暗殺されたハイチのジョブネル・モイーズ大統領。2020年1月11日。
REUTERS/Valerie Baeriswyl
- ハイチのジョベネル・モイーズ大統領が自宅で暗殺された。
- 彼は、国民の不安と反政府デモ、辞任要求に直面していた。
- 同国の警察は容疑者4人が死亡し、2人を逮捕したと発表した。
- 大統領は12発の弾丸を受けていた。
- その後、容疑者としてアメリカ人が逮捕された。
アメリカ人2人が逮捕されたとAP通信が報道
AP通信によると、ハイチ大統領の暗殺事件に関連して、アメリカ合衆国の市民権を持つ2人が逮捕されたという。
ハイチ当局のマティアス・ピエール(Mathias Pierre)がAPに語ったところによると、この事件に関連して逮捕された6人のうち、2人がハイチ系アメリカ人だったという。そのうちの1人、ジェームズ・ソランジュ(James Solange)は、ウェブ上に、ポートオプリンスにあるカナダ大使館の元ボディーガードとするデータがあったが、詳細は確認されていない。
暗殺されたハイチ大統領は12発撃たれていた
同地のカール・アンリ・デスタン(Carl Henry Destin)副司法長官は、地元紙「Le Nouvelliste」に対し、モイーズ氏は大口径と小口径の2種類の武器で撃たれたと述べた。
また、モイーズ氏の寝室とオフィスは襲撃者によって荒らされたとも述べている。
7日の夜、暗殺者と思われる4人が警察との銃撃戦で死亡し、他の2人が逮捕
同国の警察は、7日の夜、大統領暗殺に関与したと疑われる4人が、警察との銃撃戦で死亡したと発表した。その他、2人が逮捕されたという。
警察署長のレオン・シャルル(Léon Charles)は、人質になっていた3人の警察官が解放されたと述べた。
記者会見で彼は「警察は襲撃者と交戦中だ。銃撃戦で彼らが死ぬか、あるいは我々が逮捕するかだ」と述べた。
モイーズ氏は7日の午前1時頃、自宅で武装した襲撃者たちに銃撃され死亡した。
ハイチの暫定首相のクロード・ジョセフは、「正体不明のグループ(スペイン語を話す者もいた)が大統領の私邸を襲撃し、国家元首に致命的な傷を与えた」と述べている。
大統領夫人のマルティーヌ・モイーズ氏もこの攻撃で負傷し、治療を受けている。
ハイチのジョベネル・モイーズ(Jovenel Moïse)大統領が2021年7月7日午前1時頃、自宅で正体不明の襲撃者によって暗殺され、ファーストレディも負傷したとハイチ政府が公式声明を発表した。
53歳のモイーズ氏は、2016年に物議を醸した選挙で大統領に選出され、2017年2月に就任した。勝利演説では、地元のホテルで歓声を上げる観衆に向けて、「我々は、次の世代が誇りを持てるように、この国をポジティブにする歴史の新しいページを記す」と述べた。
ハイチは世界の最貧国の一つであり、治安の悪さ、政情の不安定さ、汚職などに悩まされてきた。モイーズ氏が大統領を務めていた間も、ハイチでは国内情勢の悪化に対する不満が高まり、市民の不安が増大した。
2018年夏から、モイーズ氏は燃料不足、インフレ、犯罪の増加、開発資金の不正流用、汚職などをめぐって反対運動が起こるようになった。
彼はその後ずっと、反政府デモの波に直面していた。
ハイチの指導者に対する不満は、国内の課題を解決するために使われるはずだった数百万ドルの資金を、モイーズ氏をはじめとする政府関係者が懐に入れたという疑惑に起因しているが、問題はそれだけではなかった。
不安が高まる中、ハイチの首都ポルトープランスやその他の都市では、何千人もの人々が集まって政府への抗議を行った。反政府デモでは、火災が発生したり、人々が警察と激しく衝突したりした。
2021年3月、警察と衝突する反政府デモ参加者。
Sabin Johnson/Anadolu Agency via Getty Images
抗議活動が活発化し、退陣を求める声が上がる中、モイーズ氏は2019年2月、退陣しないと表明し、「国を武装ギャングや麻薬密売人の手にゆだねることはない 」と述べた。
議会選挙の延期を受けて、モイーズは2020年1月から大統領令による統治を行い、大統領の権限を強化する憲法改正を進めていた。
この憲法改正案は、過去の指導者による不正行為を受けて行政権を弱めようとした努力を帳消しにする可能性があり、不人気で大きな批判を浴びた。
また、大統領の任期をめぐっても、野党は2021年2月7日に任期を終えるべきだったと主張し、モイーズ氏はまだ1年あると主張するなど、緊張感が高まっていた。
地元の弁護士で人権派のリーダーであるゲデオン・ジャン(Gédéon Jean)は、1月にマイアミ・ヘラルド紙に「彼は、権力を維持し、国を統治する唯一の人物であり続けるために、あらゆる手段を駆使している」と語った。
モイーズ大統領が提案した憲法改正のための国民投票案を糾弾するデモを行う人々。2021年3月28日、首都ポルトープランスで。
Sabin Johnson/Anadolu Agency via Getty Images
2月7日、モイーズ政権はクーデターと暗殺の企てを阻止し、23人を逮捕したと発表した。
その後、モイーズ政権は、抗議行動や国内の不安が再燃する中、首都での警察活動を強化した。さらにモイーズ氏は「反クーデター」と呼ばれる作戦を展開し、野党が大統領候補として挙げていた政府関係者を失脚させた。
反対派の人々は、モイーズ氏が新たな独裁体制を築こうとしていると主張していた。
誰がどのような動機でモイーズ氏を殺害したのかは不明だが、ハイチのクロード・ジョゼフ(Claude Joseph)暫定首相は、この攻撃を「不快、非人道的、野蛮」と非難し、大統領は「卑劣にも暗殺された」が「彼の考えを暗殺することはできない」と述べた。
[原文:Assassinated Haitian president Jovenel Moïse's time in power was marred by waves of protests and demands for his resignation/Live updates: Haiti says 4 suspects in president's assassination have been killed by police and 2 others arrested]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)