AQUOS R6がついに発売に。特徴はなんと言っても、ライカ共同開発のカメラだ。
撮影:林佑樹
6月25日よりNTTドコモとソフトバンクでの販売が開始したシャープの新型スマートフォン「AQUOS R6」。直販価格はNTTドコモで11万5632円、ソフトバンクで13万3920円(いずれも税込、一括購入時)。
ドイツの高級カメラメーカー・Leica(ライカ)との全面協業によるカメラやレンズ、画質の調整など撮影システム開発に加えて、スマホとしては大型の1インチセンサーを搭載し、コンパクトデジタルカメラにより近づいた。
また、「AQUOS R」シリーズに属するも、AQUOS R6からブランドをリフレッシュし、新しい切り口を選んだ端末でもある。
「iPhone 3G」で撮影してそのままインターネットにアップロードできる驚きから、約13年。すっかり日常的になったスマホカメラに大きく斬り込むAQUOS R6を見ていく。
縦長の有機ELディスプレイを搭載したハイエンド機
AQUOS R6は6.6インチの有機ELディスプレイを搭載する。
撮影:林佑樹
AQUOS R6は6.6インチ、サイズは約74mm(幅)×162mm(高さ)×9.5mm(厚さ)で、最近ではよく見るよ うになった縦長の端末だ。画面はPro IGZO OLED(有機EL)。発色がよくメリハリのある画面が特徴だ。
コントラスト(明暗)比2000万対1、輝度ピーク2000ニットとHDR対応の映像の視聴も楽しい。また専門的になるが、ディスプレイは1Hz~120Hz駆動に対応しており、画面内に動く要素がない場合は1Hzにすることでバッテリーライフを長くしている。逆に動きがある場合は120Hzで動かし、なめらかな映像になる。
ただ、これはアプリ次第であり、すべてのシーンで恩恵があるわけではない。
「ライカスマホ」としての実力
AQUOS R6の背面。上部に大きなレンズが鎮座している。
撮影:林佑樹
特徴として挙げられるのは、カメラがLeicaとの全面協業であること。ハードとソフト両方の開発にLeicaがかかわっている。レンズはLeicaブランドで知られる名称(ズミクロン)が使われ、純正カメラアプリでの撮影データの処理も、これまでのAQUOS Rシリーズとは全く違う。
オフィシャルサイトには「あなたが見たもの見たそのまま」とある。実機のファーストインプレッションもおおよそこの通りだ。
写真の絵作りに、派手というよりは「空気感」がある。
いま、スマホのカメラ機能は半導体の高い性能を生かして、コンピュテーショナル・フォトグラフィー(AIによる一種のCG処理で高画質化する)へ舵を切っている。これは、光学性能を追求して高画質化してきた従来型のカメラとは異なった進化といえる。AQUOS R6はレンズとセンサーを重視しており、出力される絵としてはミラーレスなどいわゆるカメラ的だ。
国内メーカーで見ると、Xperiaシリーズが同様の路線なるも、それ以上にストイックなカメラを目指したようだ。
AQUOS R6は1インチ2020万画素センサーに、19mm相当のレンズを搭載する。
撮影:小林優多郎
最近のメリハリの効いた派手な絵作りのスマホのカメラに慣れている人からすると「渋い雰囲気」に感じるかもしれない。
逆にミラーレスカメラなど本格的な機材に慣れた人からすれば、豊富な階調に目が行くはず。といったことを踏まえると、やや玄人向け感が強い。
曇空下で色合い・ズームチェック:質感は良好、ボケも自然
試用機材が届いたのが梅雨時期だったため晴天下で撮影できていないが、作例を見ていこう。
曇空下での撮影になり、注目ポイントは「石の再現具合」になる。また背景を見ると緑が多いが、その色合いも判断にいい。
傾向としては、質感は良好で、緑の階調も豊富。また1.2倍、等倍、2.6倍と掲載しているが、画質への影響が軽微であることもわかるだろう。
1.2倍(初期状態)。
撮影:林佑樹
等倍(19mm相当)。
撮影:林佑樹
2.6倍。やや画像が粗く感じるのだが、スマホ画面上では気にならないレベル。
撮影:林佑樹
また、画質の要であるイメージセンサーのサイズが大きいこともあり、光学的な背景ボケをつくりやすい。今やiPhoneをはじめとして「ソフトウェア的に背景ボケを演出するモード」はほとんどのスマホに実装されている。ただ、いまのところ自然な美しさという点では、まだ光学的なボケのほうが高性能だ。
AQUOR R6では、細かいオブジェクトであっても、ちゃんとボケが生じるほか、自然なボケであるのもポイント。ちょっと近いオブジェクトを撮影するだけで被写体の前後が美しくボケるのは、これまでのスマホのカメラではあまりなかった体験だ。
ソフトウェア処理でボケを演出する場合、格子の隙間などをボカすのは苦手。だが、AQUOS R6の場合は光学的にボケるので、まったく問題なし。
撮影:林佑樹
町中の写真で見てみると、階調が飽和している様子もなく、やはり渋い雰囲気になった。雨のしっとり具合も出ており、なかなかいい。もっとも、こういう絵作りが好みかどうかは個人差はあるだろう。
雨天時の作例。
撮影:林佑樹
夜間撮影はリアルに近い。水や金属は光沢が出る
夜間の撮影では、かなり「夜らしい雰囲気」になり、コンピュテーショナル・フォトグラフィーが得意とするエモーショナルな夜景とは路線が異なる。
また、通常モードだと1〜2秒ほどのシャッタースピード(露光時間)となるが、手持ちでもブレにくい。逆にナイトモードを選ぶと3秒以上の撮影になりやすく、手持ちでは高い確率で失敗する。
夜間に撮影。
撮影:林佑樹
夜間に川を撮影。
撮影:林佑樹
個人的に気に入っているのは水の表現と金属の光沢だ。雑に撮影してもそれっぽくなり、“ほどよくヌメヌメした絵”になる。この点はセンサーの性能によるところが大きい。
ひと昔前にインスタで流行っていた路線とは異なり、とても世界に忠実な出力だ。
撮影:林佑樹
上記のサンプルショットは、純正カメラアプリを立ち上げて、そのまま撮影したもの。AIによる自動判定が走っており、人間や食べ物、花などを検出すると、それに適した色合いに変更される。
これは夜間モードも含まれており、基本的には撮ることに専念できるつくりで、冒頭の渋い雰囲気よりもメリハリのある色合いになりやすい。
あじさいの作例。
撮影:林佑樹
シーンを識別する「AIモード」の実力は?
AIモードと、同モードをオフの場合で比べてみよう。
最短撮影距離は被写体から18cmほど。被写体に寄りすぎるとフォーカスが合わないと警告が表示されるため、ご飯系の写真はちょっと難しい。また自然に生じる光学的なボケもあるため、テーブル写真は少し引き気味が無難だ。
AIモードオン。
撮影:林佑樹
AIモードオフ。
撮影:林佑樹
意外に「ゲーム向け機能」がゲーム以外にも便利
側面が丸みを帯びたディスプレイなので、意外と触れた手のひらがタップ扱いされがち。
撮影:林佑樹
有機ELディスプレイの表示品質の秀逸さは店頭で実機をチェックしたらすぐに分かる。そこでここでは本体の機能をいくつか見ていく。
本体に関連する設定は色々あるが、「AQUOSトリック」画面に集約されている。用途と本体形状からオススメなのは「ゲーミングメニュー」だ。
AQUOSトリック(写真左)は設定をひとまとめにしたものになる。その中のゲーミングメニュー(写真右)には、通知のオフなどもある。
画像:筆者によるスクリーンショット。
説明にはゲームに役立つとあるが、厳密にはゲームアプリ以外にも適用可能。とりわけ、「エッジコントロール」の出番は多い。エッジコントロールとは、上下左右の画面端のタッチ感度を大きく低下させるもので、例えばマップやブラウザの操作中に手のひらが画面端に触れてしまうときに便利だ。
登録ゲーム設定に表示されるアプリであれば、ジャンルは関係ない。
画像:筆者によるスクリーンショット。
AQUOS R6は画面中央やや下に指紋センサーを内蔵している。面積が広く、かつ取得精度も良好だ。AQUOS R6の指紋認証は、登録時にもたいていはスキャン1回で瞬時に完了するので、初めて触る人は驚くはずだ
また指2本分の指紋でのアンロックも設定可能になっており、生体要素が増えたぶん、セキュリティーを高くできる。
AQUOS R6の画面内指紋センサー。
撮影:小林優多郎
AQUOS R6の実機の印象は、前評判の高い「カメラ」だけではなく、ハードウェアそのものの性能、そして、ソフト的な完成度も高い、というものだった。そのため、カメラ+これまで通りのスマホライフを楽しめるし、写真や動画編集にトライしてみるのも良いかもしれない。
ともあれ、写真についてはストイックに楽しみたい人向けのスマホだ。
林佑樹:1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、先端科学までに適応するほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影をテーマとしている。