Chris J Ratcliffe/Getty Images
- ギャップ(GAP)は9月末までに、イギリスとアイルランドの全ての店舗を閉店する。ただ、オンライン販売は続けるという。
- eコマースの競争が激しさを増す中、ギャップは苦戦してきた。
- 同社では「オールド・ネイビー(Old Navy)」や「アスレタ(Athleta)」といったブランドが好調な一方で、「ギャップ」ブランドは売り上げが落ちている。
世界全体で売り上げが落ちる中、ギャップはイギリスとアイルランドの全ての店舗を閉店する。
同社は9月末までに全81店舗を閉めるが、オンライン販売は続けることを6月30日に明らかにした。
ギャップは今回の動きを「市場力学」の結果だとしている。
「eコマース事業は成長を続けており、わたしたちは顧客が購入している場所で彼らに会いたいと考えています」と同社は述べた。
「わたしたちはデジタル・ファーストの企業になります。わたしたちのオンラインビジネスを支援してくれるパートナーを探しています」
ギャップは8月中旬から9月下旬にかけて、店を閉めていくとしている。ギャップは1987年にイギリスに、2006年にアイルランドにそれぞれ1号店を出した。
親会社のギャップは2020年10月、北米の「ギャップ」と「バナナ・リパブリック(Banana Republic)」約350店舗を閉店すると発表した。
同社は2021年第1四半期の全体としての純売上高を2019年から8%増の40億ドル(約4500億円)と報告しているが、これはオールド・ネイビーとアスレタが好調だったおかげだ。
ギャップの第1四半期の純売上高が2019年より16%減った一方で、オールド・ネイビーは25%、アスレタは56%伸びた。
「ギャップは、パンデミック中に大人気となったアスレジャー・スタイルを何十年も前から提供してきた」とハーグリーブス・ランズダウンのシニア・インベストメント・アンド・マーケット・アナリストのスザンナ・ストリーター(Susannah Streeter)氏はInsiderにコメントした。
「ただ、ギャップ全体の売上高がここ1年で伸びたとはいえ、その一連のブランドは売り上げに火を付けていない」
AJ Bellの金融アナリスト、ダニ・ヒューソン(Danni Hewson)氏は、創業52年を迎えたギャップは未だに「その全盛期の遺産に根差して」いて、「見て見ぬふりのような状態に苦しんでいる」と指摘している。
費用対効果を高める方法を見つけるため、ギャップは2020年、ヨーロッパの直営店の見直しを始めたと明かした。同社は、フランスの店舗についてFIBグループのHermione People and Brandsと売却交渉をしているとし、イタリアの店舗については別のパートナーと売却の可能性について話し合いをしていると述べた。
オンライン・ファッション大手はコロナ禍で売り上げが急増
「ショッピングの多くがオンラインにシフトするなど、小売業界の展望が変化する中、企業が費用のかかる家賃を削減するのは理にかなっている。オンラインのみの競合他社の成功を考えれば、なおさらだ」とストリーター氏は言う。
新型コロナウイルスのパンデミックで、政府が店に休業を義務付ける中、多くのイギリス人がオンラインで服を購入するようになり、これがオンライン・ファストファッション大手の売り上げ増につながった。2021年2月までの1年間でブーフー(Boohoo)の売り上げは17億5000万ポンド(約2690億円)と、前の年に比べて41%増えた。また、2021年2月までの半年間で、エイソス(Asos)の売り上げは19億8000万ポンドと、前の年の同じ時期に比べて25%近く伸びている。
ただ、オンラインだけがファッションブランドが成功する道ではないと、ヒューソン氏は言う。イギリスのファッション大手プライマーク(Primark)は、eコマースを回避しているにもかかわらず、パンデミック前の売り上げを上回っていると、同氏は指摘している。
(翻訳、編集:山口佳美)