker)は、「グーグルの多様性問題に対する勇気のなさが、最終的に私の仕事への情熱をかき消してしまった」とNYTに語った。
「グーグルは財政的に安定すればするほど、リスクを回避する傾向が強まっていった」
ピチャイは、2015年にグーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ(Larry Page)から経営を引き継いだ。
その後、2020年12月には人口知能(AI)の倫理を専門とする研究の責任者であるティムニット・ゲブル(Timnit Gebru)の解雇問題が起こり、その他にもアメリカおよび欧州連合(EU)における反トラスト調査、アメリカ国防総省との軍事契約をめぐる内部対立など、同社の問題点が報じられてきた。
2000人以上のグーグル社員がティム二ット・ゲブルの解雇を非難する嘆願書に署名した後、ピチャイは社内の信頼を回復することを約束した。しかし、ピチャイのメッセージは、発言力のある新たに組合を結成した従業員によって弱められている。
NYTによると、リンクトイン(LinkedIn)のプロフィール更新を分析したところ、過去12カ月間にグーグルのバイスプレジデント36人が辞めており、これは同社の幹部のほぼ10分の1に相当するという。
同紙によると、10数人のバイスプレジデントが署名した2018年のピチャイ宛てのメールには、会社は「成長の痛み」を経験しており、「技術的な決定の調整をする上で問題」があり、彼らのフィードバックが 「しばしば無視された」と記されている。
あるグーグル元幹部が同紙に語ったところによると、この巨大企業のイノベーションの停滞は、研究開発に対する姿勢に表れており、プロジェクトを「パントリー・モード」にしておいて、競合に対応する必要があるときには動かせるようにしているという。
一方で、ピチャイのリーダーシップを擁護する意見もある。
「彼がもっと早く決断してくれたら、私はもっと幸せになれただろうか。答えはイエスだ」と、グーグルのバイスプレジデントを15年間務めたシーザー・セングプタ(Caesar Sengupta)は、NYTに語っている。
「しかし、彼がほぼすべての決断を正しく行うことに満足しているか。その答えもイエスだ」
また、2021年4月にグーグルを退職し、証券取引アプリ「ロビンフッド(Robinhood)」に転職したもう一人の元バイスプレジデント、アパーナ・チェナプラガダ(Aparna Chennapragada)は、ピチャイが不評な決断を敢えて行い、同社の 「虚栄心の強いプロジェクト 」を削減してきたことを称賛した。
2021年1月、グーグルの親会社であるアルファベット(Alphabet)は、太陽電池を搭載した気球を使用してブロードバンドに接続しやすくすることを目的としたスピンオフの「ルーン(Loon)」を中止すると発表した。ほかにも、凧を使った風力発電の「マカニ(Makani)」や、燃料の代替を目指した「プロジェクト・フォグホーン(Project Foghorn)」などのムーンショット・プロジェクト(挑戦的な研究開発)を中止した。
グーグルとその関連会社は大幅に成長した。ピチャイがCEOに就任した2015年の年末は、アルファベットのフルタイムの社員は7万2053人だったが、2020年末には13万5301人にまで増えている。
グーグルは、Insiderのコメント要請に回答していない。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)