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- 新たな研究では、デルタ株に対しては、1回のワクチン接種ではあまり効果がないことが示された。
- 研究者は、ファイザーとアストラゼネカの両方のワクチンを用いて実験室で実験を行った。
- また、他の研究では、部分的にワクチンを接種した人は、デルタ株による症状が出やすいことが示された。
ワクチンはデルタ株に対しても効果があるが、その効果の程度はワクチン接種を完了しているかどうかに大きく依存しているようだ。2021年6月8日にネイチャー(Nature)誌に掲載された研究によると、ファイザー(Pfizer)やアストラゼネカ(AstraZeneca)のワクチン(いずれも2回の接種が必要とされている)を1回接種しただけでは、デルタ株に対する効果が弱いか、まったくないことがわかった。
研究者は、今回の実験をワクチン接種を受けた人の血液サンプルを使って実験室で行った。その結果、1回の接種では、デルタ株の中和抗体ができたのはわずか10%だった。これは、症状を伴う感染からある程度は保護されることを示している。しかし、2回の接種を行った検体では、95%にデルタ株に対する中和抗体ができた。
研究者は、デルタ株はワクチンによる免疫保護を「部分的に、しかし著しく(partially but significantly)逃れることができる」と結論づけた。
このような実験結果は必ずしも現実の世界に直結するものではないが、他の研究でも同様に、デルタ株に対しては1回のワクチン投与では効果が薄いことが示されている。
5月にイギリスで行われた分析では、デルタ株に対して、ファイザーまたはアストラゼネカのワクチンを1回接種した場合の効果は、わずか33%だった。しかし、2回接種すると、ファイザーでは88%、アストラゼネカでは60%の有効性が得られた。また、デルタ株への感染による入院を防ぐ効果は、ファイザーのワクチン2回接種で96%、アストラゼネカ2回接種で92%だった。
17歳のジャミレット・モタは、移動診療所で看護学生のジョセリン・ソラノからファイザー製ワクチンの接種を受けた。2021年4月20日、カリフォルニア州ロサンゼルスで。
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一方、まだ査読が終わっていないカナダの研究論文では、ファイザーの注射を1回投与した場合、2週間後のデルタ株による症候性感染の予防効果は56%だった。同じくアストラゼネカは67%、モデルナ(Moderna)は72%だった。デルタ株による入院を防ぐ効果については、ファイザーが78%、アストラゼネカが88%、モデナが96%だった。
同じ研究では、デルタ株による症候性感染に対して、2回の接種後、ファイザー社のワクチンは87%の有効性を示した。しかし、研究者はアストラゼネカとモデルナに関しては十分なデータを得ていない。
これらの研究結果を総合すると、アメリカやイギリスなど、多くの国でデルタ株が主流になっていることから、ワクチンを1回だけ接種した人は、過去数カ月間よりもCOVID-19の症状が出やすくなっている可能性がある。
アメリカでは、人口の約48%がワクチン接種を完了しており、55%が少なくとも1回の接種を受けている。しかし、いくつかの州では、1回接種した人と完了した人の差が全米の平均よりも広がっている。アーカンソー州の保健局長であるホセ・ロメロ(José Romero)博士がInsiderに語ったところによると、2週間前の時点で、ファイザーとモデナのいずれかのワクチンの初回接種を受けた人のうち、15%が2回目の接種を受けていないという。ロメロ博士によると、多くの場合、1回目の副作用のために躊躇しているのだという。
「2回のうち1回を接種した後、2回目の接種までの有効期間内、つまりワクチン接種後42日以内に打たない人がかなりの割合で存在する。これでは、本来の予防効果が得られない」
[原文:One vaccine dose isn't enough to protect against the Delta variant, new research shows]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)