カリフォルニア州サンフランシスコにある、完全自動化されたファストフード・レストランのメニュー。2015年8月31日撮影。
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- 企業は従業員がやってくるのを待つのに疲れ、自動化に目を向けるようになっている。
- 人手不足で雇用が困難になる中、このトレンドが飲食業界にも広がっている。
- 自動化は仕事を奪うと懸念されてきたが、経済を活性化させる「好循環」を生むきっかけになるかもしれない。
労働者がやってくるのを何カ月も待ち、一部の企業は限界を迎えてしまったようだ。
大手求人サイトのIndeedが行った最新の調査によると、すぐに仕事に就きたいと考えている人は求職者のわずか10%にすぎない。ウイルスへの不安や、子育て費用、金銭的な貯え、十分な失業手当などを理由に、多くの求職者は、飲食やホスピタリティ業界が募集しているたくさんの求人に殺到することはない。
例えば、QRコードを使えば、テーブルまで行って注文を取る人員を省くことができる。この技術は、自動化における「炭鉱のカナリア」だ。その他にも自動化導入の兆しが現れてきている点はある。Insiderで紹介したように、マクドナルドのような大手が人材集めに苦心するなど、雇用の問題は何カ月にもわたって飲食業界に広がっている。そうした企業の一部は、低賃金の労働者の代わりに、テクノロジーへ目を向け始めている。
例えば、クラッカーバレル(Cracker Barrel)は、食事の代金の支払いを行うモバイルアプリを展開した。マクドナルドは、シカゴの10店舗でドライブスルーの自動注文の試験導入を開始し、デイブ&バスターズ(Dave & Buster's)は非接触の注文システムを拡大する予定だ。
これらの利点は明らかだ。自動化は1度の投資で生産性を高め、人手不足を解消するために注目されている入社ボーナスなどの高額の解決策を必要としない。
経済データから、自動化への移行は数カ月前から進んでいることがわかる。2021年1月から3月の3カ月間で生産性が5.4%も上昇し、これは過去20年以上で最も速いペースだった。この急増は企業が再び雇用始めたのころに起きたもので、パンデミックに対応するためのテクノロジーを引き続き使用していることを示唆している。
現在までのところ、レストランなど新しいテクノロジーを導入した企業は、自動化が労働者の代わりになることを認めている。デイブ&バスターズの非接触注文システムを導入している店舗では「サーブするセクションを拡大し、総スタッフ数を少なくすることで、効率が上がった」と、同社のマーゴ・マンニング(Margo Manning)COOは、2021年6月の収支報告で述べた。
新しい技術が導入されると、ロボットに仕事を奪われて、雇用が減り、給与が低迷するという悪循環に陥るのではないかと、人々は長い間恐れてきた。この考え方は、1800年初頭の産業革命の初期に、自分たちの職を奪った機械を破壊したイギリスの労働者グループに因んでラッダイトと呼ばれる。だが自動化は、ラッダイトのような悪循環ではなく、好循環をもたらす。
技術革新の活用は、ここ数百年の経済史においては生産性を向上させる傾向があった。これにより労働者は高い賃金を得ることができる。そして高い賃金は経済活動を活性化させ、経済のあらゆるところで労働者の需要を増やす。
自動化を受け入れることで雇用を最適化できる、と経済記者のノア・スミス(Noah Smith)は2021年6月13日のブログで述べた。低賃金の仕事をテクノロジーが取って代わることで、注文を受けたり、食器を下げたりしていた人は、もっと付加価値の高いスキルを身につけることができる。産業革命からドットコムブームに至るまで、過去の大規模な技術革新は、雇用を奪うのではなく、他の場所に移したのだ。自動化の促進は、人の可能性を信じることだと、彼は述べている。
新しいテクノロジーは人間が開発したもので、人間の仕事を悪くするのではなく、良くするために活用できる。これが、その動きのきっかけになるかもしれないし、また、そうならないかもしれない。
[原文:Restaurants are starting to hire robots instead of people who are demanding higher pay]
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)