先週、帝国データバンクが2つの業界別決算レポートを配信した。
1つは「上場アパレル企業決算動向調査」、もう1つは「2020年度上場外食業者動向調査」だ。いずれも、コロナ禍の影響を多大に受けた業界として、Business Insider Japanでも決算に注目してきた業界だ。
決算月が企業によって違うため、通期決算が示すビジネスの状況は必ずしもイコールではないものの、いずれの業界も、厳しい決算を迎えた上場企業が大半だったことが改めて確認できる。
しかし、そんななかでも、いくつかの企業は、売上高を「増収」で決算を終えている。
2つの業界で、コロナショックをうまく乗り切った業態には、いくつかの共通点がある。増収企業リストから、その傾向をみていこう。
外食業界:ファストフードと郊外店が強い
Shutterstock/David Silverman/Getty Images/モスフードサービス
帝国データバンクによると、2020年度における上場外食企業の総売上高は約3兆9797億円。前年度は約4兆8888億円だったことから、約9091億円がコロナ影響によって吹っ飛んだ形だ。極めて大きな市場インパクトといえる。
上場外食94社のなかで、増収(売上高が前年比増)した企業は10社。3月期決算だった45社にしぼると、増収企業はわずか3社だった。
2020年度の増収企業リストは以下のとおりだ(一部、営業赤字企業を含む)。
- 日本マクドナルドホールディングス(12月決算、売上高は前年比2.3%増)
- モスフードサービス(3月決算、同4.3%増)
- 日本KFCホールディングス(3月決算、同12.6%増)
- アークランドサービスホールディングス/チェーン:かつや、からやま等(12月決算、同15.9%増)
- 丸千代山岡家/チェーン:ラーメン山岡家(1月決算、同1.1%増)
- FOOD&LIFE COMPANIES/チェーン:スシロー、京樽等(9月決算、同2.9%増)
- 安楽亭/チェーン:安楽亭、フォルクス等(3月決算、同73%増)※ただし、売上高増は買収した子会社アークミール(フォルクスなどを展開)によるもの。営業赤字は13億円
- 梅の花/チェーン:梅の花、さくら水産等(4月決算、同56.2%増)※2021年4月の直近決算は売上高29%減、営業赤字22億円
- NATTY SWANKY/チェーン:肉汁餃子のダンダダン(6月決算、同6.8%増)
- ギフト/チェーン:横浜家系ラーメン町田商店、ラーメン豚山など(10月決算、同21.3%増)
傾向として、日本を代表するファストフードチェーンが軒並み増収の構図のほか、郊外型のロードサイド店に強い業態が比較的持ちこたえている姿が浮かび上がる。
アパレル業界:ファストファッション、低価格衣料が強い
Business Insider Japan
2020年5月にアパレル大手レナウンが民事再生手続きを開始するなど(その後廃止、11月に破産手続きに移行)、消費者の生活スタイルの変化が本業に大きな影響を及ぼしているアパレル業界。
同調査が取りまとめた上場アパレル企業は45社。そのうち、2020年度の売上高が増収したのは8社。
ユニクロ・GUを展開するファーストリテイリングは、売上高は上場アパレルのなかで大差をつけたトップ企業ながら、決算期が8月ということもあり、増収企業一覧にはリストアップされなかった(2020年8月期の売上高は前年比12.3%減)。
増収企業は以下のとおりだ。
- 西松屋チェーン/子供服大手(2月決算、同11.5%増)
- ワークマン/作業服、ファストファッション大手(3月決算、同14.6%増)
- しまむら/ファッションセンターしまむらなどを展開(2月決算、同4%増)
- ツカモトコーポレーション/ユニフォーム、アパレル取り扱い(3月決算、同0.3%増)
- プロルート丸光/総合衣料卸売事業など(3月決算、同0.7%増)
- クロスプラス/JUNKO SHIMADAなどを展開(1月決算、売上高は前年比9.4%増)
- ユニフォームネクスト/作業服取り扱い(12月決算、同5.4%増)
- ナガイレーベン/メディカルウェア取り扱い(8月決算、同1.7%増)
全45社の一覧はこちらから入手できる。
なお、アパレル業界については、2021年度の業績見通しについて、62%が増収増益を見込んでいる、と帝国データバンクは取りまとめている。
その前提にあるのはワクチン接種率の拡大による、経済活動の再開が念頭にあるのは言うまでもない。
(文・伊藤有)