ウォーレン・バフェット(左)とビル・ゲイツ(右)。
Reuters/Jason Lee
- ウォーレン・バフェットは2020年、ゲイツ財団のCEOに「ABC」について警告した。
- 巨大組織にとっての脅威は、「傲慢(Arrogance)」、「官僚主義 (Bureaucracy)」、「自己満足(Complacency)」だという。
- バフェットは同財団へ330億ドルを寄付しており、かつて「ABC」を「企業のがん」と呼んだ。
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)はビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)のCEOに、同財団の最大の脅威は「暴慢、官僚主義、自己満足」であると警告した。投資家でバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のCEOを務めるバフェットは、同財団に330億ドルを寄付し、2021年6月に同財団の理事を辞任しているが、彼は過去にも「ABC」について警告したことがある。
マーク・スズマン(Mark Suzman)は2020年初めに同財団のCEOに就任し、すぐにバフェットの地元、ネブラスカ州オマハを訪れ、彼と食事をともにしてアドバイスを受けた。
「その時、彼は、私の最も重要な仕事はあらゆる巨大組織が直面する『ABC』リスク、つまり、『傲慢(Arrogance)』、『官僚主義 (Bureaucracy)』、『自己満足(Complacency)』からから財団を守ることだと言った」と、スズマンは同財団職員へ送信したEメールで述べた。
バフェットは2006年に、財産の99%以上をゲイツ財団を始めとする4つの財団に寄付することを約束し、2021年6月にその半分を達成した。スズマンに対する彼のアドバイスは驚くことではない。バフェットはバークシャー・ハサウェイの株主に対して送った2014年の文書で、彼が退任した後の後任者にとって大きな仕事は、それらの脅威を防ぐことだと書いていた。
「後任者は、別の強さが必要になる。ビジネスの崩壊を招く『ABC』、つまり『傲慢(Arrogance)』、『官僚主義 (Bureaucracy)』、『自己満足(Complacency)』と戦う力だ」と、彼は述べた。
「これらの企業のがんが蔓延すると、強い企業でさえ低迷することになる」
バフェットは、かつて業界で揺るぎない地位を築いたと考えられる大手企業の例として、ゼネラルモーターズ、IBM、シアーズ、USスチールなどを挙げ、「私が嘆くような破壊的な行為は、結果的にこれらの企業を、CEOや幹部が想像もしなかった深みにまで落とすことになった」と語った。
バフェットは、バークシャー・ハサウェイ社を官僚主義を最小限に抑えるための構造にしたとその文書の中で述べている。信頼の文化で支えられている同社の分散型ネットワークは官僚主義への理想的な対抗策として機能していると、彼は述べた。同社は本社に人事、広報、IR、法務、買収などの部署を持たないことで効率性を上げ、費用を削減しているという。
バフェットは、2009年の株主向けの文書では、ABCの「B(官僚主義)」について取り上げている。
「堅苦しい官僚的システムによって意思決定が遅すぎることで、多くの目に見えないコストを負うくらいであれば、誤った意思決定による目に見えるコストで苦しむ方がましだ」と、バフェットは語った。
「ABC」を最も嫌うバフェットであれば、スズマンに対して、ゲイツ財団のABCによる崩壊を防ぐことが第一だと述べたのは、当然のことだろう。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)