東京都議会議員選挙の投票日は7月4日(日)だ。
Pierre Aden / EyeEm/Getty Images、吉川慧
6月25日に公示された東京都議会議員選挙では、新型コロナ対策や東京五輪の対応といった直近の課題が論点に挙げられている。しかし、日々の生活は五輪やコロナだけではない。4年前の都議選から「東京都の生活」はどう変わったのだろう。
東京都や国の統計データを基に「東京都の現在地」を見ていこう。
1. 東京の人口は1400万人の大台も、高齢化率は過去最高
東京都の人口推移。2021年のデータは速報値を採用。
国勢調査のデータをもとにFlourishで作成
6月25日に発表された2020年10月1日段階での国勢調査の速報では、全国の人口は1億2622万7000人と、2015年の国勢調査から約87万人減少していた。
一方で、東京都はこの間、全国で最も人口の増加率が高く、同速報では、1406万5000人と全国の11.1%を占めている。
出典:東京都
人口が増加し続けている東京だが、高齢化も進んでいる。
2021年1月の段階で、老年人口(65歳以上)が人口総数に占める割合は22.67%。昭和32年の調査開始以来、過去最高を記録している。人口ピラミッドを見ても、これから先、高齢化がますます加速していくことは免れない。
出典:東京都福祉保健局のデータを元に、Flourishを用いて作成。
2019年の東京都の出生総数は、10万1818人。合計特殊出生率は1.15だった。出生数、合計特殊出生率ともに、2000年代では2015年〜2016年をピークに、ここ数年で低下が続いている。
2019年における全国の合計特殊出生率の1.36と比較すると、東京都は全国的に見ても出生率が低い。また、厚生労働省が発表している2020年の人口動態統計では、東京都の合計特殊出生率は速報値で1.13とさらに低下していた。
2. 待機児童の数は年々、減っている
出典:東京都 くらしと統計2021
子育てをする環境整備の必要性という意味で考えると、都内の保育所の定員は堅調に増加している。小池百合子都知事が掲げていた「待機児童数ゼロ」の公約はいまだ果たされていないものの、2021年4月の段階で待機児童が1000人を下回る見込みが報じられた。
3. 外国人人口は右肩上がりだったが……
東京都に住む外国人の人口も増えている。2021年1月は2020年1月よりも減少。コロナ禍の影響が感じられる。
東京都の統計より、Flourishを用いて作成。
東京都には、2021年1月の段階で約55万人の外国人が東京に居住している。東京都の人口1400万人のうち、約4%に相当する。
外国人人口は2013年頃を機に、毎年約5万人ずつ増加していた。ただし、2021年1月の調査時には前年比で約5万人減となっている。
4. 倒産件数はコロナ禍でも実は「微減」。コロナ関連倒産は増加傾向
出典:グラフィック 東京の産業と雇用就業 2021
負債額1000万円以上の企業に限った統計ではあるものの、2020年の全国の倒産数は7773件、うち東京都の倒産数は1392件だった。2020年はコロナ禍で多くの企業が疲弊した1年だったものの、倒産件数はここ5年で全国、東京都ともに最も少ない結果となっている。
帝国データバンクの報告によると、2020年は全国での飲食業の倒産が過去最多の780件。全体の倒産数自体は減ったものの、影響を受けやすい業態に偏りが見られている。
出典:グラフィック 東京の産業と雇用就業 2021
負債額1000万円以上の企業を対象にしている都の統計では、コロナ関連倒産の数自体は全体のうち20%弱の201件。
ただし、帝国データバンクの報告では、負債額1000万円以下の企業も含めると、2020年2月から2021年6月までの間に、東京では383件の企業がコロナ関連倒産をしていた。全国で見ると、2021年になってからコロナ関連倒産の数が加速している。
2020年は耐えしのげた事業者も、2021年1月からの度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの制限によって一気に体力が尽きている可能性がある。
5. コロナ禍では失業者数は増加
出典:「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)
2020年の7月〜9月には、前年同期比で約60%増(約11万人増)となる約29万人が完全失業者となっていた。うち男性は5万人(前年同期比45.0%増)、女性は6万人(同84.5%増)と、特に女性の失業が目立っている。
出典:「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)
2020年7月〜9月の東京の完全失業率は約3.5%と全国と比較しても高い水準となっていた。
最新の統計である2021年(令和3年)1月〜3月期では、完全失業率は一度低下しているものの、完全失業者数は約23万人(男性:約13万6000人、女性:約9万2000人)。
性別・年代別にみると、最も完全失業率が高いのは男性の15~24歳(完全失業率は8.3%)、女性では25~34歳(3.3%)。いずれも、コロナ禍で若者の失業が目立っている状況が現れているといえるだろう。
上述した通り、2021年になってからコロナ関連倒産が加速していることを考えると、雇用問題は今後、より深刻化していくことが想定される。
6. 収入は基本横ばい。コロナ禍では減少傾向に
出典:グラフィック 東京の産業と雇用就業 2021
東京都の労働者一人あたりの平均月収・労働時間はともに全国平均を上回っているが、ここ数年はずっと横ばいだ。
2019年の平均月収は41.5万円。コロナ禍となった2020年は、所定外労働時間の減少などの影響もあり、全国的に収入が前年と比較すると減っている。
出典:グラフィック 東京の産業と雇用就業 2021
産業別に見ると、金融業と宿泊・飲食業の給与格差が激しい。
この差は、産業形態に応じて一般労働者とパートタイム労働者割合が大きく違うことが要因の一つとなっている。2019年の東京都の一般労働者の平均月収は、約52万円。パートタイム労働者の平均月収は11万円だった。
7. コロナ禍で、都民のエンゲル係数が上昇?
東京都の「2人以上世帯」の収入は、2020年で70万円を超えた。
出典:「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)
都民の収入や支出はどう変わっていったのか。
「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告によると、2人以上世帯の中でも勤労者世帯(共働きなど)のひと月あたりの収入は70万円を超えた。(※調査では単身世帯を除いていることに注意)
一方、消費支出は前年比で微減している。
出典:「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)
2人以上の全世帯の消費動向の変化を見ると、10年前、20年前と比べて全支出のうち食費の割合が23.7%から28.2%と、4.5%も上昇している。コロナ禍の生活スタイルとして、食にお金をかけるようになった側面もあるかも知れないが、エンゲル係数(消費支出全体における飲食費の割合)は2020年以前から微増を続けている。
出典:「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)
なお、コロナ禍となった2020年の消費に絞ってみると、2019年と比較して被服・教養娯楽にかける支出が大きく減少。全国と比べて都民は住居や教育にお金を注いでる傾向にあった。
8. 選挙権を持つのは満18歳以上の約1150万人
出典:東京都 くらしと統計2021
都民約1400万人中、選挙権を有する18歳以上の人数は約1150万人。
2017年7月に実施された都議会議員選挙では、全体の投票率は51.28%だった。
ただし、年齢別の投票率を見ると、50代以上が全体投票率を上回っている一方で、19歳〜30代前半までの年代で投票率が40%を下回っていた。若い世代の投票率では、唯一18歳の投票率が46.43%と比較的高い水準となったものの、21歳〜24歳の年代に至っては全世代で最低となる、投票率25.32%だった。
(文・三ツ村崇志)