スイスにある国連ジュネーブ事務局。
AP Photo/Markus Schreiber
- 国連は、ブロックチェーン技術の活用により、気候危機へ立ち向かうことができると述べた。
- 「暗号通貨の最もよい点の1つは透明性であり、我々もそこに関心がある」と述べている。
- その透明性によって、一部の国が報告しているような不完全で信用できない温室効果ガス排出データの是正に役立つ可能性がある。
国際連合は、暗号通貨の基になっているブロックチェーン技術を用いて、気候危機に立ち向かい、世界経済をより持続可能なものにすることができると述べている。
「暗号通貨のよい点の1つは透明性であり、我々もそこに関心がある」と国連は述べている。
国連の専門家によると、ブロックチェーン技術はデータの改ざんや不正行為を防ぐことができ、信頼できる透明性の高い取り引き記録を提供するものだという。それによって、不完全で信用できない温室効果ガス排出データの特定に役立つと見られている。
「しっかりとした組織がなく、汚職が多い地域では特に重要だ」と国連は付け加えた。
国連は、多くの国における有害な温室効果ガスの排出量に関するデータが、いかに信頼性に欠けるかについて述べる一方、環境保護におけるブロックチェーンの可能性は、さまざまなプロジェクトで検証されているという。例えば違法なマグロ漁の取り締まりや、温室効果ガスの排出削減量を暗号通貨で売買するといったプロジェクトだ。また、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの導入を促進するのにも、ブロックチェーンが役立つという。
しかし、暗号通貨のマイニングで消費する電力が1つの国の電力使用量を超えるほどだということが問題視されており、それが環境に与える影響についても、国連は認識している。また、暗号通貨が克服しなければならない技術的・政治的課題についても言及している。
しかし国連は、これらの課題は「いずれ解決されると確信している」という。このように楽観的なのは、これまでにも国連がブロックチェーンの技術を用いて、重要なプロジェクトを実現してきたからだ。
例えば、国連の中でも世界中の人々に支援の現金を届ける最大の機関である世界食糧計画(World Food Programme:WFP)は、ブロックチェーンを利用すれば、地元の銀行を経由せずに現金を必要としている人に確実に届けられることを証明した。
このプロジェクト「ビルディング・ブロック(Building Blocks)」は、パキスタンで実証プログラムを実施したほか、ヨルダンの難民キャンプでのテストにも成功している
国連は、「これが難民に対してうまくいくのであれば、その他の弱い立場の人々に対してもうまくいくだろう」と述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)