西村氏「酒提供店に金融機関から働きかけ」 発言、与党幹部からも苦言→一日で撤回【UPDATE】


西村康稔・経済再生担当相

西村康稔・経済再生担当相

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【UPDATE】酒類提供を続ける飲食店について、西村康稔・経済再生担当相は飲食店と取引のある金融機関から提供停止を働きかけるよう要請する方針を示していたが、加藤勝信官房長官は9日午後の会見でこの方針を撤回すると明らかにした。

加藤官房長官は、西村担当相から「コロナ室では、関係省庁から個別の金融機関への働きかけは行わないこととした」と連絡を受けたと話した。

自民党の森山裕国対委員長と林幹雄幹事長代理は9日昼、西村担当相の発言について「大臣の発言は極めて重い。できるだけ国民の理解を得られるよう気をつけてほしい」と官邸側に申し入れていた。

菅義偉首相は9日朝時点で、西村担当相の発言について「承知していない」としていた。(2021/07/09 18:20)


酒類提供を続ける飲食店について、西村康稔・経済再生担当相が飲食店と取引のある金融機関から提供停止を働きかけるよう要請する方針を示したが、これについて与党内から懸念の声が出ている。発言直後から金融機関の優越的地位の濫用につながると批判があった。

東京都では7月12日から緊急事態宣言の期間に入るが、小池百合子知事は7月9日の定例会見で西村担当相の発言について「どういう形で進めていくのかについて語られたものだと思う」と静観する姿勢を見せた。

西村担当相、酒類提供続ける店は「金融機関から働きかけを」

西村担当相が示した案。これは西村担当相が8日の会見で発表したものだ。休業要請や時短要請、酒類の提供停止に応じない飲食店の情報を金融機関に提供するという。ただ、この案は金融機関の優越的地位の濫用にあたる可能性が指摘されている。

加えて西村担当相は、お酒の卸売業者など酒販業者に対し、酒類提供を続ける飲食店との酒類取引停止を要請する案も示した。

西村担当相は「酒類の提供停止を徹底するため」と説明している。だが、この案にも「政府の要請に法的根拠はあるのか」といった懸念や、商取引・営業の自由を侵害するおそれを指摘する意見もある。

一方、要請に応じる事業者には協力金の「先払い」ができる仕組みの導入を目指すという。

与党内からも批判「働きかけは行政がやるべき」

西村担当相の案には、与党からも懸念の声が出ている。

自民党の平将明衆院議員は「働きかけは行政がやるべきで、金融機関を使ってプレッシャーをかけることは止めるべきだ。資金繰りの苦労をしたことのない官僚ばかりが集まって施策を決めているのではないか。党にも働きかける当然、政府にも」ツイートした。

菅首相は「承知していない」

菅義偉首相は9日朝、西村担当相の金融機関への要請をめぐる発言内容について問われると「どういう発言をされたか承知していない」と発言。

報道陣から「優先的地位の乱用につながらないか」と問われると、菅首相は「そうした趣旨での発言は絶対にしないと思う」と述べた。

小池知事「急所の飲食、どう絞るかの言及と思う」

会見する小池知事(2021年7月9日)

会見する小池知事(2021年7月9日)

撮影:吉川慧


実際に事業者と向き合い新型コロナ対策を実行する自治体は、西村担当相が示した案をどう捉えてるのか。

7月9日の定例会見で、西村担当相の金融機関への働きかけ要請発言についての受け止めを問われた小池知事は「緊急事態宣言は極めて重要な、効果を挙げていくという思いは私も同じ」と理解を示した上で、「どういう形で進めていくのかについて語られたものだと思う。急所である飲食の部分をどう絞っていくのか、その点について言及されたものと思う」と静観した。

都は、緊急事態期間中の要請に応じた飲食店などに協力金を支給する。全面的に協力した場合、売上高に応じて1店舗あたり中小企業には168万円〜840万円、大企業には上限840万円を支給する予定だ。

一夜明け、西村担当相は釈明 融資制限は否定

一夜明けて、西村担当相は自らの発言について、要請に従っている事業者との「不公平感の解消」のためと釈明。「一般的な日常の中でそうした働きかけを行っていただければ」「金融機関から文書で働きかけるということではない」とし、融資を制限するものではないとした。

加藤勝信・官房長官も9日の会見で、西村担当相の発言について「飲食店に対する融資の制限を行う趣旨ではない」との見解を示した。加藤官房長官は「金融機関は事業者との接触がある。あくまで、お互いに感染防止に気を付けていきましょうということ」と述べた。

緊急事態宣言下での東京オリンピックに

政府は東京都に発出している「まん延防止等特別措置」を7月12日から「緊急事態宣言」に切り替える。期間は8月22日まで。

安倍晋三首相や菅義偉首相が「コロナに打ち勝った証し」として開催意義を語ってきた東京オリンピック(7月23日〜8月8日)は緊急事態宣言の期間で開かれることになった。1都3県では「無観客」での開催も7月8日夜、5者協議で決まった

東京都内では7月9日、聖火リレーがはじまった。ただし、島しょ部を除いて公道での実施は中止に。代わりに各地で点火セレモニーが催される。

※資料:東京都の緊急事態措置の内容(2021年7月8日)

(文・吉川慧)

※情報を更新しました(2021/07/09 23:40)

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