マンハッタンにあるトランプタワーを後にするトランプ前大統領(2021年5月18日)。
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- 新しい著書からの抜粋によると、アメリカのトランプ前大統領のデモ参加者に対する発言は、任期の終わりが近付くにつれ、ますます敵対的なものになっていったという。
- この新しい著書からの抜粋はCNNが入手したものだ。著書は、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)がいかにして"前大統領に反対する声"としての自分に気付いたか、詳しく書かれたものだという。
- 新しい著書によると、トランプ前大統領は何度もデモ参加者を撃つよう提案していたという。
CNNが入手した新しい著書からの抜粋によると、2020年、アメリカ各地で抗議デモが激しさを増す中、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、暴動対策として何度も軍による介入を命令したがるトランプ大統領(当時)を拒絶しなければならなかった。自身の任期の終わりが近付くにつれ、トランプ大統領の態度はますます不安定になっていったという。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記者マイケル・ベンダー(Michael Bender)氏の著書『Frankly, We Did Win This Election: The Inside Story of How Trump Lost』は、相次ぐ暴動への対応をめぐってトランプ大統領の発言がエスカレートする中、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長がいかにして、大統領執務室で交わされる激論の中でしばしば大統領に異議を唱える自分に気付いたか、詳しく書かれたものだという。
ベンダー氏の著書はトランプ大統領が、デモ参加者に対して、警察が「手を出す」のを見たいと自らの政権に伝えたがっていて、実例として警察による攻撃的な対応の動画まで見せていたと伝えていると、CNNは報じた。
ベンダー氏の著書によると「これこそ、君たちがああいう人間を扱うべき方法だ」とトランプ大統領は政権幹部に伝えたという。
「あいつらの頭蓋骨にひびを入れてやれ!」
ホワイトハウスの中で、トランプ大統領は何度もデモ参加者を撃つよう提案していたという。CNNはベンダー氏の近刊予定の著書を引用し、トランプ大統領が閣僚に対して、軍がデモ参加者を「徹底的に叩きのめす」ところが見たいと伝えていたと報じた。
CNNによると、ミリー統合参謀本部議長とウィリアム・バー司法長官(当時)が大統領のますます敵対的になる言葉遣いに異議を唱え、大統領も多少はそれを受け入れたという。
「それなら脚を撃て。足先でもいい」とトランプ大統領は言ったという。
「だが、厳しくしろ!」
Insiderはトランプ前大統領の代理人にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
マーク・ミリー統合参謀本部議長。
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ベンダー氏の著書は、ミリー統合参謀本部議長が大統領上級顧問だったスティーブン・ミラー氏 —— テレビ局による抗議デモの報道を第三世界の国と比べ、アメリカの一部が紛争地帯に変えられたと主張した —— といったトランプ大統領の過激思想をつけあがらせた他の政権幹部とも戦わなければならなかったとしている。
CNNによると、ミラー氏のこの主張にミリー統合参謀本部議長は激怒した。ミリー統合参謀本部議長は、ミラー氏が自らの専門外にまで口を出していると考えていたという。
「黙れ、スティーブン」とミリー統合参謀本部議長はミラー氏に言ったという。
Insiderはミリー統合参謀本部議長の担当にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
CNNによると、ベンダー氏の著書はミリー統合参謀本部議長がトランプ大統領とは「良い関係」にあったものの、その任期が終盤に差し掛かると、できるだけ頻繁にワシントンD.C.にいるよう努めていたとしている。これはトランプ大統領がデモ対応として反乱法の発動を決めるかもしれないと、ミリー統合参謀本部議長が不安を感じていたからでもあるという。
結局、トランプ大統領が軍を街に出動させ、民間人を相手にする反乱法を発動することはなかったが、ミリー統合参謀本部議長は大統領が発動したら自分はどう助言すべきか、心配していたという。
暴動と抗議デモへの対応として、トランプ大統領は反乱法の発動を何度も提案したが、ミリー統合参謀本部議長とマーク・エスパー国防長官(当時)はどちらも大統領の考えに反対だった。
(翻訳、編集:山口佳美)