ソフトバンクのオンライン専用ブランド「LINEMO」に月額990円の新プランが登場する。
撮影:小林優多郎
ソフトバンクのオンラン契約専用ブランド「LINEMO(ラインモ)」に、新しい料金プランが登場する。
同社が7月15日から提供する「ミニプラン」は、主に以下のような内容になる。
- 月間データ容量は3GB(超過後は速度を最大300Kbpsに制限)
- LINEのメッセージや音声・ビデオ通話のデータ使用量にカウントしない「LINEギガフリー」を適用
- 基本料金は月額990円(税込)
- 通話料は20円/30秒(税抜)。月額+550円で5分間通話定額(ただし、契約後1年間は無料になるキャンペーンを実施)
ミニプランは、従来のスマホプランに比べ、料金や容量以外にデータ容量超過後の制限スピードや適用できるキャンペーンに差がある。
撮影:小林優多郎
LINEMOは、政府からの携帯電話料金値下げの方針を受け、各キャリアが打ち出した「比較的に低価格で実用的なデータ容量、その代わりに窓口やサポートはオンライン」という特徴のプランの1つ。
各社は「若者向け」などを宣伝文句に展開し、従来のやや複雑な料金体系に対して「シンプルさ」を1つアピールポイントとしていた。
なぜ、LINEMOは開始から約4カ月間で「第2のプラン」の提供に至ったのか。ソフトバンクの常務執行役員である寺尾洋幸氏に聞いた。
「楽天は意識している」低容量・安心のプラン
ソフトバンクで常務執行役員を務める寺尾洋幸氏。
撮影:小林優多郎
寺尾氏は今回のミニプランの狙いを「お客さんの需要として、低容量(プラン)は欠かせない」と話す。
根拠となっているのは、2月にMM総研が公表した調査の結果だ。政府などでも議論されているように「(2020年12月時点では)60.1%のユーザーが3GB以下の通信量」を利用しているという点だ。
ただ、前述の通りLINEMOは“オンラインでのみ”契約でき、「7割近く(の契約者)が30代以下」(寺尾氏)のプランだ。そういった若いユーザー層とエントリー向けのイメージが強い「月間3GB」という料金設計は相容れないのではないか。
MM総研の調査によると、「(2020年12月時点では)60.1%のユーザーが3GB以下の通信量」で利用している。
撮影:小林優多郎
月額3GBのニーズへの質問に対し、寺尾氏は「より多くの若い方に対応できるんじゃないか」と話す。その根拠が、3月30日にソフトバンクの完全子会社となったMVNO(格安SIM)事業者「LINEモバイル」のユーザー層だという。
LINEモバイルは音声通話付きプランでも1100〜3200円という低価格さがウリ(現在は新規申し込み終了)だが、LINEモバイルも「8割ぐらいが若年層」(寺尾氏)とし、「若い人でもコストをセーブしたい(ニーズは)必ず出てくる」と寺尾氏は分析している。
2021年7月15日時点の各社ホームページの情報を元に作成。オプションやキャンペーンなどは除いている。
作成:小林優多郎
ある意味ではそのようなユーザーに対し、うまくアプローチできていると言えるのは楽天モバイルだ。
楽天モバイルは月間データ使用量が1GBまでなら0円、3GBまでなら1078円、20GBまでなら2178円、それ以降は自社回線エリア内であれば最大3278円という、他3社のオンライン専用プランとは、やや風変わりだが比較的低廉なプランを提供している。
寺尾氏は楽天モバイルのプランについて「楽天は意識している」と語り、新プランの企画の際にも同様な段階制プランも検討した事実を述べている。
ただ、最終的にミニプランは月3GB・月額990円のプランで、段階制を採用しなかった理由としては「お客さんから見たときにコントロールできない部分が出てくる」としている。
「ahamoと比べるとまだまだこれから」
LINEMOは、特に30代以下の満足度が高いことをアピール。
撮影:小林優多郎
LINEMOはソフトバンク初のオンライン専用プランかつ、NTTドコモやKDDIから先駆けて「eSIM(ソフトウェア式の物理カードのないSIM)」を導入したことで、一般ユーザーから見れば、やや混乱含みのスタートを切った。
寺尾氏はLINEMO提供開始からの約4カ月間を振り返り、累計400以上の改修をすることで、同サービス内の顧客満足度は向上していると話す。
NTTドコモは5月12日に実施した決算会見で「ahamo」が100万契約を突破したと発表している。
出典:NTTドコモ
ただ、今までそのような価格層は前述のLINEモバイルをはじめ、各MVNO事業者が担ってきた。MVNO事業者(特にソフトバンク回線を利用した事業者)からしてみれば、“MVNO殺し”と思われてもおかしくない内容だ。
ソフトバンクとしては「格安SIMの市場を総ざらいしたい」という意図より、NTTドコモの「ahamo(アハモ)」を非常に意識して今回のプランをリリースした節がある。
NTTドコモは5月の決算会見でahamoの100万契約突破を発表。KDDIの「povo(ポヴォ)」に関しては決算会見で「100万契約弱」と同社の髙橋誠社長が明言。一方で、LINEMOに関しては現時点で明らかになっておらず、業界関係者の中では「ahamoの独り勝ち」という見方もある。
NTTドコモはahamoより安い「エコノミー」なプランを発表する方針だが、いまだに詳細は明らかになっていない(写真は2020年12月撮影)。
撮影:小林優多郎
実際、寺尾氏自身も「ahamoは圧倒的に強い」と話しており、「ahamoと比べるとまだまだこれから」と対抗意識を見せていた。
今回の990円の領域は、まさにNTTドコモが高価格・店頭サポートありの「ギガホ プレミア」「ギガライト」でも、ahamoでもサポートできていない部分だ。
NTTドコモはMVNOと連携してahamoより小容量で低廉な「エコノミー領域」のプランを今後発表するとしているが、いまだに明確な内容は発表されていない。
ソフトバンクとしては、ahamoがエコノミー領域の新プランを発表する前に、LINEMOのミニプランで、「より安く、安心して使える料金」を求める若年層をキャッチアップしたい狙いがあるのだろう。
(文、撮影、図版・小林優多郎)