テスラの車内。
Reuters
- テスラは2021年7月、予定より大幅に遅れて、「完全自動運転」システムのベータ版の最新バージョンを配布した。
- ベータ版のテストドライバーたちは、すぐに運転支援システムの動画をSNSに投稿し始めた。
- 新しいソフトウェアはすばらしく高性能だが、依然としてドライバーを危険な状況に陥らせることがある。
テスラは2021年7月上旬、待望の「完全自動運転(Full Self-Driving)」ソフトウェアのアップデートをベータテスターへ配布した。それはすばらしい内容だったが、依然として車を自律走行させるものではない。
同社は2020年10月に初めて、試作技術を発表し、現在は数千人のロイヤルユーザーがそれを手にしている。それは、主に予測可能な高速道路での運転に適した既存の運転支援システムに、高速道路以外のより複雑な道路での運転を自動化する機能が追加されている。
投稿された動画から、アップデートされた新しいソフトウェアは難しい運転状況を見事に操縦できることがわかるが、危険な不具合や誤作動も多く見られた。
ある動画の中では、対向車が走る標識のない狭い道路で、テスラは自信をもって操縦しているように見える。コンピューターは、減速して、対向車を先に行かせるために車を道の片側に寄せ、進行方向に何もなくなってから前進するというように、人間とほぼ同じことを行っている。
FSDベータ9は、狭く標識のない道路での対向車とのすれ違いを、完璧に対応した。
別の動画では、一時停止と発進を繰り返す道路状況で、システムが車を操縦している。
誰かが、FSDベータ9を交通量の多い道路で見てみたいと言っていたね。どうぞ、楽しんで。
さらに別の動画では、夜間で誰もいなくても一時停止の標識を認識して、曲がっている。またその他の複数の動画で、歩行者や別の車の前で一旦停止できることがわかる。
しかし、このシステムは依然として、基本的な運転タスクに悪戦苦闘する場面があり、運転者や同乗者を危険な状況に陥らせている。サンフランシスコのダウンタウンを走行する動画では、車が道を逸れて中央分離帯に入り、運転手が操縦しなければならなかった。
相変わらず愚かだ。テスラFSDのベータ版は、何年も前の悪名高い事故のように、ゼブラゾーンでいまだにダイブする。
同じ動画で、左折時に車がよろめき、オーバーステアで駐車中の車にぶつかりそうになっている場面もある。
シカゴで撮影された動画では、車が交差点にゆっくりと進み、何度も停止し、最後に道路が閉鎖されていることに気づいている。たくさん並んだコーンは、人間なら方向転換する前に認識するものだ。
これらの危険な不具合は、テスラが人の運転を再現するのには程遠いことを示している。だが、シアトルで撮影された動画は最悪だ。
夜間に撮影されたこの映像では、モノレールの巨大なコンクリートの柱を認識できず、車線変更をしようとして2度もぶつかりそうになっている。
高度に自動化された車なら、巨大な静止した物体を認識して避けるができるはずだ。だが車は、センタースクリーンに表示されたものを見る限り、柱があることに気づかなかったようだ。
車内にいた人々は、テスラがレーダーを使用しないカメラの画像のみのシステムに変更した結果として、この不具合が生じたのではないかと考えている。その可能性はあるだろう。テスラなどの自動車メーカーは、緊急ブレーキやクルーズコントロールなどの機能に、これまでずっとレーダーを当てにしてきた。だがテスラは2021年5月、センサーの使用を中止し、将来のモデルには搭載しないことを決めた。
テスラは自動運転技術の開発に、他のメーカーが行っていない、迅速ではあるが厳格ではないアプローチを採用してきた。そして交通の安全を守ろうとする人々は、確立されていない技術を一般のドライバーに公道でテストさせる、このテスラの戦略に反対している。歩行者や自転車、その他の車に乗っているドライバーは、このような実験の対象になることを承認していないと、彼らは主張している。
だがテスラは、完全自動運転ソフトの最終版を配布するというプレッシャーにさらされている。顧客は同社が自動運転を可能にするという約束に対して最大1万ドルを支払っているのだ。だがしかし、それが近いうちに実現することはなさそうだ。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)