電気自動車(EV)スタートアップの有望株、ルーシッド・モーターズ(Lucid Motors)のトップがInsiderのインタビューに応じた。
Lucid Motors
この1年、電気自動車(EV)スタートアップが特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて次々と株式公開を果たした。
しかし、そのうち数社は早くも「成長痛」に見舞われている。
上場後に事業計画を大幅縮小して経営陣が辞任したカヌー(Canoo)、技術開発に関する虚偽報告疑惑からゼネラル・モーターズ(GM)との資本提携解消に至ったニコラ(Nikola)、予約注文数の水増しなどから上場まもなく経営陣が辞任したローズタウン・モーターズ(Lordstown Motors)は、いずれも株価の低迷が続いている。
しかし、群雄割拠のEV市場でも有望株とみられるルーシッド・モーターズ(Lucid Motors)のピーター・ローリンソン最高経営責任者(CEO)は、Insiderの取材に対し、競合他社が出だしからつまずいたことには何の驚きもないと語った。
ローリンソンは、EVスタートアップのほとんどが最後には市場から退場することになると考えている。競合他社と差別化を図る技術をそもそも持ち合わせていないか、あるいは自動車メーカーを立ち上げた実績を持つ経営陣がいない、というのがその理由だ。
「EVスタートアップの95%が失敗するでしょう。電気自動車を開発・販売するのがいかに大変なことかが全然わかっていない」
ローリンソンは2013年にルーシッドにジョインする前、イーロン・マスク率いるEV最大手テスラで「モデルS」開発チームの責任者を務めていた。
当時、他のEVスタートアップが次々と撤退するなかでテスラが成功できたのは、テクノロジーとエンジニア人材を巧みに集め、既存のプロダクトとはまったく異なるセダン「モデルS」を生み出したからだとローリンソンは説明する。
「競合他社を見ていると、何もかもアウトソーシングでやっているところが多い。実はその状況は10年前も同じでしたが、そのなかで何もかも自前でやってのけようとしたところが1社だけありました。それがテスラだったのです」
ルーシッド・モーターズはここ数週間のうちに、特別買収目的会社(SPAC)チャーチル・キャピタル・コープIV(Churchill Capital Corp.IV)との合併手続きを終え、上場を果たすことになる。
テスラでやったのと同じように、ローリンソン率いるルーシッドはモーターや電池パックなど主要パーツの多くを自社で設計している。
Insiderによる2020年のインタビューでローリンソンは、内製化の道を選んだことで、パフォーマンスを犠牲にすることなく、なおかつ広い室内空間を維持したまま、より小型で高効率のパワートレインを開発できたと語っている。
同社によると、2021年に市場投入する最初のモデル「エア(Air)」は、フル充電1回で500マイル(約805キロ)以上走る初めての消費者向けEVになるという。
ローリンソンは、内製化以外のルーシッドの強みとして、テスラやアルファベット傘下のウェイモ(Waymo)、自動車大手フォード(Ford)出身のベテランを含む 「ワールドクラスの」エンジニアと経営陣の存在をあげる。
「私たちルーシッドにあって他のスタートアップにないのは、EVを生み出した経験です」
ローリンソンは、ルーシッドのライバルたりえるEVスタートアップは1社しかないと考えている。
それはアマゾンやフォード、資産運用大手ブラックロックなどが出資するリビアン(Rivian)だ。
リビアンはルーシッド同様、堅固な経営体制と素晴らしい技術を擁する企業だとローリンソンは語る。彼がとくに高く評価するのは、電池セルを格納するスペースを広げると同時に電池パックの効率を向上させる冷却システムなど、電池パック全体の設計の秀逸さ。
さらに、ローリンソンはリビアンのブランド戦略、プロダクト戦略も絶賛する。
リビアンは、他のEVメーカーがあまり注目してこなかったアウトドア愛好者に照準を定め、ピックアップトラック「R1T」と多目的スポーツ車(SUV)「R1S」をデビューさせた。
いずれもオフロードでの使用を想定し、キャンプに便利な機能を搭載。同社ウェブサイトではダートや岩場、砂地を走り抜ける写真が多数公開されている。
ローリンソンはこう語る。
「リビアンは成功するだろうし、ルーシッドも成功すると思います。他のスタートアップは……幸運を祈るばかりです」
[原文:Lucid's CEO explains why he sees Rivian as his only real rival in the race to become the next Tesla]
(翻訳・編集:川村力)