「ツー・シンプル」のような自動運転トラック企業が上場し始めている。
Courtesy of TuSimple
- 自動運転車両はまだ実用化されていないが、この新しい業界が急速に進化しているには間違いない。
- この分野で優位に立ちたいと考えている人にとっては、トレンドを把握することが重要だ。
- ロボトラックの台頭からSPAC(特別買収目的会社)バブルまで、自動運転車について今すぐに知っておくべきことを紹介する。
1. 自動運転技術は、ウーバー(Uber)のドライバーに取って代わる前に、荷物や食べ物を配達する
2010年代、自動車メーカーやスタートアップ企業は、2020年代初頭には自動運転のタクシーや一般車両が登場すると確信していた。しかし、アリゾナ州やネバダ州の一部でロボタクシーが一般に公開されているくらいで、その予測はほとんど外れている。
長距離トラックでの輸送や地域の配送は、ロボタクシーに比べて技術的な課題が少なく、ビジネスモデルとしても優れているため、近い将来、より有望なアプリケーションになると考えられている。
ニューロ(Nuro)、ガティック(Gatik)、ツー・シンプル(TuSimple)などのスタートアップ企業は、すでにウォルマート(Walmart)やユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service, Inc. :UPS)などの顧客のために配達を行っている。自動運転システム開発企業であるオーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)は、ロボットタクシーの分野ではトップ企業の1社と見られているが、乗用車よりも先に、自動運転セミトラックの発売に注力することを決定した。
2. 業界のリーダーたちが誕生した
近年、自動運転の業界では「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がっており、一部の企業が事業を放棄する一方で、自動車メーカーと提携したり、潤沢な資金を持つ買い手に売却する企業も出てきている。このような状況の中で、自動運転業界には明確なリーダーが生まれ、新規参入企業が挑戦することは困難になってきている。
ウェイモ(Waymo)は、だれもが認めるナンバーワンに浮上した。同社は、アメリカで唯一の自動運転配車サービスを運営しており、ステランティス(Stellantis)やダイムラー(Daimler)などと提携し、業界最大の資金調達額を誇っている。
専門家は、クルーズ(Cruise)、アルゴAI(Argo AI)、オーロラ(Aurora)、モーショナル(Motional) といった同様の企業をそのすぐ下にランク付けしている。各社とも10億ドル(約1101憶円)以上の資金を調達しており、オーロラを除いて、2023年末までに配車サービスや配送サービスを開始する計画を発表している。オーロラは同社の車両を「今後数年のうちに」商用の配車サービスに利用できるようにする予定だと述べている。
3. 株式上場の第一波が始まった
2020年から2021年初頭にかけて、株式市場では、まだ収益を生んでいない電気自動車関連のスタートアップ企業の上場が相次ぎ、自動運転のスタートアップ企業も後を追い始めている。
自動運転トラックに注力しているツーシンプル、エンバーク(Embark)、プラス(Plus)の3社は、2021年に入って、上場したか、今後数カ月のうちに上場する意向を表明しており、オーロラとアルゴAIは2021年後半に上場を検討していると報じられている。
自動運転技術を独占的に提供する企業は、出資者にテスラ(Tesla)のような利益をもたらす可能性があるが、この業界の進歩は遅れている。数十億ドル(数千億円)の資金と10年以上の開発期間を経ても、全国規模、あるいは州規模の自動運転サービスはまだひとつも実現していない。一般の投資家がどれだけ忍耐強くいられるかはわからない。
4. イーロン・マスクの自動運転戦略が物議を醸している
自動運転技術は、特定の環境下である程度の運転を行うことができるが、トラブルが発生した場合はドライバーが運転を引き継ぐ必要があるシステムと、ドライバーの監視なしに運転できるシステムの2つに大きく分かれる。
テスラのオートパイロット機能は前者のカテゴリに分類されるが、同社はそれを後者のカテゴリーに押し上げようとしている。同社は、オートパイロットが処理できるタスクの数と、走行可能な環境の範囲を徐々に増やしてきた。
テスラのイーロン・マスク(Elon Musk)CEOは、このアプローチが、ドライバーや乗客の安全性を向上させると考えている。テスラは、オートパイロットを有効にした車両の事故率が低いというデータを公表しており、テクノロジーを向上させるためのより大規模で優れたデータセットを提供している。しかし批評家たちは、テスラの戦略は強固な自動運転システムを実現する可能性が低く、無謀であると批判している。なぜならば、ドライバーに誤った自信を持たせてしまい、オートパイロットがミスをした場合にドライバーが備えを怠ってしまうからであるという。
批評家たちは、この機能に関連する死亡衝突事故を指摘し、テスラが発表した事故統計に、オートパイロット機能がドライバーに安全をもたらすことを証明するのに十分な詳細事項が含まれていないと主張している。
もし、イーロン・マスクが正しいのならば、テスラは自動運転の一般消費者向け車両を販売する最初の企業になる可能性がある。このシナリオのままであれば、衝突事故を減らし、ライバル企業が追随できない大きなセールスポイントを同社に与えることになるからだ。一方、マスクへの批判が正しければ、テスラはドライバーがそのリスクに注意を払わなくなる不完全な技術を抱え込むことになってしまう。
5. ある業界が盛り上がっている
「LiDAR(ライダー:light detection and ranging)」とは、近くにある物体にレーザー光を当ててその距離を測定するリモート・センシング技術のことで、自動運転には不可欠なものだと業界のほぼすべての企業が認識している。そのためLiDARを開発している企業は、合併や買収のターゲットとしても魅力的である。これまでにLiDARを開発する多くのスタートアップ企業が、SPAC(特別買収目的会社)と提携したり、オーロラやアルゴAIなどの自動運転車メーカーに買収されている。
しかし、LiDAR業界はすべてを自動運転車に依存しているわけではない。ボルボ(Volvo)は2022年から車両にセンサーの導入を予定しており、アップル(Apple)はiPhoneやiPadへの搭載をすでに開始している。LiDARのスタートアップ企業、アエヴァ(Aeva)のCEO、ソロウシュ・セールヒアン(Soroush Salehian)は、このセンサーはカラーカメラが登場したときと同じように、消費者向けのテクノロジーに影響を与えると信じているという。
[原文:5 trends in self-driving cars anyone trying to get ahead in the industry needs to know about]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)