ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。
REUTERS/Kim Kyung-Hoon
6月最終週から7月第1週にかけて、20社近い企業がアメリカで相次いで新規株式公開(IPO)を実施した。
そしてそのいくつかは、著名ベンチャーキャピタルに巨大な利益をもたらした。
蒔いた種の刈り取りに成功したのは、ソフトバンクグループ、タイガー・グローバル・マネジメント(Tiger Global)、インサイト・パートナーズ(Insight Partners)、IVP、TCV、クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)などだ。
ソフトバンクGの抜け目なさ
IPOラッシュの口火を切ったのは、6月29日に上場を果たした中国のフードデリバリー「ディンドン(叮咚、Dingdong)」だった。
翌30日には中国の配車サービス「ディディ(滴滴出行、DiDi)」、米オンライン法律サービス「リーガルズーム(LegalZoom)」、米サイバーセキュリティプラットフォーム「センチネルワン(SentinelOne)」が続いた。
ソフトバンクグループ(傘下のビジョンファンド)が出資するDidiとDingdongのニューヨーク証券取引所(NYSE)デビューは控えめな値動きで始まった。
とはいえ、30日の終値で計算すると、ソフトバンクグループの持ち分はDidiが34億2000万ドル(約3760億円)、Dingdongは7億4040万ドル(約810億円)にもなる。
一方、センチネルワンの株価は公開直後に21%上昇し、一部のベンチャーキャピタルは持ち分が10億ドルを超えた。
同様に30日の終値で計算してみると、インサイト・パートナーズの持ち分は14億6000万ドル(約1600億円)、タイガー・グローバルは11億9000万ドル(約1300億円)。
また、ダニエル・ローブ率いるヘッジファンド大手サード・ポイント(のベンチャー部門)の持ち分が10億5000万ドル(約1150億円)となった。
リーガルズームの株価も30日に35%という大幅上昇を記録した。終値で計算すると、IVPの持ち分は4億8980万ドル(約540億円)相当、クライナー・パーキンスは4億1260万ドル(約450億円)、TCVは5億5320万ドル(約600億円)となった。
最近は上場案件が急増
この週のIPOラッシュは一例であって、最近は上場する企業が急増している。
英ルネッサンス・キャピタルのデータによれば、2021年第2四半期(4〜6月)は合計113件のIPOが実施され、市場は2000年以降の同四半期で最大の繁忙期を迎えた。
最後に、ソフトバンクグループやタイガー・グローバルほどの規模感はないものの、今回のIPOラッシュでそれなりの利益を手にしたベンチャーキャピタルとして、米ニューエンタプライズアソシエイツ(NEA)と米ファウンドリーグループ(Foundry Group)に触れておこう。
NEAは6月30日に上場した医療機器メーカー「CVRx」の主要株主。終値から計算すると、持ち分は5870万ドル(約65億円)相当。
ファウンドリーグループは、同じく30日に上場した製造業向けオンデマンドマーケットプレイスの「ゾーメトリー(Xometry)」に出資。同日終値ベースで3億4620万ドル(約380億円)相当となった。
(翻訳・編集:川村力)