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DXに積極的な企業は、生産性アップを目指し、どんなアプローチをしているのか?
Business Insider JapanはDXで注目の企業にアンケート調査を実施。生産性アップの具体的な取り組みを聞いた。
日本マイクロソフトやヤフー、メルカリ、SmartHRやキャスターなど計8社から回答が集まった。
注目企業の取り組みを「テック最前線・AI活用型」「日々の業務にSaaS導入型」「会話重視でDX定着型」「仕事以外で仕事も生産性向上型」と4つのタイプに分けてみてみよう。
タイプ1.テック最前線・AI活用型……外資系の大企業や、メガベンチャーに多い。
REUTERS/Toru Hanai ,REUTERS/Charles Platiau/File Photo,REUTERS/Issei Kato
メルカリにはAI社員・HISASHIがいる。Slackで話しかけると、社内で使われている用語の意味などを解説してくれたり、会議室の予約や経費精算などの質問に答えてくれる。
メルカリHPより編集部キャプチャ
日本マイクロソフトは、個人やチームがどのように働いているか、チャットツールのデータなどからAIが分析。 瞑想による休憩を勧めたり、「ムダな会議をしていないか」など教えたりしてくれる。
REUTERS/Charles Platiau/File Photo、右はマイクロソフトのHPより編集部キャプチャ
日本IBMは、AIが社員一人ひとりに合わせた研修を提示。必要なスキルについて、取得の目標やフィードバックする。
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タイプ2.日々の業務にSaaS導入型……DXを自社事業とする急成長中のベンチャーが目立つ。大型のシステムを導入しなくても、まずは日々の業務からDX。
グループの従業員が850人を超えるソフトウェア会社のサイボウズ、クラウド人事労務サービスを展開するSmartHR、ネットスーパーの立ち上げサービスを提供する10X(テンエックス)の取り組みを紹介する。
※SaaS(Software as a Service=サース):ユーザーがソフトウェアを直接導入するのではなく、インターネットなどを経由して提供する企業が稼働するサービス。
サイボウズは2020年2月、いち早く原則在宅勤務を導入しDXを加速。代表電話を自宅で受けられるようにしたり、業務改善プラットフォーム・kintoneを使って、経費申請の脱ハンコや、雇用契約書の電子化したり。
サイボウズが2020年3月に掲載した新聞広告。
出典:サイボウズHP
サイボウズではDXにより、コロナ前までは出社が多かった労務担当者であっても、92%が在宅勤務に移行したという。
SmartHRは社員一人あたり合計約7万円のSaaSを契約。なんと70以上のサービスを利用しているという。
SmartHRが契約しているSaaSのリスト。一部分を抜粋。
SmartHRのnoteを編集部キャプチャ
小売りのDXに取り組む10Xは、多機能ノートツールのNotionを活用。創業時からのドキュメントを集約しているため、途中入社した社員のキャッチアップを助けている。採用拡大中の企業ならではだ。
撮影:小林優多郎
タイプ3.会話重視でDX定着型……必ずしも最新のサービスを使うことだけが、DXの成功の秘訣ではない。 リモートワークも増える中、うまくコミュニケーションを図れるかどうかはDX定着の肝だ。
現在は95%の社員がリモートワークをしているというヤフー。週1回30分間を目安に、上司と部下の1on1の時間がある。対面での会話が少なくなり、コミュニケーションを確保する場を確保。
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800人の社員らがフルリモートで勤務するキャスター。会話を生むために、Slackの雑談部屋には「ペット」や「野球」、「美容」などいくつものトークテーマを用意。社内向けの動画配信では、一体感の醸成だけでなく会議時間の削減にもつながったという。
社内向けに公開されていている動画の一コマ。
キャスター提供
タイプ4.仕事以外で仕事も生産性向上型……健やかな心身保つことがDXには不可欠。仕事以外に目をつける企業もある。
ヤフーにはさまざまな休暇制度がある。ボランティア活動などに参加するための「課題解決休暇」、専門的知識を習得するための「勉学休職制度」、キャリアを見つめなおす「サバティカル制度」など。
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ヤフーによると、リフレッシュや心身の健康維持という意味だけでなく、休暇中の活動で知見を広げることで、サービスへの還元につながることへの期待もあるという 。
SmartHRではフィットネスタイムを導入。15分以上を推奨し、最大1時間以内。オンライン上でラジオ体操をしたり、散歩や筋トレをしたりする社員が多いという。
オンラインで実施されたラジオ体操。
SmartHRオープン社内報より編集部キャプチャ
産業や社会の変化のスピードが早い時代には、今の仕事を継続しながら未来への投資となる、学び直しやスキルアップの時間が必要だ。働き手のスキルアップは企業にとっても財産だが、そのためにも企業としては時間あたりの生産性向上は不可避となる。
DX先進企業の回答からは、先進企業であっても生産性を上げるために日々、試行錯誤を続けていることが分かる。
あなたの職場は、あなた自身は、何から取り組むだろう。
(文・横山耕太郎)