カナダ西部で「火災積乱雲」発生…記録的な熱波による山火事で

9000メートルの上空から見た、ワシントン州東部の火災積雲。2019年8月。

9000メートルの上空から見た、ワシントン州東部の火災積雲。2019年8月。

NASA Earth Observatory

  • カナダ西部では、山火事によって火災積乱雲が発生している。
  • この雲は「火を吐く雲のドラゴン」と呼ばれ、竜巻や雷を発生させ、さらなる火災を引き起こす可能性がある。

カナダのブリティッシュ・コロンビア州上空では、記録的な暑さと山火事によって、雷を呼び起こす嵐が発生している。

大規模な火災からの熱と煙が上昇すると、「火炎積乱雲(pyrocumulonimbus)」と呼ばれる雷雲が発生する。これらの雲は、まれに竜巻を含む悪天候を作り出し、それがさらに新たな火災を引き起こすことがある。これは悪循環だ。

バンクーバーの南150kmに位置するリットンでは、2021年6月29日に気温が摂氏50度近くまで上がり、同国の新記録になった。この熱波は山火事の前兆であり、町長は住民250人全員に避難命令を出した。地元紙「City News」によると、7月1日の朝の時点で、山火事は2万エーカー(約80平方km)も広がり、リットンの90%を焼き尽くしたという。

カナダ。ブリティッシュコロンビア州のリットンを脅かす山火事。

カナダ。ブリティッシュコロンビア州のリットンを脅かす山火事。2021年6月30日。

Lytton Weather Station

ブリティッシュコロンビア州の当局は、6月30日に同州でさらに2件の火災が発生したとを報告した。

アメリカ・コロラド州立大学の共同研究大気研究所の気象学者ダコタ・スミス(Dakota Smith)は、リットン上空の衛星画像で「信じられないほど巨大な嵐をもたらす火災積乱雲の噴出」が見えたと述べた

これには言葉がない…いくつかの点で単なる山火事のようだと思っていたが、ダコタ・スミスによると、この火災積乱雲はレベルが違う

「火を吐く雲のドラゴン」

山火事の煙の上に分厚い雷雲があるのを見つけたら、それはほとんどの場合、火災積乱雲だ。NASAによると、この「火の雲」の別名は「cumulonimbus flammagenitus」で、2つ目の単語はラテン語で「炎から生まれた」という意味だという。

アルゼンチン上空の火災積乱雲の衛星画像。2019年1月28日。

アルゼンチン上空の火災積乱雲の衛星画像。2019年1月28日。

NASA

一般的に雷雨は、地上の暖かく湿った空気が上昇するときに発生する。大気の最下層に入った空気は冷やされ、地表に向かって下降し、またそこで暖められて再び上昇する。この上昇と下降のサイクルが対流と呼ばれるもので、そこで積乱雲(雷雲)が生まれる。

しかし、その熱と湿気が地表からのものではなく、山火事によるものであっても、対流が起こって積乱雲が発生する。

Bureau of Meteorology, Victoria

Bureau of Meteorology, Victoria

この金床状の雲は、他の雲と同様に雨を降らせる。しかし、それらはしばしば、水滴ではなく空気を吹き下ろす「ダウンバースト」を起こす。ダウンバーストは、乾燥した空気を地上に吹き付けることで、炎の燃えカスや煙を遠くまで飛ばす。その結果、嵐の原因となった炎がさらに燃え上がる。

NASAは火災積乱雲を「火を吐く雲のドラゴン(fire-breathing dragon of clouds)」と表現しているます。また、数多くの稲妻を発生させることもあり、それがさらなる炎を引き起こすこともある。

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