コロナ不況下で、会員制のスラック(Slack)チャンネルに熱い視線が注がれているという。
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広告・マーケティング業界は新型コロナウイルスの世界的流行で大きな打撃を受けた。苦境に立たされた業界関係者たちはいま、ネットワーキングや仕事のクチを求めて、会員制のスラック(Slack)チャンネルに殺到している。
新興高級ブランド向けのニュースレター「リーンラクス(Leanluxe)」の編集長ポール・マンフォードは、いま最も熱い視線を向けられている会員制チャンネルのホストだ。
会員はメディア、金融、広告、マーケティング、アート、エンタメ業界の大物経営者たちが名を連ね、そのほかに「数え切れないほどの」(マンフォード)入会希望者がウェイティングリストに並んでいるという。
具体名を出すと、人気コスメブランド「グロッシアー(Glossier)」のリテール責任者を経てノンアル飲料ブランド「ギーア(Ghia)」を立ち上げたメラニー・マサリンがそのひとり。
マーケティング戦略コンサル会社「サンデーディナー(Sunday Dinner)」の創業者で、同名の会員制チャンネルを運営するリンゼイ・スラビーもそう。彼女は2年待たされ、今年5月にようやくリーンラクスのチャンネルに入会できたという。
どうしたら入会できるのか、基準は?
ニュースレター「リーンラクス(leanluxe)」の編集長、ポール・マンフォード。
Paul Munford
マンフォードがスラックを使い始めたのは2017年。当時はリーンラクスのニュースレターを購読し、レターを開く6割ほどの読者が会員制チャンネルに入会申請できる仕組みだった。
ところが、パンデミックを背景にチャンネルへの関心が急激に高まったため、入会者を厳選するレイヤーを1枚噛ませようとオンライン申請を導入した。
オンライン申請では、勤務先などに関する基本的な情報に加え、既存の会員からの推薦があるかどうか、リーンラクス主催のイベントに参加したことがあるかどうか、以前に入会申請したことがあるかといった質問項目に回答する必要がある。
また、入会を希望する理由と、現代のブランド市場について興味関心を抱いていることも問われる。
マンフォードは数カ月に1度、申請内容を精査した上で、50人ほどの入会をまとめて承認している。本気で参加したいと思っていない人をあらかじめ除外するため、承認後の見込み会員が招待を受け入れるまでの猶予時間を24時間としている。
現在のところ会費は無料だが、課金も検討しているという。
マンフォードはこうした審査手続きはきわめて主観的なもので、申請者の職業や役職以上に、どんな思考の持ち主かを重視していると、Insiderの取材に答えている。
はたから見るとエリート主義のように感じられるが、(チャンネルに参加してほしい)ある趣向を共有できる人、要するに、ルイ・ヴィトンよりあまり知られていないニッチなブランドのハンドバックを選ぶような人を探すにはやむを得ないという。
Insiderが入手したリーンラクスの入会承認メールによれば、マンフォードによる承認後は、チャンネルの基礎情報とスラックのメンバーディレクトリに追加するためのフォームなど、入会に伴う諸々を進めるための手続きを促される。
新規会員には他の会員も含めたリストが共有される模様だ。また、入会申請が承認された理由については、メールに特段の記載がなかった。
入会後はグループへの参加が鍵となる。マンフォードは、会員がそれぞれのチャンネルで積極的かつ生産的に活動することを期待しているという。彼は問う。
「あなたは自分の考えをはっきりと示す人ですか?私には、あなたが会話に参加する人と見えているでしょうか?それとも、他の人の会話を眺めるだけで自ら発言しない人と見えているでしょうか?」
ただ、(リーンラクスの会員に多い)クリエイターは得てしてスラックを営業ツール代わりに使う輩を嫌がるものだ。そうした文脈で言えば、これまでグループから追放されたのは2人だけ。
1人は単に「(周囲が)不快にさせられる」との理由で、もう1人は他の会員にダイレクトメッセージでスパムを送信するなど「リンクトイン(LinkedIn)のように使っている」ことが理由だった。
また、グループで議論した内容を外部にシェアすることも禁止されており、違反すると追放の対象となる。ただし、マンフォードがこのルールを適用せざるを得なかったケースはこれまでないという。
広告代理店「ネバーコンセプツ(Never Concepts)」共同創業者兼クリエイティブディレクターのレミ・カリオスはこれまでに3度、リーンラクスに入会申請しているが、いまだにウェイティングリストで待たされたままだという。
カリオスの言葉を借りれば、リーンラクスのようなグループから入会承認を得ることは、セレブの仲間入りをするとのさほど変わらないという。
「不承認にされたら胸糞が悪いけれども、承認されたときの快感はものすごい」
(翻訳・編集:川村力)